MMS Woman Lab
Vol.75
これからは「心の時代」
心のマネジメントができる人材の育成を

<今月のお悩み> 4月に入職した職員が先日朝、仕事を休みたいと連絡をしてきました。休暇を取得すること自体は問題なかったので許可したのですが、彼女が電話で「心が折れた」「気持ちが上がらない」と言うのでとても心配しました。しかし、翌日は元気な様子で出勤し、私の声かけにも「1日休んだので、もう大丈夫です!」との返答。心配するほどのことではないのかもしれませんが、「心が折れた~」といった言葉が気にかかっています。

今注目を集めているマインドフルネス限想法

働き方改革の流れか、新しい日常の実践が進んでいるのか、「朝活」をする人が増えているそうです。24時間営業のフィットネスジムで早朝に運動をしたり、カフェで朝食をとりながら本を1冊読んでから出勤するという個人で楽しむ朝活もあれば、早朝の読書サークルやアイデアピッチのように自己表現をするサークル活動などもあるようです。

そんななかで今注目されているのが、「マインドフルネス」という瞑想法です。これは瞑想しながら客観的にありのままの現実を見つめ、「今」を大切に生きる心のあり方を身につけるトレーニングのようなものです。ストレスを軽減できたり、怒りや悲しみの感情がコントロールできたり、漢然とした不安から解放されたりといった効果があるようですから、朝活で心をリラックスさせてから1日を始めることで、仕事にも集中できるのでしょう。

マインドフルネス瞑想が普及したのは大手の企業で社員研修に導入されたことがきっかけのようですが、心のトレーニングを求める方が増えてきているということなのかもしれません。
ご相談に出てくる方はどうでしょうか。沈んだ様子で連絡をしてきて「心が折れました」「気持ちが上がりません」という理由で休みたいと言われると、上長としてはとても心配ですね。もちろん有給休暇ですから仕事の調整がつくようであれば許可をする、という手続きとなりまますが、理由が理由だけに気になります。
ところが、翌日は元気に出勤し、あなたの声かけにも明るく返事をしてきたとのこととですので心配するほどでもないのかもしれません。このような休みが何度も続くようであれば、メンタルケアが必要な心の状態になる前兆かもしれませんので丁寧に対応する必要がありますが、簡単に「心が折れた」といった言葉を使われると、どう対応すべきか悩んでしまいます。

感情のコントロールが苦手な人は、職場で先輩に注意された、患者さんに怒鳴られたといったことをきっかけに落ち込んだり、委員会メンバーに送ったメールにすぐに返信がこないことに寂しさを感じたりすると、その感情から抜け出せなくなってしまうようです。メンタルケアが必要ではないかと思って受診を進めると、今度は「自分はうつなのかも」とその不安から抜け出せなくなってしまうこともあるようです。
実はマインドフルネス瞑想でも、自分を客観的に見つめて「本当にしたいこと」を探求するなかで、「何も思いつかない」「自分は空っぽだ」と感じ、不安な気持ちが増長されてしまう人もいると聞きます。これまでの人生で常に「誰か」に認められることで自分の存在価値を確認していた人は、自分の心を自分で整えることも苦手なのかもしれません。

リーダーには心のマネジメント能力が求められる

上長としては「それでは指導も教育もできない」と思うかもしれませんし、一昔前ならば「甘えるな」と一喝していたかもしれません。しかし今はそうはいかないのです。
どんな時に心が折れるのか、どんなことがあると気持ちが上がらないのか、丁寧に話を聞きながら、自分の気持ちがどう動いたかを自覚してもらうようなかかわり方をするのも一つの方法です。自分の気持ちを知ることで血己認識を進めることができます。また、自分の気持ちの動きを知れば、他者に共感できるようにもなります。これからは「心の時代」、リーダーには心のマネジメント能力が求められるようになると言われています。SNSに既読がつかないことがきっかけで登校拒否になり、そのまま引きこもってしまう子どもたちがいる時代ですから、より丁寧なかかわりが求められます。フォローし続けるだけではなく、一人ひとりが自己認識をして、自分の気持ちのコントロールができるように、心のマネジメントができるように育てることを考えていきましょう。

余談ですが、おしゃれなカフェのモーニングサービスを食べ歩くという朝活もあるようです。心をリラックスさせ、気持ちを上向きにするための自分に合った方法を見つけるのも、心のマネジメントの一つかもしれませんね。

〈石井先生の回答〉

簡単に「心が折れた」といった言葉を使われると、どう対応すべきか悩んでしまいますが、丁寧に話を聞きなから、自分の気持ちがどう動いたかを自覚してもらうようなかかわり方をするのも一つの方法です。一人ひとりが自己認識をして、心のマネジメントができるように育てることを考えてみてください。(『月刊医療経営士』2020年10月号)

石井富美(多摩大学医療・介護ソリューション研究所副所長)
いしい・ふみ●医療情報技師、医療メディエーター。民間企業でソフトウエア開発のSEとして勤務した後、社会福祉法人に入職。情報システム室などを経て経営企画室長に 就任後は新規事業の企画、人材育成などに携わった。現在は医療経営人材育成活動、企業向け医療ビジネスセミナーなどを行うとともに、関西学院大学院、多摩大学院にて「地域医療経営」の講座を担当している。著書に『2018年度同時改定からはじまる医療・介護制度改革へ向けた病院経営戦略』『経営企画部門のマネジメント』(ともに日本医療企画)ほか