臨床講座(2) 部門マネジメント 薬剤部門
第3回
地域医療連携のさらなる貢献~かかりつけ薬剤師への期待~

病院には、さまざまな専門職が在籍しています。各部門がどのような課題を抱え、どんなマネジメントを行っているか、皆さんは知っているでしょうか。医療経営士が病院全体を巻き込みながら病院改革を進めるには、各部門の状況を理解することが不可欠。各部門で実践されているマネジメントを知ることで見えてくるものがあります。

近年の診療報酬改定では、地域医療連携を推進すべく 「連携」や「情報共有」といった言葉が随所に見られる。つまり、医療政策で地域包括ケアシステムや地域医療連携を推進し、医療機関完結型から地域完結型へのシフトが強く求められている。
当院においても、退院患者の住居や介護などについて院内の看護師や社会福祉士が地域のケアマネジャーなどとカンファレンスする様子を多く目にするようになり、連携の深まりを実感している。

では、このような状況において薬剤師は何をすべきなのか。

医療機関、保険薬局を問わず薬剤師業務は対物から対人へのシフトを求められているが、かかりつけ薬剤師に対する厳しい意見を耳にすることも多く、十分な役割を果たせていない現状がある。
また、薬剤師はほかの医療者と違い、主に医療機関の薬剤師が所属する一般社団法人日本病院薬剤師会と、主に保険薬局の薬剤師が所属する公益社団法人日本薬剤師会の2つの組織体に分かれているが、医療連携を推進していく観点においては、互いに一枚岩となることが不可欠となる。

2020年度診療報酬改定においては、薬剤師の医療連携における役割がより明確化されており、今こそ組織の垣根を超えてオール薬剤師として取り組む必要がある。

シームレスな入退院を目指した医薬連携

まず、18年度診療報酬改定で新設され、今回の改定でさらに評価を得た入院時支援加算(表)に触れておく。

自宅等→予約入院・退院→自宅等といった予定入院患者のPFM(Patient Flow Management)で入院前から取り組むものであり、患者満足度の向上はもちろん入院後の病棟スタッフの負担軽減にも寄与している。主に退院困難な患者を対象とした入退院支援加算とあわせて地域包括ケアと在宅医療の推進を期待されている。

同加算の算定要件に「服薬中の薬剤の確認」があるが、読者の皆さんの施設ではここに薬剤師が介入しているだろうか。当院では院内薬剤師がお薬手帳などを参考に服用中の薬剤の確認を行い、電子カルテ内の持参薬カレンダーに入力し、入院後の病棟スタッフの負担軽減にも取り組んでいる。
さらに、入院前から休薬する医薬品の再説明等も行っている。ただし、人員配置は1人のオンコール体制であり、1日の対応患者が多い日はマンパワー的に正直厳しい状況になる。

そこで頼りにしたいのが、保険薬局のかかりつけ薬剤師である。フローとしては、医療機関で入院決定→医師(医療機関)がかかりつけ薬剤師に入院の情報提供と定期服用薬の整理を依頼→かかりつけ薬剤師が患者の定期服用薬を整理、残数チェック→医師へ情報をフィードバック――といった感じになる。
これにより、患者は入院時にすべての定期服用薬を必要日数分だけ、しかも整理された形で持参してくれることが期待できる。

さらに、入院後に病棟スタッフが大量の持参薬を数えるといった作業に多くの時間を割くこともなくなり、看護師も薬剤師も本来の業務に専念できるだろう。これが入院前の目指すべき医薬連携と考えたい。
詳説はしないが、このフローにおける保険薬局の調剤報酬には、かかりつけ薬剤師包括管理料もしくは外来服薬支援料があり、保険薬局においても患者との結びつきや収入メリットが得られることは知っておきたい。

次に、退院時の医薬連携について見ていく。医療機関側には10年に新設された退院時薬剤情報管理指導料※1があるが、これは医療機関側から患者やその家族に対する指導的側面が強い。この指導における情報はお薬手帳に記載されることが多いため、保険薬局との情報共有において有効と捉えることもできる。

さらに今回の改定において退院時薬剤情報連携加算※2が新設されている。同加算の目的は、当該患者に入院前の処方薬の変更または中止があった場合に、その内容およびその後の患者状態等を保険薬局と情報共有するものと考えられる。

加えて同加算の上流には、入院時のポリファーマシー(内服薬の多剤服用)による弊害の解消推進という重点課題があることに留意しておく必要がある。つまり、医療機関の薬剤師は入院中の患者の内服薬において総合的な評価を行い、不必要な内服薬は中止するよう努めることが求められる。その結果として本加算の対象となった場合には、入院中の薬物療法に関するサマリーを退院時に作成し、かかりつけ薬剤師が所属する保険薬局に提出する。

これが、退院時の医薬連携が目指すフローと考える。だが、患者がかかりつけ薬剤師を持っていない場合、複数の保険薬局にサマリーを提出することになり効果は低減してしまう。結果、入退院における継続的な薬学的管理、医薬連携において、かかりつけ薬剤師の存在は必要不可欠である。またその推進には医療機関の薬剤師も組織横断的に協力する必要があると言えるだろう。

かかりつけ薬剤師に求められるICTの利活用

新型コロナウイルスの影響もあり、医療機関でのオンライン診療や保険薬局でのオンライン服薬指導を準備不足のまま開始した施設もあるのではないだろうか。医療業界のみならず生産人口減少に伴いICTの利活用が加速することは避けられないため、オンライン服薬指導や医療連携におけるオンライン会議を経験しておくことは医療従事者、患者双方にとって有益だ。医薬連携のカギであるかかりつけ薬剤師にはICTの利活用がより求められるだろう。
(『月刊医療経営士』8月号)

※1:退院時薬剤情報管理指導料(退院時1回90点)
[算定要件]保険医療機関が、患者の入院時に当該患者が服薬中の医薬品等について確認するとともに、当該患者に対して入院中に使用した主な薬剤の名称に関して当該患者の手帳に記載したうえで、退院に際して当該患者またはその家族等に対して、退院後の薬剤の服用等に関する必要な指導を行った場合に、退院の日に1回に限り算定する。

※2:退院時薬剤情報連携加算(退院時1回60点)
[算定要件]保険医療機関が、入院前の内服薬の変更をした患者または服用を中止した患者について、保険薬局に対して、当該患者またはその家族等の同意を得て、その理由や変更または中止後の当該患者の状況を文書により提供した場合に60点を所定点数に加算する。

北畑智英(社会福祉法人恩賜財団済生会支部埼玉県済生会栗橋病院薬剤科副科長)
きたばた・ともひで●1997年、星薬科大学卒業。99年、同大学大学院卒業後、社会福祉法人恩賜財団済生会支部埼玉県済生会栗橋病院に入職。現在、薬剤科副科長と務める。作業環境測定士、NST専門療法士、糖尿病療養指導士、医療経営士2級