MMS Woman Lab
Vol.77
言葉は使い方次第で相手に不快感を与えることがある

<今月のお悩み> 病院の総務課に所属しています。各種アンケートへの対応窓口を担っているのですが、電話アンケートや口頭での調査で、「ちなみに」という言葉をよく使う調査員が多いことが気になっています。最初のうちは「いつ本題に入るんだろう」と考えているうちにアンケートが終了してしまったこともありました。正しい使い方ではないと思うのですが、そう感じる私が細かいのでしょうか。

なぜか最近よく耳にする「ちなみに……」という言葉

新しい生活様式における新しい働き方が求められるなか、「現状調査」のためのアンケートなどが増えてきているようです。社会全体がさまざまな模索を行っている最中ですから、可能な限り情報提供をしていきたいところですね。病院では総務課などでこのような外部からのアンケート調査の対応をする機会が多いので、いつも以上に対応件数が増えているのではないでしょうか。

回答にかかる時間は5分から10分程度だとは思いますが、忙しい時間の合間で答えるのですから、要件や目的を明確にしていただいたうえで、端的に気持ちよく答えていきたいところです。今回は電話によるアンケートの応対について疑問を感じておられるとのことです。

「○○についてのアンケート調査をしておりますが……」
「ちなみに貴院では……」
「さようでございますか。ちなみに……」
「ありがとうございます。ちなみも……」

と続く質問、一見丁寧なようですが、確かに違和感が残ります。質問のつなぎに使われている「ちなみに」という言葉が気になりますね。
何かに「因む」時のつなぎの言葉ですから、本題について補足的な話や関連した情報提供などを続ける際によく使われます。つまり、本題があった後に「ちなみに」と話を補足したり、「ちなみに」の話が終わった後は本題に戻したりするのが本来の使われ方です。先ほどの電話のやりとりは、「本題」であるアンケートの項目を進めるたびに「ちなみに」と言われるので、一体自分は何について答えれば良いのか、ついでの質問に答えているだけでまだ本題に入っていないのでは、と不安な気持ちになったのではないでしょうか。
電話での調査を行うオペレーターとしては、課題があるように思います。

違和感や気づきを大切に反面教師にする

では、自分たちの日常の会話を改めて考えてみましょう。
言葉は時代によって変わっていくものですから、「役不足」や「話のさわり」など、もともとの意味とは違う意味で理解されているものもありますし、流行の言い回しもあります。先ほどの「ちなみに」も最近よく使われている言葉の一つです。日常的に、もしかしたら無意識に話のつなぎで「ちなみに」と使っていることもあるのではないでしょうか。ただ、相手がその言葉をどう受け止めるかを考えることも必要です。

私も先日出席した打ち合わせで、進行されていた方が発言をしていなかった参加者に「ちなみに、何かご意見はありますか?」と声をかけた場面に遭遇しました。打ち合わせはそのまま滞りなく進みましたが、「意見の求め方としてちょっと失礼な表現なのでは」と感じたので、打ち合わせ終了後に進行役の方と少しお話をしました。やはり、本人は「ちなみに」と言葉を挟んだことを覚えていないようでした。
ニュースキャスターや講演者が、話を膨らませたり、私見を述べたりする時に「ちなみに」と使うことはあるので、少し知的な文頭の言葉と捉えられている人もいるのかもしれません。

今回、電話アンケートで感じたちょっとした違和感、そういった気づきをぜひ大切にしてください。「反面教師」「人を以て鑑と為す」ための一つの事例になります。
多世代の方々と接する機会が多い病院では、何気ない言葉の使い方で不快感を与えてしまうこともあります。

以前、「一応」という表現が流行した頃に、会計窓口の担当者が「一応、本日の会計はこちらになります」と伝えたところ患者さんのご家族を不快な思いにさせてしまい、「正式な請求額を教えてくれ」と憤慨された事例を聞いたことがあります。その時は、「一応、こちらが正式なものです」と答えたことでさらに激化し、上長が対応に入り、言葉の使い方などについてお詫びしご理解いただいたとのことでした。
さすがに仕事中に「やばい」などの言葉を連発することはないと思いますが、聞いていて心地よい言葉を使えるように、気をつけ合うことも大切ですね。

〈石井先生の回答〉

日常的に、無意識に間違った意味で言葉を使ってしまっていることもあります。ただ、言葉は使い方次第で相手に不快感を与えてしまう可能性があるので、今回感じた違和感や気づきを大切にしてください。そして耳にして心地よい言葉をつかえるように、気をつけていきたいですね。(『月刊医療経営士』2020年12月号)

石井富美(多摩大学医療・介護ソリューション研究所副所長)
いしい・ふみ●医療情報技師、医療メディエーター。民間企業でソフトウエア開発のSEとして勤務した後、社会福祉法人に入職。情報システム室などを経て経営企画室長に 就任後は新規事業の企画、人材育成などに携わった。現在は医療経営人材育成活動、企業向け医療ビジネスセミナーなどを行うとともに、関西学院大学院、多摩大学院にて「地域医療経営」の講座を担当している。著書に『2018年度同時改定からはじまる医療・介護制度改革へ向けた病院経営戦略』『経営企画部門のマネジメント』(ともに日本医療企画)ほか