食べることの希望をつなごう
第56回
管理栄養士として専門分野を極めよう
~摂食嚥下リハビリテーション栄養専門管理栄養士~

9月に開催された日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会に参加してきました。日頃から摂食嚥下障害のある患者さんにかかわる皆さんと学びの時間を共有し、大いに刺激を受けました。

専門管理栄養士とは

2022年9月23・24日、幕張メッセで開催された第28回日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会は久しぶりの現地開催で、大変活気のある学会でした。私は今回、同学会にて摂食嚥下リハビリテーション栄養専門管理栄養士としての活動報告をしました。そこで、以前も紹介していますが、改めて(公社)日本栄養士会の認定制度について紹介したいと思います。

日本栄養士会には①各分野において「栄養の指導」について責任をもって実践できるレベルに到達したスキルを認める「認定管理栄養士、認定栄養士認定制度」、②特定分野における実践活動により、優れた成果を生むことができる管理栄養士を認定する「特定分野別認定制度」、③さらに専門性を身に付けたい管理栄養士へ時代のニーズに応えるスペシャリストを認定する「専門分野別認定制度」の3つの認定制度があります。

③について、日本栄養士会のホームページには「より卓越した技術・知識を修得し、より複雑で解決困難な栄養の問題を有する個人や集団に応じた栄養管理を実施でき、その専門性を教育や研究スキルにも発揮できる管理栄養士を、専門管理栄養士として関連団体と共同して認定します」と記載されています。現在、(1)がん病態栄養専門管理栄養士、(2)腎臓病病態栄養専門管理栄養士、(3)糖尿病病態栄養専門管理栄養士、(4)摂食嚥下リハビリテーション栄養専門管理栄養士、(5)在宅栄専門管理栄養士、の認定がされており、栄養士会ホームページには認定者名簿が掲載されています。

専門管理栄養士の認定に必要な条件

摂食嚥下リハビリテーション栄養専門管理栄養士の認定に必要な申請資格として、次の3つがあります。

1 日本国の管理栄養士免許を有し、管理栄養士として優れた人格と見識を備えていること

2 日本栄養士会および日本摂食嚥下リハビリテーション学会の会員であること

3 日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士の取得者であること

このうち、3の日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士は、《1》(一社)日本摂食下リハビリテーション学会への入会期間が2以上であること、《2》下の臨床研究歴が3年以上であること、《3》日本摂食嚥下リハビリテーション学会インターネット学習プログラムを修了すること、の3つの条件を満たし、認定試験に合格することで取得できます。このインターネット学習プログラムは、学び直しにも非常に役立つの大変お勧めです。
そして、摂食嚥下リハビリテーション栄養専門管理栄養士の受験資格は、前述した(1)~(3)の3つの条件に加え、

I 管理栄養士を取得後5年以上の実務経験を有し摂食嚥下障害を持つ者(児)に関わる栄養管理に通算3年以上従事していること

II 日本栄養士会および摂食嚥下リハビリテーション学会が指定する研修の履修を必須とする

III 摂食下機能に関する実績5症例および実務経験歴を提出すること

IV 摂食嚥下リハビリテーションおよび栄養分野の学術集会・地方会または関連する研究会等において、摂食嚥下に関する筆頭発表、もしくは筆頭論文を過去3年間のうち1篇以上有すること

という認定条件を満たすことが必要です。
この認定資格は5年ごとに更新が必要であり、次の認定条件を満たしていることが必要です。

❶摂食嚥下リハビリテーション学会認定士の資格を有すること

❷過去5年間に摂食嚥下障害を持つ者(児)に関わる栄養管理に通算3年以上従事していること

❸過去5年間に別に定める研究業績及び研修業績等の必要な単位数を有すること

今回私は、資格取得から5年経過したため更新を行ったのですが、5年間の活動を振り返り、今後の活動について考えるとてもいい機会となりました。

院内の取り組みを外に発信していく

学会や研修会などで当院における摂食嚥下障害のある患者さんへの取り組みを発信する機会が増えています。当院院内レストランでの「やわらか食」の提供や、摂食嚥下障害のある方でも外食を楽しむためのポイントについて紹介する機会もあります。通常の業務で口腔がんの患者さんから「食の悩み」をうかがっていたことが大きなきっかけでした。また、外食の際やご家族と同じ食事を食べるための「手元での形態調整」について紹介する機会も増えています。
海外からの病院見学の受け入れも大変刺激を受けました。台湾大学より栄養士9人と看護師1人、合計10人が見学にいらしたのですが、私は英語がまったくできず後悔しました。摂食嚥下リハビリテーション栄養専門管理栄養士の更新講習でも苦戦した英語は、これから嫌でも必要になると実感しています。

摂食嚥下リハビリテーション栄養専門管理栄養士の資格取得により、メールで案内や情報が送られてくるのも大変刺激になっています。なかには論文紹介や仕事の依頼などもあるので、自己研鑽につながっています。
論文発表や学会発表など、なかなか手を出しにくいと感じている管理栄養士は少なくないと思います。何から手をつけたらいいのか、どのように進めたらいいのかもわからず、指導してもらえる先生もいない……。そんななかでも、摂食嚥下リハビリテーション栄養専門管理栄養士のメーリングリストでは、論文の紹介をはじめとするさまざまな情報が発信・共有されており、資格取得後のアフターフォローが充実していると思います。

取得も更新も決して容易ではない専門管理栄養士の資格ですが、資格取得のためのプログラムも更新のためのプログラムもどちらも有意義な内容だということをお伝えしたく、そして一緒に活動していく仲間が増えてほしいと思い、再度紹介しました。
日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会では、久しぶりにお会いする先生方もいらっしゃり、日常業務とはまた違った空気を吸い、刺激を受けて帰宅しました。これから次の資格更新まで5年あるので、今後の活動について、気持ちを新たに考えていこうと思います。それがこれからどのような活動になるのか大変楽しみです。(『ヘルスケア・レストラン』2022年11月号)

豊島瑞枝(東京医科歯科大学歯学部附属病院 管理栄養士)
とよしま・みずえ●大妻女子大学卒業。東京医科歯科大学医学部附属病院に入職後、2010年より東京医科歯科大学歯学部附属病院勤務となる。摂食嚥下リハビリテーション栄養専門管理栄養士、NST専門療法士

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