MMS Woman Lab
Vol.79
「育てる」という意識をもって「仕事」を任せることが必要

<今月のお悩み>総務課長を務めています。先日、急遽外来を2週間休診することとなりました。掲示物や文書の管理は総務課担当のため、主任に正面玄関の掲示とホームページの掲載文の作成を依頼したのですが、「ひな形は?」「どんな文章にすればいいですか」と聞かれ、前例のないことだったので、まず口頭で大まかな指示を出しました。できた文書を見ながら修正や追加の指示を出したのですが、納得がいかない様子で、「文章を考えてくれれば入力します」と言われてしまい……。どう対応したらよかったのでしょうか。

言われたとおりに行うのは「作業」であり「仕事」ではない

2020年は「いつもと違う」対応に追われた1年だったように感じます。感染予防、職員の安全確保、また緊急事態への対応など、急を要することもありました。
患者さんやご家族向けの院内掲示やホームページのご案内も、「例年と同じもの」が使えない場面が多かったのではないでしょうか。面会をご遠慮いただくためのお願い、入院されている患者さんへの着替えや差し入れなどの受け渡し方法の案内、感染対策の情報提供や急な診療時間変更のお知らせなど、「前例」のない対応を数えればキリがありません。

院内掲示や外部へのご案内などの文書を管理している総務課としては、大忙しだったのではないでしょうか。また、インフルエンザの季節にはこの掲示、年末年始の診療案内は日付を変更して再利用、年賀状も本文はそのままで日付や名前の確認をして印刷へというようなこれまでどおりの作業ではすまないものも多くあったでしょう。文書の作成なども、細心の配慮で文言を選んだことと思います。

そんな時、急遽外来を2週間休診にしなければならなくなったということですから、院内ではさまざまな調整や外部とのやりとりなどがあり、お忙しくされていたとお察しします。課長であるあなたは経営層との連絡、部署の統括をしなければなりませんので、総務課の担当業務である掲示物については、主任に正面玄関への掲示文とホームページの掲載文を急いでつくってほしいという指示を出したということですね。

そんな時に「文書のひな形をください」「何を書けば良いですか」「書き出しの言葉はどうすればいいですか」など細かに質問され、前例のない事態なので、口頭で大まかな指示を出したということですが、このような状況では精一杯の対応だったと思います。そして主任がいったん作成した文書を見ながら、「ここの説明は詳しく」「こここに注意書きを加えよう」など修正点を示したのですね。また、入院患者のご家族のための別の文書の作成など、その時点で補足が必要だと判明したものについても指示することになったという状況はよく理解できますし、非常事態のなかでは当然だと思います。

ところが、主任は納得のいかない様子で最終的には、「課長が文章を考えてくれれば入力します」との返答があったとのこと。非常に残念ですが、そういう場面で「さっきの指示にはその言葉は入っていなかった」「どう直すのか、明確な指示がほしい」という反応をする方もいるようです。「言われたとおりにつくったのに、直されるのは納得いかない」という言い分のようですが、それは「仕事」をする姿勢ではありませんね。言われたとおりに行うのは「作業」であって、「仕事」ではありません。作業者として従事しているのであれば仕方がないとは思いますが、総務課の主任としての役割を持っている人であれば、自分なりに考え、それをまとめて提案する「仕事」をしていただきたいですね。

指示を待つ作業者のままでは考える力を育むことが難しい

相手の気分を害して、仕事をしてくれなくなると困るという気持ちもわかりますが、「作業をしてほめてもらいたい」という要望に応じていくだけでは、職員を育てていくことはできません。明確な指示のもとで修正や訂正のない作業だけをしていると一見「効率が良い」ように感じてしまうかもしれませんが、そのままでは考える力を養うことができなくなるように思います。

ですから、「育てる」という意識を持って、「もう1回考えてみて」と伝えることも大切です。今回は急いで対応しなければならない状況でしたから、最終的には指示で作業に取り組んでいただいたと思いますが、少し余裕のある時は、「考える」ところを主任に任せてみるのも良いでしょう。私は企画部門にいることが多いのですが、100本の企画を考えて1つ採用されれば合格点と言われています。それは非効率なのではなく、結果として多角的な視点を養い、考える力を身につけることにつながっているはずです。

〈石井先生の回答〉

言われたとおりに行うのは「作業」であって、「仕事」ではありません。明確な指示のもとでの修正や訂正のない作業は、効率が良いように見えるかもしれませんが、考える力を育むことが難しくなってしまいます。育てる意識を持って考えるところも含め「仕事」を任せてみると良いかもしれませんね。(『月刊医療経営士』2021年2月号)

石井富美(多摩大学医療・介護ソリューション研究所副所長)
いしい・ふみ●医療情報技師、医療メディエーター。民間企業でソフトウエア開発のSEとして勤務した後、社会福祉法人に入職。情報システム室などを経て経営企画室長に 就任後は新規事業の企画、人材育成などに携わった。現在は医療経営人材育成活動、企業向け医療ビジネスセミナーなどを行うとともに、関西学院大学院、多摩大学院にて「地域医療経営」の講座を担当している。著書に『2018年度同時改定からはじまる医療・介護制度改革へ向けた病院経営戦略』『経営企画部門のマネジメント』(ともに日本医療企画)ほか