デジタルヘルスの今と可能性
第51回
2022年度診療報酬改定
オンライン診療の注目点とは?
「デジタルヘルス」の動向を考えずに今後の地域医療は見通せない。本企画ではデジタルヘルスの今と今後の可能性を考える。今回は、2月に答申が出た2022年度診療報酬改定のうち、オンライン診療のポイントを解説する。
診療報酬に先立ち指針の改定で新たな動き
ついに2022年度診療報酬改定の答申が中央社会保険医療協議会から出された。そこで今回は、デジタルヘルスに関連する診療酬改定のうち、特にオンライン診療に関して詳しくお話ししていこうと思う。
まず、具体的な改定内容の前に、オンライン診療は22年1月28日に、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の改定に関する局長通知、ならびに指針改定によQ&Aに関する事務連絡が出されている。
そのなかで特徴的だったのは、「オンライン診療のみで必要な情報が得られ、結果として、対面診療を行うことなく治療が完結することはあり得ます」と、オンライン診療のみで治療の完結があり得ると明示的にした点だと思っている。そして、「同じ疾患名でも個々の患者の状態はさまざまであることから、疾患名だけで判断することは困難です」というように、疾患の縛りがあるわけでもない。
もちろん、「オンライン診療は対面診療と適切に組み合わせて行うことが基本です」と記載されているように、対面とオンラインのハイブリッドで行われることが基本である姿勢は変わらない。しかし、今回の指針でオンライン診療のみでの完結があり得ることが示されたのは、「オンラインファースト時代の医療」に向けた大きな変化だと考えている。
また、「同一の患者の、同一疾患について、対面診療を行っている医療機関があれば、その他の医療機関が当該患者に対してオンライン診療のみを行うことが認められますか」という質問に対しても、「当該患者の当該疾患に対して、対面診療を実施する医療機関とオンライン診療を実施する医療機関が分かれることも考えられます」と回答されている。オンライン診療のみを別施設で行うことが可能としている点が、とても斬新な変化であると考えている。まさに、対面とオンラインの、ハイブリッドな診療が可能になっ指針となった。
「オンライン診療料」廃止算定可能な管理料は拡充
では、いよいよ22年度診療報酬改定の話に移ろう。今次改定の一番大きな変化は、「オンライン診療料」が廃止となった点だ。
18年度改定に鳴り物入りで新設された同項目だが、その算定要件は厳しく、たとえば、算定可能な疾患が限定されていたり、オンライン診療の開始前や、開始後の3カ月に1回対面診療を必要としたり、さらには同項目の算定回数を全診療回数の1割以下にしなければならないなど、オンライン診療の実態に合わない使いづらいものだった。
今次改定では、同項目を廃する代わりに、「初診料(情報通信機器を用いた場合)」「再診料(情報通信機器を用いた場合)」となった。オンライン診療を行う場合の「診療計画」と、厚生局への施設基準にかかわる届出は必要だが、それ以外は特に条件なく使えるようになったのだ。
そして何より、算定点数が増点されている。本稿執筆中の22年2月上旬時点では、もちろんまだ中医協の答申であって確定ではないが、「初診料(情報通信機器を用いた場合)」は251点と、対面診療の初診料(288点)の約87%となっている。
また、算定可能な医学管理料が2倍以上となった。従来のオンライン診療で管理料として算定可能なもののうち、検査料等が包括されている「地域包括診療料」「認知症地域包括診療料」「生活習慣病管理料」は算定できなくなったが、「ウイルス疾患指導料」「皮膚科特定疾患指導管理料」「小児悪性腫瘍患者指導管理料」「がん性疼痛緩和指導管理料」――など、14種類が新しく算定できるようになった(表)。
これらの点数に関しても、初診料と同様に対面診療時の点数の約87%で定められている。なお、「再診料(情報通信機器を用いた場合)」については、現行は対面診療時と同様の73点となっている。
「オンラインファースト」へ最も前進する診療報酬改定に
このように、オンライン診療に関しては、指針および診療報酬のいずれも大きな前進がみられた。本連載では、「オンライン診療料」が創設された18年度改定、そしてその次の20年度改定もこれまで取り上げてきたため、今回で3度目の診療報酬改定の解説となったが、この3回のなかでは一番大きな改定となったと感じている。いよいよ、「オンラインファースト」の医療に向かって時代が変わってきている。
頭の体操として、「2030年に外来通院がなくなる」という話を講演でしたりもするが、本当にそんな時代になるのかもしれないと考えている、今日この頃である。(『CLINIC ばんぶう』2022年3月号)
(京都府立医科大学眼科学教室/東京医科歯科大臨床准教授/デジタルハリウッド大学大学院客員教授/千葉大学客員准教授)
かとう・ひろあき●2007年浜松医科大学卒業。眼科専門医として眼科診療に従事し、16年、厚生労働省入省。退官後は、デジタルハリウッド大学大学院客員教授を務めつつ、AI医療機器開発のアイリス株式会社取締役副社長CSOや企業の顧問、厚労省医療ベンチャー支援アドバイザー、千葉大学客員准教授、東京医科歯科大臨床准教授などを務める。著書は『医療4.0』(日経BP社)など40冊以上