部門マネジメント
薬剤部門(1)
薬剤部門の診療報酬と多職種協働 ~病棟薬剤業務実施加算~

病院には、さまざまな専門職が在籍しています。各部門がどのような課題を抱え、どんなマネジメントを行っているか、皆さんは知っているでしょうか。医療経営士が病院全体を巻き込みながら病院改革を進めるには、各部門の状況を理解することが不可欠。各部門で実践されているマネジメントを知ることで見えてくるものがあります。

3月5日、2020年度診療報酬改定の概要が発表された。18年度改定の基本的視点と具体的方向性を比較すると、20年度は「医療従事者の負担軽減、医師等の働き方改革の推進」が重点課題として冒頭に取り上げられている。さらに、勤務医の働き方改革への対応として、診療報酬と地域医療介護総合確保基金から公費として約270億円が充当され、医師の時間外労働規制に向けて待ったなしの様相である。

病院薬剤師においては、働き方改革への対応となるタスク・シフティング/タスク・シェアリングを軸に、連携・協働によるチーム医療の推進、院外医療機関との連携、バイオ後続品の使用促進、栄養関連などで一定の評価が得られた。本改定で経営的視点においても病院薬剤師の価値はさらに高まったと言えよう。

本改定における薬剤部門のマネジメントにおいては、事務系医療経営士の協力が必須であり、本連載では、事務職員との協働についても考える機会としたい。第1回は、今回特段高い評価を得られた病棟薬剤業務実施加算を取り上げる。

実施加算の意義と届け出状況、業務評価

病棟薬剤業務実施加算(以下、実施加算)は、12年度改定において、病院勤務医の負担軽減策および薬物療法の有効性、安全性の向上に資することを目指して新設された。実施加算にまつわる業務は12年以前より、医師の負担軽減に効果があることが評価されていた。実施加算は、入院基本料等加算であり、薬剤部門単独ではなく医療機関全体として薬剤師の増員や業務内容を検討する必要があることに十分留意したい。12年度新設時の主な算定要件・業務内容等については表に示す。

加えて、16年度酬改定にて、特定集中治療室管理料など規定の管理料を算定している高度急性期医療を担う治療室に薬剤師を配置していることを評価した病棟薬剤業務実施加算2(80点、1日につき)が新設され、急性期医療においても同様の評価が得られている。

「平成30年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和元年度調査)」(以下、検証調査)における薬剤部門責任者票によると、実施加算届出施設は全体で約20%にとどまっており、病床数の少ない施設ほど低い割合となっている。加算が届け出できない理由としては、「薬剤師数不足」が約80%、「病棟以外の業務負担が大きい」が約40%、「病棟専任薬剤師による病棟業務の実施時間が週20時間に満たない」が約25%という順になっている。

一方、実施加算にかかわる業務評価はどうか。検証調査の医師調査票における「病棟薬剤師の配置による医師の負担軽減及び医療の質向上への効果」によると、「患者からの情報収集(投薬歴、持参薬等)」などすべての選択肢で「効果がある」「どちらかといえば効果がある」の合算割合は90%を超えていた。さらに同調査の看護師長調査票における「病棟薬剤師の配置による効果」では、「速やかに必要な情報を把握できるようになった」「看護職員の薬剤関連業務の負担が軽減した」が60%以上と高評価である。
つまり実施加算は、「医療従事者の負担軽減、医師等の働き方改革の推進」に大きな評価を獲得しているにもかかわらず、薬剤師不足といった理由により届け出数は極めて少ない状況にあるのが現状と言える。

20年度改定における変更点の解釈

20年度改定における実施加算の変更点について説明したい。詳細は厚生労働省が公表している資料を確認いただきたいがまず、実施加算1、2ともに20点アップしたことは、病棟薬剤師による薬剤の適正使用や持参薬の有効活用などが、経営の視点においても大きな評価を得たことの証左ではないか。同時に、先述した加算の届け出数と評価のギャップを埋める財源であると捉えられる。

ただし専任要件は、1病棟に各入院基本料を算定する患者が一部でも含まれている場合は薬剤師の専任が必要であり、これは、新設当時と変更されていない。本要件の緩和は今後もないだろうと筆者は考えている。なぜなら、これからの病院薬剤師は、調剤等の対物業務からいかに脱却して、病棟業務主体に人員配置をシフトさせる必要があるからである。
また、常勤薬剤師の要件は、へき地で薬剤師不足が顕著な医療機関において厳しい条件であった。18年「医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、施設種別にみた薬剤師数の年次推移は薬局の大幅増に比べて、医療施設は微増という現状であり、医療施設の薬剤師確保は継続した課題となっている。

20年度改定では、「非常勤2名の業務時間の合算によって常勤1名換算となること」、また、医薬品情報の収集および伝達の面でも常勤の要件が緩和された。この結果、常勤薬剤師が1人の小規模の医療機関でも届け出がしやすくなった。しかしこれは、あくまでも薬剤師不足が顕著な地域の救済処置であることに留意するべきである。つまり、病棟薬剤業務の質と持続性の視点においては、常勤薬剤師を確保し、多職種とより良いチーム医療を構築できる人材を育成することが将来的にはより効果的であり、容易なその場しのぎは避けるべきだろう。

今後の対応と医療経営士への期待

まず、実施加算の基本は働き方改革推進の一環であることは再認識できただろうか。また薬剤部門長においては、病棟薬剤業務による医療従事者の業務軽減、医薬品の適正使用や持参薬の活用によるコスト削減効果などの付加価値をデータとして可視化し、これを経営幹部にアピールすることが肝要である。そうすることが、病棟薬剤業務のより良い体制構築への近道になると考える。
事務系医療経営士の皆さんには、ぜひ薬剤部門の良きアドバイザーであってほしいと思っている。特に、極端な業務の線引きなどが生じることなく、各医療機関で最適な協働・連携を構築する一役を担っていただければ心強い。

北畑智英(社会福祉法人恩賜財団済生会支部埼玉県済生会栗橋病院薬剤科副科長)
きたばた・ともひで●1997年、星薬科大学卒業。99年、同大学大学院卒業後、社会福祉法人恩賜財団済生会支部埼玉県済生会栗橋病院に入職。現在、薬剤科副科長と務める。作業環境測定士、NST専門療法士、糖尿病療養指導士、医療経営士2級