DATAで読み解く今後の方向性 地域医療・介護向上委員会【特別編】
診療所医師数の現状③
―2020年医師調査から―

新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、外来患者数は減少しており、診療所の閉鎖や売却の話をぽつぽつ聞くようになった。このような環境下、診療所医師数が近時どのような推移を経ているのかを見ていくことは、今後の診療所の事業展開を考えるうえで役に立つこともあるだろう。本稿では、診療科別の診療所医師の状況を見ていく。

主要診療科の平均年齢は30歳前後

厚生労働省は2年に1回、医師・歯科医師・薬剤師統計を行っている。前回は2020年の末に行われ、最近、その集計結果が公開された。

図は、全国の診療所医師の平均年齢および若手医師割合(40歳未満)についてまとめたものである。診療科については比較的医師数の多い診療科を抽出し、美容外科については特徴的なため掲載した。
診療所医師全体で見ると、平均年齢は60歳、40歳未満の割合は5%と、高齢化が進んでおり、若手医師は限定的であることがわかる。診療科別に見ると、美容皮膚科を除いて平均年齢はおおむね60歳前後、40歳未満の割合は10%未満となっており、比較的若い皮膚科でも、平均年齢57歳、40歳未満が8%となっている。

他方で、美容外科は、医師数は多くはないものの、平均年齢43歳、40歳未満が44%となっており、若手医師が多く参入する領域となっている。また、主要診療科のなかで最も平均年齢が高かったのは、外科の67歳で、40歳未満は1%だった。
前々回も取り上げたように、医師のキャリアパスとして診療所での勤務という選択肢は、一部診療科を除いて、減りつつある。
本調査では、在宅医療を担うといった、勤務内容まで聞いているものではないが、おそらく、在宅医療を担う診療所の医師数は、若手を中心に増えているだろう。
また、今回取り上げた美容外科については、いわゆる自費診療が主たる診療領域であり、今のところ、高い収入が保障されている。
医療費の抑制と医師数の増加にともない、医師の収入が今後低下していく可能性が高まるなかで、競争の激しい従来型の診療領域ではなく、将来的なニーズが高く、高収入の診療領域に若手医師が流れていることは想像に難くない。

人口10万人当たり
皮膚科診療所医師数の地域差は約3.4倍

前回に引き続き、各診療科別の診療所医師数について都道府県別の状況を見ていく。本稿では、紙面の関係から、小児科、皮膚科、耳鼻咽喉科について見ていき、残りの診療科は、次回取り上げたい。

表は、小児科、皮膚科、耳鼻咽喉科に係る診療所医師数の都道府県比較である。小児科の人口10万人当たりの診療所の医師数は、鳥取県、兵庫県、東京都の順に多く、茨城県、青森県、長野県の順に少なかった。人口10万人当たりの医師数が最も多い県と少ない県とでは、2.3倍の差異が生じている。

皮膚科の人口10万人当たりの診療所の医師数は、東京都、京都府、香川県の順に多く、福島県、秋田県、高知県の順に少なかった。人口10万人当たりの医師数が最も多い県と少ない県とでは、3.5倍の差異が生じている。

耳鼻咽喉科の人口10万人当たりの診療所の医師数は、京都府、東京都、徳島県の順に多く、岩手県、茨城県、千葉県の順に少なかった。人口10万人当たりの医師数が最も多い県と少ない県とでは、2.3倍の差異が生じている。

本稿では、診療所における診療科ごとの状況について、実際のデータを用いて紹介した。診療科によって、増減のトレンドや地域差の特徴が異なっていた。
日本では、病院でも外来診療が行われているため、病院の医師数も確認する必要があるものの、医師数が少ない地域においては、一定の新規参入余地があると言えるのかもしれない。

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次回は、引き続き、診療所医師の診療科別の状況を見ていく。(『CLINIC ばんぶう』2022年8月号)

石川雅俊
筑波大学医学医療系客員准教授
いしかわ・まさとし●2005年、筑波大学医学専門学群、初期臨床研修を経て08年、KPMGヘルスケアジャパンに参画。12年、同社マネージャー。14年4月より国際医療福祉大学准教授、16年4月から18年3月まで厚生労働省勤務

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