院長婦人はコンサルタント
第108回
病院だと年齢の壁で門前払い?
看護師採用は60代が狙い目だ
前号でお伝えしたパート看護師1人増員の件。「あのお……、ちょっとお話が……」の言葉に、高鳴る心臓を押さえながら看護師リーダーと面談。焦る気持ちを悟られないよう、超平静を装いつつ対峙した。
当院は過去に苦い経験があり、看護師は常勤ではなくバート数人のシフト制にしていた。紆余曲折を経て、ここしばらくは固定メンバーで、看護師が足りない部分は臨床検査技師にお願いし回している。
以前、看護師のパート採用に難儀して、紹介派遣会社にお願いしたこともあった。思い出したくもないが、そこで思いっきりババを掴まされたことがあった。ちょっとおかしいな……と思ったら、案の定、心療内科受診中の方で、残念ながら1週間ももたず、離脱。
紹介派遣会社に事情を話し、派遣料金を取り返そうとしたが空しい結果に終わり。その後も60歳の応募者を雇ってみたが、頑固な性格も災いし、周りとの軋轢も生じたのでお引き取りをお願いしたこともある。
多分、今回もかなり大変だろう……と頭を抱えながら、顧問社労士にお願いしてハローワークに求人票を掲載してもらった。普通に求人票を書いてもヒットしないと考え、備考欄に「50代、60代大歓迎」の文言を入れてもらった。
シフト制で週に数回の勤務だし、病院と違って高度なスキルより高齢患者対応の人間力スキルのほうが重要なので、60代でも十分対応できる。むしろ、ありがたい。そもそも、今の60代は若いし、昔と比較して現在の年齢は以前の7掛けとも耳にする。でもって蓋を開けたらびっくりで、なんと、看護師募集に3人も応募があった。
面接をしたところ、昨今の年金問題もあり、皆様70歳くらいまでは働いて収入を得たいと思っているらしい。看護師不足と言われるが、応募者曰く、病院の求人に応募しても、60歳の壁で門前払いを食らうらしい。クリニックでも同様だとか。それを聞いて、サマンサもびっくりした!
当院院長も齢62歳。決して若くはないが、老け込むには早すぎる。とはいえ、あと何年診療できるか?だんだん切実なものとなってきた。院長とも話をしたが、いつまで診療できるか?は体力よりもインフラ問題が引き金になると思っている。厚生労働省は2030年までにほぼすべての医療機関での電子カルテ導入を目指している。つまり、状況次第では当院の存続が危うくなってくるってことだ。
結局、応募のあった3人のうち、今いるメンバーと仲良くやってくれそうな60歳の方にお願いした。
恐る恐る「紙カルテですが大丈夫でしょうか?」と聞いたら、即答で「大丈夫です!紙カルテでありがたいです」と力強いお言葉が。今まで皮膚科クリニックで長く勤務されていたが、これから眼科領域も覚えてもらえばいいだけのこと。なんてたって、人生100年時代!まだまだ先は長いのだから。
てなわけで、教育するスタッフの103万円の壁問題も絡み、年末は労働時間を調整しながらなので、12月給与〆の後から新人に研修に入ってもらうことになった。さて、12月後半からどんなことが起きるやら。(『CLINICばんぶう』2025年1月号)