デジタルヘルスの今と可能性
第51回
診療所を選ぶ際の判断基準に
「診療前相談」がかかわる?

「デジタルヘルス」の動向を考えずに今後の地域医療は見通せない。本企画ではデジタルヘルスの今と今後の可能性を考える。今回は、2022年度診療報酬改定をはじめ、22年以降に予想されるオンライン診療界隈の変化について予想していく。

「かかりつけの医師」は「かかりつけ医」ではない

2022年、新年あけましておめでとうございます。
本稿を書いているのはまだ21年12月上旬ではあるが、今回は22年に予想されている医療業界の変化や自分が考えていることをお伝えしていこうと思っている。

まず、4月に診療報酬改定がある。デジタルヘルス領域では、オンライン診療の動向が一番注目されている。11月29日に開催された第19回の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」で、指針に対する今回の改訂案が提出されている。
前回にあたる19年の指針改訂はそのまま20年度診療報酬改定に影響したため、保険診療においても、とても注目されている改訂案である。

大きな注目点としては主に2つだ。まず1つ目は、初診からのオンライン診療に関して。前回も触れたが、初診からのオンライン診療は、原則として「かかりつけの医師」が行うが、それ以外の医師でも必要な情報が把握でき、「かかりつけの医師」が可能とした場合には実施が可能となっている。
ここで書かれている「かかりつけの医師」とは、従来からの「かかりつけ医」とは別の概念であることに留意したい。厚生労働省によると、「かかりつけの医師」とは、「日頃より直接の対面診療を重ねている等、患者と直接的な関係が既に存在する医師」を指すという。わかりやすく言えば、内科などの全身疾患を診察してくれる医師だけではなく、眼科でも皮膚科でも整形外科でも、普段その診療科で通院し診察をしてくれている医師ということだ。
そして、「かかりつけの医師」以外でも、診療録や診療情報提供書、健康診断の結果などから必要な情報の把握ができ医師がオンライン診療可能と考えた場合には初診からオンライン診療が実施できるということなのだ。

では、「かかりつけの医師」でないかつ、情報もまったくない場合はどうなるかというと、これが2つ目の大きな変化である。
情報がまったくない、あるいは情報はあるがそれだけではオンライン診療が可能か判断できないといった場合、医師と患者がリアルタイムでやり取りする「診療前相談」を行って、患者の情報を把握してからオンライン診療の実施を判断するというプロセスが生まれたのだ。
これらの変化が何を意味しているのかといえば、単なる「オンライン診療に関連した診療報酬」の話題に限らない、おそらく「患者の医療へのかかり方の変化」につながると考えている。

診療前相談で患者がかかりつけを選ぶ時代に?

新型コロナウイルス感染症の流行が少し落ち着いている現在、一般社会でもリアルでのイベントな対面の機会が戻ってきているように、コロナ禍前へと多少回帰しているが、完全に戻ることはないとされている。

1つの行動パターンとして、「オンラインで済ませることのできることはオンラインで済ませる。対面でなければならないときはリアルで移動する」という、オンライファーストの行動パターンに変化してきている。これは医療にもあてはまっていくし、22年度診療報酬改定におけるオンライン診療は、この流れに思い切り乗っかっている大改革の改定だと私は思っている。
今までは、患者は自分の身体の状態に不安や心配があり、医師と直接話をしたいときに診療所を受診し、待合室で順番を待ったのち診察室で医師と話をする方法が主だった。病気と診断されるような場面ではなく、健康診断の値が悪い、または健康関連の話題をテレビで見て心配になったなど、そうした場面で多くの患者が受診を検討するだろう。
これからは、このような不安や心配を抱えたときには、おそらく最初に「オンラインでの相談」が一般的になると個人的には考えている。そして、普段通院している「かかりつけの医師」がオンラインの相談を受け付けていないと、別の診療所の医師に対し「診療前相談」を頼み、その医師が自分に合っていれば「かかりつけ」をそちらに変更するだろう。
今まで、患者は自分に合う医師を直接受診するか、口コミでしか見つけられなかったが、「診療前相談」を活用して見つけていく機会が増えていくと思われる。これは、今まで弁護士や税理士を選ぶ際にも一般的に行われていたことだ。

従来の診療所の選択基準は「場所」が上位にあった。もちろん、これからも重要な基準の一つであり続けるだろうが、オンライン診療に移行した診療所が今後、「診療前相談」という枠組みを提示していくことで、どのような医師であるかという「人」の部分が影響す改定となるのではないだろうか。(『CLINIC ばんぶう』2021年12月号)

図 診療前相談についての見直しのポイント

(出典:第19回「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」)

加藤浩晃
(京都府立医科大学眼科学教室/東京医科歯科大臨床准教授/デジタルハリウッド大学大学院客員教授/千葉大学客員准教授)
かとう・ひろあき●2007年浜松医科大学卒業。眼科専門医として眼科診療に従事し、16年、厚生労働省入省。退官後は、デジタルハリウッド大学大学院客員教授を務めつつ、AI医療機器開発のアイリス株式会社取締役副社長CSOや企業の顧問、厚労省医療ベンチャー支援アドバイザー、千葉大学客員准教授、東京医科歯科大臨床准教授などを務める。著書は『医療4.0』(日経BP社)など40冊以上

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