DATAで読み解く今後の方向性 地域医療・介護向上委員会【特別編】
医療施設調査から読み解く
診療所の状況⑧

「医療施設調査」の結果を用いて診療所の状況に関する分析を行っていく。8回目は、診療所における分娩について、データ用いて現在の状況を検証していく。

厚生労働省の「医療施設調査」は、動態調査を毎年、静態調査を3年ごとに実施し、後者は前者と比べて項目が充実している。関心がある方は、e-Stat(政府統計の総合窓口)で検索してみてほしい。

分娩件数は△26%
施設数は△29%と縮小傾向

医療施設調査を用いた、診療所を取り巻く状況に関する解説も8回目を迎えた。今回は、診療所における分娩を取り上げる。
少子化が進むなかではあるものの、分娩は夜間に多いこともあり、産婦人科医の過重労働が指摘されている。そのような環境下の周産期医療において、診療所が果たす役割は大きい。そこで、実際のデータを用いてその現状を検証していく。

表は、2008年から20年にかけての、診療所の分娩件数、取扱施設数、施設当たりの分娩件数の推移をとりまとめたものだ。
日本全国に約10万件の診療所があるが、そのうち分娩を取り扱っている診療所は約1%と、非常に少ない。そのうえ、表に示したとおり、08年から20年までの12年ほどで、分娩数は51万3504件から38万2164件の26%減、施設数は1564施設から1107施設の29%減と、それぞれ大きく減少傾向にある。
しかし、減少したとはいえ、病院との役割分担の観点からは、診療所が全分娩の約45%を担っており、周産期医療において果たす役割は大きいと言える。なお、分娩件数に関しては、調査年度の9月の1カ月分のデータが公開されているが、12倍に年換算して掲載されている点に留意されたい。

診療所における周産期医療
地域によってバラつきあり

他方で、診療所による周産期医療の状況においても、地域差は大きい。ここからは、都道府県別に▽人口100万人対分娩施設数、▽1施設当たり分娩件数、▽医師数、▽助産師数、帝王切開・無痛分娩の実施割合――を比較していく。

■人口10万人当たり分娩施設数

長崎県が2.1カ所と最も多く、佐賀県(2.1カ所)、宮崎県(1.7カ所)が続いた。逆に、最も少ないのは北海道の0.4カ所で、次いで、香川県(0.5カ所)、東京都(05カ所)の順に少なかった。また、最も多い場所と少ない場所の差異は4.8倍と大きくなっている。

■1施設当たり分娩件数

愛知県が500件で最も多く、次いで、広島県(450件)、千葉県(441件)の順に多い。一方で、高知県が222件と最も少なく、島根県(222件)、青森県(227件)の順に少ない。最も多い場所と少ない場所の差異は、2.3倍と比較的大きいと言える。

■1施設当たり医師数

香川県が3.5人と最も多く、次いで、埼玉県(2.7人)、東京都(2.6人)の順に多かった。逆に、秋田県が1.0人と最も少なく、次いで、青森県(1.1人)、大分県(1.1人)の順に少なかった。また、最も多い場所と少ない場所の差異は3.5倍と、大きくなっている。

■1施設当たり助産師数

新潟県が8.4人と最も多く、次いで長野県(8.0人)、北海道(7.8人)が続いた。一方で、最も少なかったのは青森県の2.2人で、次いで、香川県(2.4人)、福井県(2.9人)の順に少ない。さらに、最も多い場所と少ない場所の差異は、3.9倍と大きくなっている。

■帝王切開・無痛分娩の実施割合

まず、帝王切開の実施割合は、高知県が28.8%と最も多く、次いで、鹿児島県(25.7%)、奈良県(22.4%)の順に多かった。逆に、最も少なかったのは秋田県の3.2%で、岩手県(6.0%)、長野県(6.5%)が続いた。最も多い場所と少ない場所の差異は8.9倍と、かなり大きくなっている。
次に、無痛分娩の実施割合は、東京都が25.9%と最も多く、次いで、千葉県(16.7%)、神奈川県(14.5%)が続いた。一方で、少ない地域については、岩手県、奈良県、鳥取県、高知県がいずれも0%であった。

分娩医療体制の今後の方向性をどう考えるか

以上から、日本の周産期医療における地域格差が改めて示された。たとえば、医師の少ない地域では帝王切開や無痛分娩の割合が低い傾向にあった。このような地域では、仮に帝王切開の適応となる患者は事前に病院に紹介し、麻酔科医が必要な無痛分娩は対応しないといった流れになっていると推測される。
24年には、医師の働き方改革にともない医師の時間外労働時間の上限規制が始まる。これにより、医師の派遣に頼っていた診療所は24時間体制の確保が困難となる可能性がある。宿日直許可基準の緩和によって体制確保が可能となるという意見もあるが、少なくとも、中長期的な見直しを迫られることになるだろう。

今回は、医療施設調査のデータから診療所における分娩の状況を読み解いた。次回は、透析といった各種治療の状況について、引き続き解説していく。(『CLINIC ばんぶう』2023年8月号)

石川雅俊
筑波大学医学医療系客員准教授
いしかわ・まさとし●2005年、筑波大学医学専門学群、初期臨床研修を経て08年、KPMGヘルスケアジャパンに参画。12年、同社マネージャー。14年4月より国際医療福祉大学准教授、16年4月から18年3月まで厚生労働省勤務

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