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人材採用事情を大きく変えるか?
厚労省、医療人材情報サイトを開設

求職者が集まってくる人材採用の理想は「ここで働きたい」と思われる仕組み そして的確な広報!

人材紹介会社の現状

800万円。これは筆者の所属する病院(売上約15億円)が昨年支払った人材紹介会社への費用である。慢性的な人員不足が続いている日本の医療業界では、多くの医療機関で人材紹介会社や求人広告費を投下しているのではないだろうか。
筆者のところにも日に数件は営業電話がかかってくる。良い人材については喉から手が出るほどほしく、致し方ない出費とならざるを得ない。紹介手数料はおおよそ年収の20%~30%程度かかり、医師のような年収が高い人材になると1人のマッチングで400万円くらいかかってくる。1人分の年収くらいの費用が上乗せになる。

それだけ支払っても仕方がないな、と思わせるくらい手厚く対応してくれる人材紹介会社もあるが、これまで何件もやり取りしてきたが、そうした対応力があるケースはかなり稀である。
ほとんどの場合は、たまたまWEBサイトに登録してきた人材情報を、「この人どうですか」と紹介するだけである。本当に求人者のニーズをキャッチし、医療機関側のニーズと合わせて双方に価値のある提案をしていると思われるケースは減多にない。単にマッチングをして、それに対して何十万円~何百万円も支払うケースがが圧倒的に多い。

期待したい厚労省の新サービス

こうした市場に風穴を空けられるかもしれない公的サービスが始まった。厚生労働省が運営している「医療のお仕事Key-Net」というサイトだ。
厚労省が行う事業なので、求職者も医療機関にも費用は一切かからない無料の求人情報報サイトである。新型コロナウイルス対応時の人手不足を解消することが目下の目的でつくられているようで、登録には新型コロナウルス対策用のマスク数などを報告するWEBサイトである「新型コロナ厚労省WEB調査(G-MIS)」での設定が必要となっている。新型コロナウイルス対応をしている医療機関の支援ということになっているが、対応していない医療機関も求人情報を出すことができる。
まだオープンしたてで、改良の余地は多分にあるだろうが、将来的に医療者も医療機関も日常的に使うサイトになっていくことを願いたい。
こうしたマッチングサイトが成功するための最大の鍵は、良質な情報が登録され検索できるかである。また、医療機関側からすると求職者が多く登録されていることが魅力となる。厚労省が関与した人材紹介に関する取り組みとしては、日本看護協会が運営受託している「eナースセンター」がある。ハローワークの看護師版のようなもので、登録や紹介などは一切費用がかからない。ただし、今のところまだ民間の紹介会社に比べると力不足感が否めない。実際に当院のケースでは、めったに連絡がなく、民間企業の10分の1程度の頻度である。
民間の紹介会社の経験者にサービス運営を指揮してもらうなど、抜本的にサービスのブラッシュアップをしていかないと、今のところ民間企業にはかないそうもない。
Google等で求人検索をしても、eナースセンターのページが上位にくることはない。マッチングをしている人材も各地域の看護協会のスタッフであり、転職活動が看護協会内に筒抜けになるのではないか、といった懸念の声も聞く。
実際にはそうしたことはないだろうが、透明性のあるサービスにしていかないと求職者の支持は得られない。先行事例として医療のお仕事Key-Netを展開していく際に参考にするといいだろう。

課題は民間並みの細かな支援

こうしたサービスの質を向上させつつ、厚労省が管轄している強みとしては、医師や看護師は国家ライセンスであるので、ライセンス維持のために人材情報を登録必須にすることも可能であろう。そうすると求職者数はかなり膨大になり、圧倒的な規模になる。こうした取り組みをすると、やれプライバシーだとか個人の権利だとかいった声が出てくる。それらの声に配慮しすぎて、ITをうまく使いきれないのが日本の弱いところである。

「新型コロナウイルス接触確認アプリ」も予定よりもリリースが2カ月も遅れた。世界では同じような環境でアプリによるコントロールで成果を出した国も多数ある。マイナンバーが一向に進まないのも日本の特徴だ。個人の自由意思を尊重するあまり、社会全体で非効率になってしまうのはいかがなものか。

さて、こうしたシステムインフラが整ったとしても、求職者の立場からすると、やはり民間の紹介会社のような人が介する転職支援を求めたくなる。膨大な情報から、自分に適した転職先を探すのはかなり労力がかかる。

筆者も実際に6年前に事務部長の職を求めて転職活動をしたときに、全て自力で複数の病院と調整や交渉を行ってきた。労力はとてつもなくかかり、間にエージェントが入り、ある程度目星をつけてから複数社とコンタクトするほうが、求職者にとっては圧倒的に手間がかからない。こうしたコンシェルジュ的な機能を備えつつ、一般消費財では当たり前になってきている検索を通して自分に適したものを見つける技術が、転職サイトにも応用されることを期待したい。
(『月刊医療経営士』2020年8月号)

藤井将志 氏
(特定医療法人谷田会 谷田病院 事務部長)