院長婦人はコンサルタント
第71回
「ヒト」のめぐり合わせは
期待しすぎず余裕をもって

前回も触れた、オンライン資格確認。10月20日から運用が始まったが、サマンサはほったらかし。運用にあたって助成金が出るが、サーバー管理等のランニングコストが結構かかると判明。
先日、業者さんから見積もりを取り寄せて説明を聞いてみたが、正直、イマイチお尻に火がつかない。確かに、保険証資格確認がオンラインでできるし、薬剤情報や特定検診情報を確認できるメリットはあるけれど……。ざっくばらんに聞いてみたが、同じく様子見診療所も多いとか。近隣診療所先行運用してもらい、患者さんから「ここではやってないの?」と言われるまで、様子を見ようと内心思っている(思い切り時代に逆行したガラパゴス化である)。

一方、物事によっては様子見できないこともある。サマンサのミセスコンテスト日本大会も控えてバタバタしていた11月某日、受付パートスタッフに不幸があり、急きょ忌引休みに。
実はこの少し前、ずっと探していた午後の受付事務パートさんがついに見つかり、研修予定を組んだばかり。レセ&新人研修&スタッフの忌引休暇という禍福が一気に到来した。こればかりはどうすることもできないが、少々予定が狂ってしまった感は否めない。

事務パートの求人は、近々、ある医事課正職員の結婚とその後のおめでたを見据えて、何としても人員を厚くすべく前からあれこれ手を尽くしていた。人事はまさしく「縁」であり、サマンサとて今までも散々苦労してきた。育休・産休やご主人の転勤にともなう転居、なかには、結婚を機に辞めてしまったスタッフもいた。そのたびに四苦八苦してハローワークや専門学校、人材紹介に問い合わせ、それでもうまくいかず、眠れぬ夜を過ごしたこともあった。
今回は余裕をもった対応とはいえ、なかなか良い人材とめぐり合わず、人材紹介で何人かとマッチングしたが、結局流れてしまった。以前は経験と年齢を気にしていたが、今回は、経験不問、かつ医療事務資格を持っていない人には資格取得補助もする方向で募集した。実は、今夏にも資格はないが経験ありの人とマッチングしたが、実働させてみたら保険証の確認すらできなかった。教えればいいのだが、それ以外にも就業前研修の時点で言葉遣いや服装に難が見られた。愛想が良いのはありがたいが、多分、彼女が入ることで他のメンバーと軋轢が生じることが目に見えていたので結局、お断り。

なかなか現れない午後パート、やはりお断りしなければよかったか……。なんてあれこれ悔やんでいたが、今回の降って湧いたような人財登場で気持ちも一気に急上昇。すでにOJTに入り、おまけに、よくなじんでいる(このまま続いてほしい限り!!)。

今回実感したのは、人材募集のポイントは“あまり期待しないこと”が重要だということ。私があれこれ応募者に注文していたのって、実は、愚かなこと。「ここに応募してくれてありがとう~」くらいの大らかな気持ちがないと、より一層加速する人材不足には対応できない。デジタルの時代とはいえ、人間関係の難しさは不変。経営者が避けて通れない“ヒト”の問題に、ため息をつくサマンサであった。(『CLINICばんぶう』2021年12月号)

サマンサ●中学校の教師だったが、夫の開業をきっかけに診療所の事務長に就任。日本医業経営コンサルタントと医療経営士3級の資格を持ち、新潟県内の眼科専門診療所で院長夫人兼事務長として経営の舵取りをしている。

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