女性医療経営士の“働く”を応援する MMS Woman Lab
Vol.74
資料は自分のもの?部署のもの?
職場環境に合わせて保管方法を考える
<今月のお悩み> 働きやすい職場環境づくりの一環として、オフィスが改装されました。今までは1人ずつに事務机があったのに対し、現在は中央に大きなテーブルが置かれ、そこで仕事をします。それぞれ使うエリアは割り当てられていますが、PCや資料はその日の仕事が終わったら個人のロッカーに片づけるルールです。このスタイルで仕事をするようになって5カ月ほど経ちましたが、個人のロッカーに荷物が収まらなくなってきて困っています。
書類や資料は作成者ではなくその部署のものと捉える
職場とはいえ、机やイスなどの家具類が新しくなると気持ちが良く、気分も高揚しますね。昔ながらのグレーの事務机から明るいトーンの大きなテーブルになり、課員が食卓を囲むように座って仕事をするスタイルは最近の流行なのかもしれません。フリーアドレスという考え方で、毎日どこに座っても良い職場もあるようですが、仕事の内容によって、フリーアドレスが適している場合と固定席のほうが良い場合があるようです。
ご相談の職場はエリアは固定でフリースペースを共有しているというイメージでしょうか。仕事に入るときにノートPCや電卓などの必要な道具や資料をテーブルに持ってきて業務を行い、1日の終わりには、テーブルの上はもともと置いてあったデスクトップPCやプリンター以外は何もない状態に戻すというのが一般的な使い方です。1人分のスペースという仕切りがないので、その日の仕事内容によって広く場所を使ったり、出勤する人数によってスペースを調整したりできるのも便利です。
このような職場の場合、個人の事務用品や荷物などを入れるロッカーがありますが、必要芸最低限の荷物しか入らない小さなロッカーがほとんどですね。相談ではロッカーがいっぱいになってしまったということですが、一体どんなものが増えてしまったのでしょうか。
このレイアウトにする際のことを思い起こしてみてください。事務所内をかなり片づけたのではないでしょうか。課として必要な資料の整理もしたと思います。たとえば、経理課なら台帳や請求書、決算書などのほか、防災マニュアルや課員がメンバーになっている委員会の資料などもあります。多くの資料はおそらくPC(院内の共有サーバー)に保存されているでしょうから紙として保管するものは10年前に比べると減ってきているはずですし、本当に必要なものだけに整理したことでしょう。
また、一人ひとりの机がなくなるため、引き出しの中や机の上に並べてあったものを片づける作業もしたと思います。課として使うものは共用の書棚に置きますし、作業途中のものや下書きは一時的に自分のロッカーに入れるかもしれませんが、作業が終われば廃棄されます。委員会やプロジェクトの資料であれば、内容を整理してファイリングした後は共用の書棚に置くことになります。部外秘のものは、そもそも個人の机ではなく課長や部長が管理して施錠できる書棚に置かれます。
「仕事」に必要な書類や資料などは、その役割を果たしている人が作成していますが、「その人」のものではなく、その部署のものです。つまり、適切なアクセス権限の管理のもとで共用の書棚にきちんと置かれていれば良く、作成した人が保存する必要はありません。
職場環境に合わせた書類·資料の保存を
では今まで、自分の机には何を置いていたのでしょうか。文房具やコーヒーカップ、子どもの写真、プラシや手鏡など、いわゆる「私物」はあると思いますが、それで引き出しがいっぱいになっていたわけではありませんよね。
委員会の議事録の自分用のコピー、メモを書き込んだ会議資科、研修会に出た時の資料、全員に配布された年報や過去の広報誌などは机を片づけた時に「共用のものがあるから、もういらない」と廃棄したものも多かったのではないでしょうか。本当に「自分だけに必要なもの」に絞ったから、各自に割り当てられたロッカーに収まったのだと思います。
新しい職場環境になり、せっかく一度は整理したのですから、「今までどおり」の保管方法ではなく、新しい環境に合わせていくのが良いと思います。本当に自分だけに必要なものは職場ではほんの少しだけのはずです。
以前、このような共用スペースで仕事をしていた時、机の下にたくさんの書類を入れた段ボール箱が置きっぱなしになっている様子を見たことがあります。「自分の引き出しがないから段ボールに入れるしかない」とのことでしたが、そもそも「自分の引き出しに入れるものなのかどうか」を考えていただきたいなと思ったことかありました。年末の大掃除の時に、その段ボールごと廃棄されていたことは言うまでもありません。
〈石井先生の回答〉
新しい職場環境になったので、今までどおりではなく、現状に合った保管方法に移行していきましょう。「本当に自分で所有しなければならない書類・資料なのか」を考え、部署で保存すべきものについては部署の共用書棚で、適切なアクセス権限の管理のもとで保存するという考えを持つようにしてください。(『月刊医療経営士』2020年9月号)
いしい・ふみ●医療情報技師、医療メディエーター。民間企業でソフトウエア開発のSEとして勤務した後、社会福祉法人に入職。情報システム室などを経て経営企画室長に 就任後は新規事業の企画、人材育成などに携わった。現在は医療経営人材育成活動、企業向け医療ビジネスセミナーなどを行うとともに、関西学院大学院、多摩大学院にて「地域医療経営」の講座を担当している。著書に『2018年度同時改定からはじまる医療・介護制度改革へ向けた病院経営戦略』『経営企画部門のマネジメント』(ともに日本医療企画)ほか