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リフィル処方によって
医療機関と薬局の機能は大きく変わる

“薬のみ外来”はいよいよ終焉を迎える
薬局と差別化できない病院に明日はない

リフィル処方の検討が進む

「リフィル処方」が実現する可能性が出てきた。リフィル処方箋とは、1枚の処方箋で医薬品の処方を複数回受けることができる制度でアメリカやフランスなど、多くの先進諸国で導入されている。
2018年度の診療報酬改定で一度議論がなされたが、医師会などの反対で実現には至らなかった。その時と同様、まずは政府主導の「骨太方針(経済財政運営と改革の基本方針)2021」にリフィル処方の推進が盛り込まれた。ただし、前回は「リフィル処方」という言葉が独り歩きして抵抗にあったこともあり、「医療機関に行かずとも、一定期間内に処方箋を反復利用できる方策を検討する」とされている。
それを受けて、中央社会保険医療協議会の診療報酬改定に関する議論では7月14日と21日にリフィル処方に関連した議題を検討した。現行の分割調剤の制度を変更して導入することが示唆されている。早ければ、次回の改定で導入される可能性があるだろう。

これまで医師会が反対していた理由としては、今まで医師と薬剤師のダブルチェックだったものが、薬剤師だけのチェックになるため、患者の状態の些細な変化に気づきにくくなり、医療事故や健康被害が発生する可能性が高くなるとされている。医療機関の経営的にみても、リフィル処方によって受診回数が少なくなるため、収入低下につながりかねない。
一方で、中医協の資料でも示されたように、長期処方の件数は年々増えており、コロナ禍においてその傾向に拍車がかかっている。調査によると前年同月比較で14%も処方日数が増えているという。電話やオンラインで確認して、同一の処方をそのまま再処方するケースも増えたのではないだろうか。

※:株式会社医療情報総合研究所「JMIRI処方情報データベース」2020年6月データより

図表 長期処方の処方箋が増えている

出典:中医協総会資料(2021年7月21日)

どんな環境変化がありえるのか

“薬のみ外来”という言葉が、一昔前では当たり前のように使われていたが、今では規制が厳しくなり、正々堂々とやっているところは少なくなった。しかし、実際にはそれですむ患者が減ったわけではない。
「再診料+処方箋料のみ」の算定患者数を出してみたことがあるだろうか。よほど外来の制限を徹底しているところでない限り、2~3割はそうした患者であろう。現在、外来機能報告制度も準備が進められており、基幹病院では「医療資源を重点的に活用する外来」に集中すべき、という議論が進められている。

医療資源を重点的に活用する入院の前後の外来、高額等の医療機器・設備を必要とする外来、特定の領域に特化した機能を有する外来紹介患者に対する外来等)が該当し、まさに初診料+処方箋料のみはそれ以外に該当する。筆者がかかわっている急性期病院でも、逆紹介を推進して、診療単価の低い患者を減らしているが、それでも再診料+処方箋料のみの患者が2割弱を占める。
患者視点からしても、こうした診察は1時間待ち3分診療である可能性が高い。採血検査も画像診断もなく、単に問診だけである。確かに、問診の結果で処方を変えたり、気になって検査をしたりするケースもあるだろう。しかし、薬のみ外来ですむケースも相当数あると考えられ、それらはリフィル処方が許されると、家の近くの薬局に事前予約して薬を取りにいけばいい。

もしこれが当たり前になると、いくつか環境が様変わりする。
一つは再診料+処方箋料のような患者がグッと減る可能性がある。もし、自院でリフィル処方を推奨しないとしても、近くの医療機関で出してくれることがわかったら、そちらに患者が流れる可能性もある。診察室で行う問診をオンライン診療と組み合わせることも可能であろう。
一般的にはこうした単価の低い患者が少なくなっても、経営的に大きな影響はなく、その分、単価の高い患者に集中できるメリットは高い。いわゆる80対20の法則で、単価の低い客ではなく、単価が高く利益をもたらす客に力をかける戦略である。誰にでも一様にではなく、選択と集中をしていくことを考えたい。

もう一つは薬局の機能が変わる。リフィル処方であると、医師の診察はないが、処方時に薬剤師がかかわることになる。
診察後に門前薬局に行っても、医師と同じようなことを聞かれ、結局医師の処方どおりに薬を出し、大して薬剤師の価値を出せていないケースが多いであろう。しかし、リフィル処方だと医師による診察がないので、薬剤師の問診によっては、投薬内容の変更や、受診の勧奨が求められる。主体的に薬剤師が関与できる可能性が高い。
さらに想像を膨らませると、リフィル処方が適応される薬剤が明確になってくると、その薬剤からOTC薬に採用していけば、そもそも処方箋が必要なくなるかもしれない。そこまで一足飛びではいかないだろうが、大きな環境変化になることは確かであろう。それを見据えた戦略を練っておきたい。(『月刊医療経営士』2021年9月号)

藤井将志 氏
(特定医療法人谷田会 谷田病院 事務部長)

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