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回復期リハビリと療養は利益を確保
被害を最小限に抑える仕組みが課題

COVID-19の第3波、第4波に加え新たな感染症の出現も考えられる
どんな事態にも対応できるよう事業ポートフォリオを見直せ

COVID-Dが医療機関に与えた影響か、各種調査数字として発表され始めた。それらを見ていきながら、今後の経営を考えていく。

病院の収支動向

まずは病院の経営収支に関する調査だ。日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会が合同で実施した「新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況の調查(2020年度第1四半期)」によると、前年同期比で5月の医業収減か最も大きく▲15・3%となった(n=1407)(図表1)。同月の医業利益率は昨年の3.9%に対して、今年は▲8.4%と12.3%も悪化している。ちなみに、医業収益の減少幅は4月の▲9.4%に対して、6月は▲4.7%と最悪期は過ぎた可性もある。
ただし、冬に向けて、どのように影響してくるかは未知数である。ここからすると、1割程度の医業利益率を維持していればマイナスを回避もしくは収支均衡が維持できるであろう。しかし、利益率1割を維持できる医療機関はかなり少ない。
同調査で一時的に外来や病棟が閉鎖になったところの数字も出ている。こちらも5月分が最も悪く、医業収益が前年比▲22%で、医業利益は▲16.3%と上前年比で2割悪化した(n=210)。平時で医業利益率20%を達成していれば、一時的な外来閉鎖等を行っても収支の維持は可能といえるが、IT企業と同じくらいの利益率を継続的に出せている病院は皆無に近い。

5月分の数学を入院基本料別にみると、特定機能病院(n=26)の医業収益は前年比▲19.5%、医業利益率は▲5.9%、一般病棟(n=742)の収益は同▲16.1%、▲10.6%、回復期リハビリテーション病棟(n=51)は▲1.6%、11.7%、地域包括ケア病棟(n=22)は13.6%、▲8.1%、療養病棟(n=249)は▲8.2%、2.4%となっている。調査数は少ないが、回復期リハへの影響が小さく、利益率でみると回リハと療養でプラスを維持している。つまり、事業ポートフォリオを考えると、これらの病棟を持っておくと、マイナス面を軽減できたことになる。

診療科別の影響

続いて、日本医師会による「新型コロナウイルス染症対応下での医業経営の状況(2019年および2020年3~5月レセプト調査)」をみると、やはり月を追うごとに数字が悪くなり、5月の数字だとレセプトの総点数が病院▲11.6%(n=129)、診療所▲20.2%(n=487)となっている。どちらも大幅減少だが、診療所のほうが2倍の減少となっている。診療所に特化した事業ポートフォリオよりも、病院が含まれていたほうが減少幅は少なくなる可能性がある。

診療所を診療科別にみると、耳鼻咽喉科と小児科が3割を超える減少と突出しており、その他の診療科は10~15%の減少であった(図表2参照)。耳鼻科はマスクによる感染対策により上気道炎や副鼻腔炎の患者が減り、小児科は休校により流行疾患が減ったことが要因と考えられる。感染対策を前提とした生活様式が定着すると、疾病率自体が減るのか気になるところだ。

健診事業についても日本医師会が調査(※)しており、5月の収益は5割を超える減収、利益率も▲44.6%(n=27)と悲惨なものだった。不要不急のことは控えるという、一般サービスと同じよう変動があったといえる。

※ 医師会検診センター、検査センター、健診・検査センター複合体における新型コロナウイルス感染症対応下での医業経営実態調査(日本医師会)

医療費の動向

よりマクロ的にみると、国民健康保険中央会がまとめた6月審査分(5月診療分)の国保医療費は前年同月比で▲11.5%となった。医療費全体はまだ3月分までしか発表されておらず同月は▲1.2%。財務省が発表している法人企業統計(4~6月)によると、全産業の売上高は▲17.7%、サービス業に至っては31.8%。医療は他産業に比べると比較的減少幅か少ない。ちなみに、プラスだったのは情報通信業1.1%のみで、巣ごもり生活からネット系のサービス需要が旺盛だったことがうかがえる。

さまざまな事業を展開している企業や金融機関からすると、医療はコロナ禍でも比較安定した収益が見込める事業とみることができる。このような視点から、ヘルスケア領域の事業をもつという選択肢もある。

ワクチンの開発についても明るい報道が増えてきつつあり、今年の第1~2四半期までが最悪の状況で、今後は回復していく可能性がある。しかし、新たな感染症問題が発生することを想定すると、今回の影響を踏まえて事業ポートフォリオや財務体制を再構築することが求められる。(『月刊医療経営士』2020年10月号)

藤井将志 氏
(特定医療法人谷田会 谷田病院 事務部長)