DATAで読み解く今後の方向性 地域医療・介護向上委員会【特別編】
新型コロナウイルス感染拡大の
外来への影響をデータから読み解く

新型コロナウイルス感染症の拡大は、医療機関の経営にさまざまな影響を与えている。外来の売上・患者数は、2020年5月の緊急事態宣言発令後の落ち込みと比較すると、回復傾向にあるという指摘がある一方、地域や診療科によって回復の状況は異なるという指摘もある。執筆時点(10月初旬)では、緊急事態宣言が解除されて、人々が落ち着いた生活を取り戻そうとしている。

本稿では、19年、20年、21年の5月のデータを比較することで、新型コロナウイルス感染拡大の外来診療への影響をデータから読み解いていく。

外来売上はコロナ前に回復

社会保険診療報酬支払基金が公表した月次報告のデータを用いて、コロナ前の19年5月と、緊急事態宣言下の20年および21年の5月を比較した。図1は売上、図2は患者数について、19年を100%として、都道府県の増減を示したものである。

全国レベルでは、売上は20年に83%と減少したのに対して、21年は103%と、19年の新型コロナウイルス感染拡大前を上回る水準まで回復している。一方患者数は、20年に74%と減少したのに対して、21年は95%と1年をやや下回っている。
患者数の回復よりも、売上の回復が大きいということは、単価が上がったということだ。その背景に、コロナ関連の加算がついたことが影響していると考えられる。21年5月は緊急事態宣言が発令されていたが、前年に起こったような「受診抑制」は起こっておらず、コロナ疑いの患者が増加したことも影響して、外来の売上が回復したと考えられる。

ところで、図1、図2のデータは病院と診療所を合計したものであり、診療所だけのデータではない点に注意が必要だ。また、今回取り上げた「社会保険診療報酬支払基金」のデータは、後期高齢者が含まれていないなど、データに限界がある。

都道府県別でも売上は回復

都道府県別にみると、図1の売上は、21年には、秋田、新潟、富山、石川、福井、和歌山、愛媛の7県で100%を下回っていたものの、それ以外の都道府県では100%を上回った。他方、図2の患者数は、滋賀、奈良、高知、宮崎の4県で100%を上回った。
このように、都道府県レベルで見ても、外来の売上はコロナ前並みに回復している地域がほとんどであることがわかる。

小児は好調、耳鼻科は回復遅れ

図3は売上、図4は患者数について、19年を100%として、病院、診療所の比較、診療科別の増減を示したものである。

病院と診療所で大きな差異はみられないが、21年を見ると、売上は病院が101%に対して診療所が102%、患者数は病院が91%に対して診療所が94%とやや診療所が上回っている。診療所の回復幅のほうが病院よりも大きいということだ。

診療科別では、20年に売上および患者数が40%以上も激減した小児科と耳鼻咽喉科でやや明暗が分かれた。21年を見ると、売上は小児科が110%に対し耳鼻咽喉科は85%、患者数は小児科87%で耳鼻咽喉科が77%と、小児科が、特に売上において他科と比較しても好調な一方、耳鼻咽喉科は回復が伸び悩んでいる。小児科診療に対する加算の算定や、新型コロナウイルス感染が小児にも広がってきたことなどが背景にあると考えられる。

ウィズコロナの新トレンド

20年5月の大幅な受診抑制は、外出自粛要請を受けて、▽不要不急の受診控え、▽セルフメディケーションが進行、▽感染予防の徹底による急性疾患の減少――などのさまざまな複合的な要因によって起こったと考えられた。しかしこれは一時的なものだったようにみえる。日本では、オンライン診療が劇的に増えたという事実もないことから、コロナ前の受診行動に戻っている可能性が高い。

今般の新型コロナウイルスの感染拡大による医療経営への影響は、医療機関の経営者が医療機関経営の今後の方向性について改めて考えるきっかけとなったのではないだろうか。
今回取り上げたように、受診抑制フェーズから回復したとしても、大きなトレンドとしては、人口動態への変化や診療チャネルの多様化による外来患者数の減少傾向は止められない。オンライン診療も恒久化が決まり、徐々に普及していく。漫然と現状の経営を続けていては、患者に提供する価値は陳腐化し、淘汰されてしまう。

ワクチンの普及や治療薬の開発によって、診療現場はだんだんと落ち着きを取り戻していくだろう。ウィズコロナ時代の外来診療に着手するタイミングだと心得たい。(『CLINIC ばんぶう』2021年11月号)

石川雅俊
筑波大学医学医療系客員准教授
いしかわ・まさとし●2005年、筑波大学医学専門学群、初期臨床研修を経て08年、KPMGヘルスケアジャパンに参画。12年、同社マネージャー。14年4月より国際医療福祉大学准教授、16年4月から18年3月まで厚生労働省勤務

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