院長婦人はコンサルタント
第80回
猛暑と第7波の裏で煩悶
システム導入の地方事情

サマンサの地元の花火大会は全国的にも有名で、今夏は3年ぶりに開催された。当MS法人も協賛しており、スポンサー席で観覧。さすがに開催団体と市の担当部署による周知徹底のおかげで、大きな声で騒いだり、これ見よがしに飲食したりする人はおらず、無事開催できてよかった。

連日猛暑が続くこのごろ。盆も近いというのに一向に現れないシルバー人材センターの草取り部隊。すくすく育つ雑草に業を煮やし、サマンサ自らミッション敢行。ちょうど新潟県が豪雨に見舞われた日で「雨の日にわざわざ」なんて院長には言われたが、翌日には快晴の復活で、やっぱりサマンサの除草作業はGoodタイミング!
豊かな自然に囲まれた地方診療所で植栽があったりすると、こん苦労がついてくる。きれいにガーデニングされた診療所を見ると、「ここの院長夫人は植物の手入れが得意で優雅な方なんだろうなぁ……」と、つい妄想してしまう。

コロナ禍はこのところ急な感染拡大で、オンライン診療がテレビでも話題にのぼっている。
当院では、オンライン診療よりもオンライン資格確認等システムの導入が急務だ。健康保険証とマイナンバーを紐づけたい意図はよくわかるが、当院のように電子カルテではなくレセコン仕様で紙処方せんを発行している医療機関は、近い将来の電子処方せんなんて無理!!厚生労働省は2023年1月から電子処方せんの取り組みを始めると言っているが、いやはや、いったいどうなることやら……。
ビッグデータの集約・分析の結果、重複投与や併用禁忌のチェックに活用できる点は便利だと思う。ただ、今のままでは当院はそのメリットの一端を享受できずに取りこぼされるわね……。数年前、紙カルテ&レセコンから電子カルテへ変更しようと見積もりを取ったが、金銭的にも設備的にもかなりの負担となるために諦めた経緯がある。「あの悪夢再び……」と思っただけで気が滅入る。
オンライン資格確認くらいなら保険証の期限切れチェックに使えそうだが、保険変更が反映されるまでには数日を要するし、下手をすると1カ月以後のレセプト情報を見て確認&反映というタイムロスを甘んじて受け入れねばならぬ。
「電子的保健医療情報活用加算」の要件もまったく満たさないし……。「これってメリットある?」って思っている診療所(特に地方)、多いんじゃないかな。
地方の戸建て診療所で保管場所が確保できるため電カル移行率が低かったり、そもそも、高齢者が多いのであえてマイナンバーをつくる作業が億劫だったりというのもある。しかも、アラ還の当院院長があと何年診療できるかなぁ?なんて考えてしまった。

以前、近隣診療所の院長が80歳を超えたということでご勇退された。その例で考えれば、当院長の勇退まであと20年。聞くところによると、70代で勇退されてご自身の趣味に没頭されている方もいるらしい。うちの院長は常々、「細隙灯の前で天に召されたい」と言っているので、あと何十年かは診療を続けるんだろうね。

オンライン資格確認導入を前に、自院の行く先に思いをはせるサマンサであった。(『CLINICばんぶう』2022年9月号)

サマンサ●中学校の教師だったが、夫の開業をきっかけに診療所の事務長に就任。日本医業経営コンサルタントと医療経営士3級の資格を持ち、新潟県内の眼科専門診療所で院長夫人兼事務長として経営の舵取りをしている。

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