デジタルヘルスの今と可能性
第63回
薬局のデジタルヘルスの変化は
地域医療のあり方に影響する

「デジタルヘルス」の動向を考えずに今後の地域医療は見通せない。本企画ではデジタルヘルスの今と今後の可能性を考える。今回は、デジタルヘルスの動向と薬局の変化について考えていく。

薬局に訪れるだろうデジタル大改革の波

デジタルヘルスと地域医療を考えていくうえでは、病院や診療所だけではなく、地域の薬局がどのように変化していくのかもとても重要です。今回は、薬局がデジタルによって大きく変化している現況について、話していきたいと思います。

2023年は、Amazon薬局(処方薬のインターネット販売事業)が日本に進出してくるという話があり、いよいよ日本の薬局におけるデジタル大改革が起こるのではないかと予想されています。
薬局は医療機関とは異なり株式会社が開設主体になることができるため、ビジネス視点の変化が進みやすいです。そのため、一度動き始めれば病院や診療所よりもデジタルへの転換は早いはずなので、社会のデジタル化と同じようなタイミングでデジタル化が進むと考えられています。

そもそも、薬局の業務には、薬の説明や調剤後のフォローアップといった対人業務である「服薬指導」と、処方薬の調合や在庫管理などの対物業務の「調剤」があります。前者に関する制度の変化としては、20年9月に施行された改正薬機法で、薬剤師の必須業務である服薬指導をテレビ電話で行うオンライン服薬指導ができるようになったり、調剤時以降にも必要に応じて患者のフォローアップが義務化されたりしました。
また、23年1月26日からは電子処方せんの本運用も開始。ただ、現在はまだまだ運用施設が少なく、厚生労働省が公開しているリストを見ると、病院6件、診療所10件、薬局187件でした(23年2月初旬時点)。電子処方せんの導入により、複数の医療機関や薬局における情報を把握できるようになり、重複投薬などのチェックが可能となっていく。これは、オンライン資格確認の導入が進むにつれて対応医療機関・薬局も増えていくものと考えています。
次に、後者の動向としては、19年4月に「調剤業務のあり方について」という通知が発出されており、たとえば、処方せんに記載された医薬品のピッキングや一包化などの作業は、薬剤師の指示のも一定の要件を満たしていれば、可能であると示されました。

調剤業務の外部委託に関する議論の進展

その後、私が薬局の大きな改革になると考えている、調剤の外部委託についての話がなされていきます。21年4月20日の規制改革推進会議の医療・介護WGにおいて「調剤業務の効率化」が取り上げられたことで議論が始まり、22年1月19日の医療・介護感染症対策WGに続いています。調剤に関する責任の所在や安全性の懸念、患者が薬を受け取るまでのタイムラグなど問題点の議論がされるなかで、特に日本薬剤師会は、調剤の外部委託によって責任の所在が不明瞭になる可能性を危惧し反対していました。

この議論に対して、一つの方向性が示されたのが22年6月7日に閣議決定された規制改革実施計画です。そこに「調剤業務の外部委託を解禁すること」が明記され、規制改革の対象議論となりました。また、そもそも薬局や薬剤師の将来に関しては、厚労省が「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するWG」を設置しており、私も医療DXの有識者として登壇させていただきました。全7回の会議が行われ、22年7月11日にとりまとめが発表されています。
ここでは「調剤業務の外部委託」の解禁が及ぼす地域医療への影響が検討されており、結果、当面の間は委託可能な業務は一包化に限定することや、委託先は同一の三次医療圏内とされました。しかし、それで終わることなく、外部委託先の拡大に関しては委託可能となったあとに必要に応じて検討を行うことが示されています。

調剤の外部委託解禁による、将来像は大きく2つあると考えています。仮に、Amazonが薬を配送するだけなら、薬局や地域医療への影響は少ないと考えています。一方、さらに規制改革が進み、薬局は対人業務である服薬指導に特化したものとなって、調剤はすべてAmazonに外部委託され、同社の巨大な調剤センターから全国配送されるようになれば、オンライン診療の進捗も合わさって地域医療の診療圏という考え方はなくなるかもしれません。
このようなセントラル配送センターからの全国配送を見据えて着々と進んでいるのが、ドコモとメドレーが共同で21年に買収したオンライン薬局「ミナカラ」です。21年にセイノーホールディングスと連携して国内初となる物流センター内に「セントラル調剤薬局」をオープンしている。また、22年からはオンライン診療のDMMオンラインクリニックのOEMとし「ミナカラオンラインクリニック」も開始しています。

薬局は23年に大きくデジタル変革が起きると考えています。医療機関の将来を考えていくなかで、薬局の変化も引き続き注目していきましょう。(『CLINIC ばんぶう』2023年2月号)

加藤浩晃
(京都府立医科大学眼科学教室・デジタルハリウッド大学大学院客員教授/東京医科歯科大臨床教授/THIRD CLINIC GINZA共同経営者)
かとう・ひろあき●2007年浜松医科大学卒業。眼科専門医として眼科診療に従事し、16年、厚生労働省入省。退官後は、デジタルハリウッド大学大学院客員教授を務めつつ、AI医療機器開発のアイリス株式会社取締役副社長CSOや企業の顧問、厚労省医療ベンチャー支援アドバイザー、千葉大学客員准教授、東京医科歯科大臨床准教授などを務める。著書は『医療4.0』(日経BP社)など40冊以上

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