院長婦人はコンサルタント
第84回
師走に思うデジタル化と
アナログなやり取りの価値観
ついに師走――。毎年思うが、1年が過ぎるのは本当に早い。12月になると八丁紙(正月に神棚や鏡餅の前に飾る切り絵)のプレゼントが患者さんから届く。当院名と干支が切り抜かれていて、大変素敵な贈り物だ。これを受け取ると、「今年も無事にすごせたなあ」と安堵する。贈り主の患者さんには、院長が八丁紙を掲げた写真を載せた礼状をお送りしている。
2022年の年末診療は12月28日までとした。毎年官庁や企業の仕事納めの翌日を診療納めとし、仕事で来院できなかった方向けに診療していたが、実は、そこまで数は多くない。地方の年末年始は帰省客をお迎えする側なので、皆その準備に忙しい。そんな年の瀬が押し迫ってからの受診ではなく、あらかじめ計画的に通院しているせいかもしれない。
院内掲示やホームページにも年末年始の休診案内をお知らせし、留守電のアナウンスにも盛り込んだ。診療納め当日は、診察終了後に玄関扉へ件の八丁紙を貼りつけ予定だ。
ただ、その前にもう一仕事。12月末にやっと院内のネット環境整備の工事が入る。オンライン資格確認に向けて不安定なネット環境の整備に着手したが、工事日程がなかなか合わず、ここまでずれ込んだ。実は、サマンサは最近立て続けに別の診療所を受診したのだが、最初の歯科診療所はすでにオンライン資格確認の端末が置いてあった。うっかり保険証を持参していなかったが、マイナンバーカードで対応することができた。
それまで特段マイナカードにメリットを感じていなかったが、今回、保険証代わりに確認できたことで、ホッとすると同時に、何だか得したような「自分はちょっと時代を先取りしている」優越感を感じてしまった!サマンサ的にもこの気持ちはびっくりで、後日受診した医科診療所はまだ非対応だったので、「な~んだ、遅れているな~」と上から目線な心境に。しかし、ということは……。当院でも早くしないと!!と、再確認した次第だ。
オンライン資格確認やオンライン診療といった流れには乗っていかないとだめだね……とはいえ、診療所にはアナログ対応が必要な場合もまだまだある。たとえば、長年当院を受診している患者Aさんへの対応は、ズバリそれだ。
Aさんは当院のほか他科の受診もあり、精神科への入院歴もある方だ。今年に入ってからの診療費が未払いのため電話で支払いのお願いをすること数回。そのたびにのらりくらりとかわされ、一向にらちがあかない。最初はスタッフが電話していたが、先月からサマンサが担当になった。
法的に「何か手立てを」と考えたが、それはそれで費用がかかり、数千円のためにそこまでする意味もない。結局、何度かの電話ののち、Aさん自身の障害年金が入ったらお支払いいただけることとなった。どんなにIT技術の進歩とオンライン化が進んでも、八丁紙のプレゼントや電話での催促といった、リアルでアナログなやり取りってなくならない。
むしろ、アナログを強みにする……とつぶやきながら、新患さんへ受診のお礼ハガキを手書きするサマンサであった。(『CLINICばんぶう』2023年1月号)