MMS Woman Lab
Vol.72
新型コロナで学びの場が身近に 積極的にセミナー・学会に参加を
<今月のお悩み> 新卒で病院に入職し、2年目を迎えました。本来であれば2〜3年目職員向けのラダー研修が予定されていましたが、新型コロナの感染拡大で延期になってしまいました。新たに知識を得たり、他部署の職員と交流したりする場がなくなったことで、自分が成長していないのでは、1年目の職員と変わらないのではと悩んでいます。
院内研修の中止によって不安を抱える職員もいる
新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言は解除となりましたが、感染者への対応で、医療の現場はどこも大変な思いをされています。心からの感謝と労いの気持ちをお伝えいたします。
医療機関のなかでの感染防止対策は3月頃から本格化していましたから、新年度はスタートしたものの「いつも通り」ではない毎日が続いています。入職式や新入職員オリエンテーションも集合ではできなかったでしょうし、ましてや歓迎会も延期になっているのが現状でしょう。それでも、病院内で在宅勤務ができる部署は少ないので、多くの方は出勤して日常業務に取り組まれているのが現状だと思います。
緊急事態宣言が発令されていた期間はもちろん、感染予防のために時差出勤が奨励されていることもあり、朝も帰りも通勤電車はガラガラで、「世の中で働いているのは自分たちだけなんじゃないか」という錯覚に陥ると医療関係者から聞いたこともあります。
また、多くの人が集まることを避けるために、コンサートやイベントが中止や延期になるのと同じように、セミナーや研修会、学会などもリアルでの開催は中止になるところが増えました。院内でも会議はオンラインや持ち回り審議となり、例年実施されている階層別のラダー研修も延期になっているところが多いようです。
院内のラダー研修や外部のセミナーに参加することで、仕事をするうえで必要な知識を得たり、視野が広がったりします。研修のグループワークなどで普段あまり顔を合わせることがない他部署、他職種の方々と話をすることはとても楽しく、刺激にもなりますから、自分の働く意欲を高める場にもなりますね。
そのような場をなかなか持てなくなったことで、「なんとなく、毎日を過ごしている」と感じてしまう方も多いようです。ご相談のように、自分の知識や意欲を高める場がないことで、成長を感じづらくなり、「新入職員と変わらない」と悩んでしまうこともあるかもしれませんね。
学会などに参加することで自分の成長も実感できる
院内の研修がオンライン開催やeラーニングになってもあまりワクワク感はないかもしれませんが、目を少し外に向けてみると、大きな変化が起きていることに気づきます。
セミナーなどの多くはオンライン開催やウェブ配信になっています。これまでは「出張」扱いになっていた平日昼間に開催されるセミナーも、「1時間、委員会や会議で席を離れる」のと同じような感覚で視聴できるようになりますから、職場や上長からの許可も得やすくなりますね。状況によっては、いつもは1人しか派遣できない研修も、オンラインであれば全員で受講しよう、という判断が下されるかもしれません。また、動画配信であれば、終業後や帰宅してから自宅でのんびり視聴することもできます。会場までの移動にかかる時間や費用を考えることなく各地で行われている勉強会に参加しやすくなっているのです。
そして今年は各種学会の学術大会もオンラインでの開催になっているところが増えています。学術大会への参加はそれなりに時間と費用がかかるものですから、普段はなかなか参加できないかもしれませんが、せっかくの機会ですから興味のある学会の学術大会に参加してみてはいかがでしょうか。医療現場で1年仕事をしてきた経験があれば、そうした場でほかの病院職員の発表を聞くことで気づきを得ることができるでしょうし、自分の考えや取り組みに確信を持つこともできるはずです。また、いずれ自分もそういう場で発表したいと意欲も高まるかもしれませんね。
今までと同じことの繰り返しのように見えても、確実に前に進んでいますし、自分の経験は積み重なっています。そのことを実感できる場に自分から積極的に参加してみるのも良いと思います。
「新しい生活様式」のもとで感染予防をしながら社会活動を続けていくのがこれからの日常になりますね。オンラインセミナーや学会参加など、新しいモチベーションアップの仕組みも上手に取り入れていきましょう。
〈石井先生の回答〉
研修の場がないことで、なんとなく日々を過ごしているように感じるかもしれませんが、外に目を向けてみると、セミナーや学会のオンライン開催という変化に気づきます。積極的に参加することで、自分の経験が積み重なっていること、確実に成長していることを実感できるのではないでしょうか。(月刊医療経営士 2020年7月号)
いしい・ふみ●医療情報技師、医療メディエーター。民間企業でソフトウエア開発のSEとして勤務した後、社会福祉法人に入職。情報システム室などを経て経営企画室長に 就任後は新規事業の企画、人材育成などに携わった。現在は医療経営人材育成活動、企業向け医療ビジネスセミナーなどを行うとともに、関西学院大学院、多摩大学院にて「地域医療経営」の講座を担当している。著書に『2018年度同時改定からはじまる医療・介護制度改革へ向けた病院経営戦略』『経営企画部門のマネジメント』(ともに日本医療企画)ほか