【7/18追加情報あり】日本ヘルスケア経営学院が医療DXのオンラインセミナーを開催
診療報酬改定2024と医療DXの全貌を解説
日本ヘルスケア経営学院(日本医療企画)は6月14日(金)、オンラインセミナー「診療報酬改定2024と医療DX」を開催した。講師には神奈川県済生会横浜市東部病院DX推進室副室長の金城悠貴氏を迎え、診療報酬改定と医療DXについてじっくりと解説した。
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国が進めている医療DXについて
全体像を確認しながら解説
冒頭、金城氏はまず2024年度改定における厚生労働省の資料「医療DXの推進」に挙げられた、(1)マイナ保険証を中心とした医療DXの推進、(2)脳卒中に対する情報通信機器を用いた遠隔連携の推進、(3)情報通信機器を用いた診療の推進等について、それぞれキーワードをあげて解説。そのうえで、今回の改定と国が提示している医療DXの工程表から12個のキーワードを抽出して整理、両方に重なっているのが「マイナ保険証」「電子処方箋」「電子カルテ情報共有」「救急時医療情報閲覧」の4つだと指摘し、今回の改定だけを見るのではなく、医療DX全体を見ることの重要性を説いた。
次に、「国が進めている医療DXについておさらい」として、先に挙げた12個のキーワードについてそれぞれ解説を行った。マイナ保険証については、オンライン資格確認のシステム構成について確認。医療機関側で資格確認用の端末を設定し、その端末のみが外(=国のサーバー)とつながる、という仕組みを改めて確認したうえで、この仕組みは「電子カルテ情報共有サービス」についても同じであることを指摘。
「電子カルテ情報共有サービスにおいては、患者の同意を得れば3文書6情報(①診療情報提供書、②キー画像を含む退院時サマリー、③健康診断結果報告書/①傷病名、②アレルギー情報、③感染症情報、④薬剤禁忌情報、⑤検査情報(救急時に有用な検査、生活習慣病関連の検査)、⑥処方情報)がこの端末から流れていくことになる。マイナ保険証の資格確認のためだけに入れている病院では、その端末が電子カルテ情報共有サービスに利用するに当たって負荷に耐えられるかどうかの確認は必要ではないか」と訴えた。
また電子処方箋については、「批判するわけではない」と言いながら、診察後に患者が交付された「電子処方箋の引換証」を薬局に持って行って調剤してもらう、という現状の仕組みでは運用側にもあまりメリットが感じられず、「重複投与の防止、疑義照会の効率といった面での効果はあっても、なかなか進んでいかないのではないか」と私見を述べた。
救急時医療情報閲覧については、工程表では令和6年10月スタート予定となっていること、2024年度改定要件が見直された「急性期充実体制加算」では、同機能の実装が要件となっており、経過措置により今年度中に用意するつもりであれば算定できる、と解説。さらに救急時で患者の同意を得ていないという前提なので、閲覧できる期間を限定することになっているが、閲覧可能な情報のなかに「3文書6情報」以外の薬剤情報、診療情報等が含まれており、これらはレセプトから抽出されることになっていることに注意を促した。
電子カルテ情報の標準化については、今後進められる各種の施策はこの国が進めている標準規格の実装が前提になってくるため、標準マスタについては対応しておくことが必須だと解説。また標準型電子カルテについて、厚労省が提示している模式図では全国医療情報プラットフォームと民間事業者が提供するオプション機能の間に標準型電子カルテが介在する形になっており、プラットフォームにつなげるためには、すでに電子カルテを有している医療機関も標準型電子カルテを入れることが必須になる可能性もあるのではないかと述べ、今後明らかになる情報をしっかり確認することが必要だとした。
社会全体が進む方向を理解したうえで、
自院が何をするべきなのかを考える
第2部では「今後も第4次産業革命(IoT、AI)、Society5.0に向けた改革が続く」とし、現在国で進められている施策について紹介。内閣府が提唱するSociety5.0においてはフィジカル空間とサイバー空間の高度な融合が果たされるとし、医療介護分野における事例を提示。さらに、その実現に向けて現状すでに進んでいるスーパーシティ構想、デジタル田園健康特区等の実例を示しながら、「制度改革はどんどん進んでいる。自院のこれからの方向性ややるべきことを考えるためには、社会全体がどの方向へ進んでいるのかを知っておくことが必要だ」とした。
最後に、これまで話してきた内容を踏まえ、医療機関は何をすべきかについて、金城氏は「ここまで解説してきた医療DXでは直接的に病院のなかでの合理化や運用効率アップにつながるようなものはなく、これで現場が楽になることはない」とし、だからこそ、現場の負担を減らすためのDXは病院のなかで自分たちで考えて進めていくことが必要だとした。
続いて、金城氏はセキュリティ対策について言及。23年5月に厚労省から出された医療情報安全ガイドライン6.0について、「ランサムウェアによる被害等があったことで、その対応をしっかり進めていくためのガイドラインになっており、チェックリストやTo doリスト等もあって非常に充実している」と評価。充実しているからこそ、「書かれていることをそのままやって終わり」にならぬよう、思考停止しないことが大事だと述べた。
ランサムウェア対策については、「実際に被害に遭った病院の話を聞くと、1.5カ月分くらいの収入源と職員の時間外手当、協力企業への支払い等で、概算で2~3カ月分の医業収益が飛んでいる」という実情を紹介。「この金額を運転資金として借りたと考えたら返済に何年かかるのかを考えてみてほしい」と訴え、セキュリティ対策にコストを掛けることの必然性を強調。2024年度改定で新設された「診療録管理体制加算」について、「国としてはこの加算をセキュリティ対策の原資としてバックアップ体制を整えてほしいというメッセージではないか」と述べ、病院として早々に取り組むべきと説いた。
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詳しくはこちらから! → 実践研究!「診療報酬改定2024と医療DX」
■日本医療経営実践協会関東支部 第51回神奈川研究会のお知らせ
今回のセミナーで話すことができなかった医療機関の内部でのDXをどうするのかという点については、金城氏が代表世話人を務める、日本医療経営実践協会関東支部神奈川研究会で、自身が務める済生会横浜市東部病院の事例に基づく運用改善、効率化について解説するので関心のある方はそちらもぜひご参加いただきたい。
◇テーマ「病院DXの進め方事例-重点を置くべきポイント-」
◇日時 2024年7月19日(金) 19:00~21:00
◇形式 オンライン及び会場開催のハイブリッド形式
◇会場 神奈川県立かながわ労働プラザ(エルプラザ)
◇講師 金城悠貴氏(済生会横浜市東部病院 DX推進室 副室長)
https://kanagawa-kenkyukai-51.peatix.com/