MMS Woman Lab
vol.76
人の採用は重要な仕事
一緒に働く仲間を迎える気持ちで

<今月のお悩み> 10月に課長に昇進し、採用面接に同席することになりました。面接への同席は初めてで、とても緊張しています。同席する事務長と人事課長からは、仕事の内容や職場の雰囲気を話してほしいと言われていますが、どんな態度で臨めば良いのでしょうか。また、私が質問する機会もあるようなのですが、何を聞けば良いのか、困っています。

組織・求職者の双方にとって最善の判断が求められる

「戦略は人事に従う」
私もよく使っているフレーズですが、どんなに良い経営戦略、事業戦略を作成しても、それを実行する人がいなければ進めることができないということを表現している言葉です。その逆で「人事は戦略に従う」という言葉もありますが、こちらは戦略が決まればそれに必要な人事(異動や採用)を行う、という意味ですから、どちらも要は「人」であることを表現しています。

もちろん、個々に有能な人たちが揃っていても、戦略が明確になっていなければ組織として最大限のパフォーマンスを引き出すことはできませんので、戦略をおろそかにして良いということはありません。
いずれにしても、人を採用することはとても重要な仕事です。それは組織にとってはもちろん、その人の人生にかかわるため、双方にとって最善の判断をすることが求められる仕事だからです。求職者を自分たちの職場に迎えた時にその力を十分に発揮してもらえるか、ともに働く仲間として信頼関係を築いていけるか、といった視点は当然ですが、通勤に無理はないか、生活の環境はどうか、ここで働くことがその人にとって幸せか、という相手の目線でも考えていくことになります。

組織として採用についての最終判断はその役割(人事権)を持った者が行いますが、採用面談の時には実際に一緒に仕事をする部署の責任者が同席することもあります。仕事内容の説明や職場の雰囲気などを伝えることで、求職者により具体的に「これからの仕事のイメージ」を持ってもらい、入職するかどうかを判断する情報を提供する役割でもあります。もちろん、採用する側としては、一緒に仕事をするメンバーとして迎えられるかどうかを知る大切な場になりますね。

多くの企業などでは事業計画に則って年度の初めに必要な人員を確保しますが、病院では年度初めの採用のほかに、退職や施設基準の変更などによる欠員を補うための採用が頻繁にあります。私が勤務していた病院でも、毎月新入職者の紹介がありましたから、採用面談も月に何回か実施していました。

短時間で求職者のすべてを知ることはできない

今回初めて採用面談に同席するわけですから緊張もされていることでしょう。面談の時間は長くても15分くらいですから、その短時間で求職者のすべてを知ることはできません。また、何人かの求職者と話をして、履歴書の情報も参考にしながら選考することになりますし、選ばないという選択もあるので、求職者の人生を左右することにもなります。まずは、ご自身が同席する目的を意識して、面談に臨んでいただければと思います。

先にも述べたように、最終的には人事権を持っている方が判断しますが、同席したあなたにも、「どうだった?」と尋ねられることがあると思います。仕事の説明以外に質問をする機会が与えられるようであれば、聞いておきたいことを事前に考えておくと良いでしょう。中途採用の方であれば、これまでの仕事の内容や得意な分野、残業や休日出勤への考え方、オフタイムの過ごし方などをうかがうのも良いと思います。「一緒に働く仲間を迎える」という気持ちで率直に話をしてみるのが一番ではないでしょうか。

私はよく「これまで、どんなお仕事をされてきましたか」と質問するのですが、「○○という会社で、△△部の部長をしていて、年収は□□円くらいでした」という返事が返ってきて、もう一度、「仕事への思い」を聞き直したことがあります。その方のこれまでの仕事を知ることで、経験だけではなく、取り組み方なども知ることができると考えています。ともに働く仲間を迎えるにあたって相手に確認したいことを自分なりに考え、質問すべきことをまとめておきましょう。

どんな方でも初めは仕事の手順を覚えたり、職場の雰囲気に慣れるまでに時間がかかります。だからこそ、仕事を覚え、チームの一員になろうという意欲のある方と一緒に働きたいものです。そうした気持ちがある方か、面接で見ることができれば良いですね。

〈石井先生の回答〉

人の採用は、組織にとってはもちろん、その人の人生にかかわるため、双方にとって最善の判断をすることが求められる重要な仕事です。初めての採用面接への同席は緊張するかもしれませんが、「一緒に働く仲間を迎える」という気持ちを持って、臨んでいただければ良いのではないでしょうか。(『月刊医療経営士』2020年11月号)

石井富美(多摩大学医療・介護ソリューション研究所副所長)
いしい・ふみ●医療情報技師、医療メディエーター。民間企業でソフトウエア開発のSEとして勤務した後、社会福祉法人に入職。情報システム室などを経て経営企画室長に 就任後は新規事業の企画、人材育成などに携わった。現在は医療経営人材育成活動、企業向け医療ビジネスセミナーなどを行うとともに、関西学院大学院、多摩大学院にて「地域医療経営」の講座を担当している。著書に『2018年度同時改定からはじまる医療・介護制度改革へ向けた病院経営戦略』『経営企画部門のマネジメント』(ともに日本医療企画)ほか