DATAで読み解く今後の方向性 地域医療・介護向上委員会【特別編】
外来診療の地域差

今回も、「第5回オープンデータ」から外来診療や特定健診の実態を読み解く。

今回は外来処方を取り上げ、簡易的な方法ではあるものの、外来診療の質と地域差に迫っていく。「第5回オープンデータ」は2020年12月に公表され、厚生労働省のホームページから誰でも閲覧できる。関心があればご覧いただきたい。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬

向精神薬の漫然とした長期処方は、依存性を含む副作用の観点で以前から問題が指摘され、16年度診療報酬改定では、ベンゾジアゼピン系薬剤の長期処方に対する減算が設定された。ベンゾジアゼピン系薬剤のなかで最も売上の多いエチゾラム(デパス)の処方状況には、どのような地域差があるだろうか。

図1は、都道府県ごとの人口1人当たりのエチゾラムの錠数およびデパスの割合を示したものだ。全国平均は3.1錠、49%。錠数が最大の長崎県と最小の鳥取県の比は2.5、割合が最大の徳島県と最小の島根県の比は1.7と、相応の地域差があることがわかる。
なお、「第5回オープンデータ」は18年度の1年間のデータであり、外来処方のうち院外処方のみを取り上げている。

非ベンゾジアゼピン系睡眠薬

睡眠薬のなかで最も売上が大きいのはゾルピデム(マイスリー)だ。図2は、都道府県ごとの人口1人当たりのゾルピデムの錠数およびマイスリーの割合である。全国平均は6.4錠、46%だ。錠数が最大の秋田県と最小の福井県の比は2.6、割合が最大の徳島県と最小の沖縄県の比は、2.0であり、エチゾラムと同様に相応の地域差が見て取れる。
また、錠数が最大の秋田県は、エチゾラムも多い傾向にある。高齢化率の高さも影響しているだろうが、それだけではないだろう。割合は、デパス・マイスリーともに徳島県が最大だ。後発医薬品の採用状況にも違いが表れているのは興味深い。

プロトンポンプ阻害薬

プロトンポンプ阻害薬にはいくつか種類があり、処方量・売上ともに最も多いのは、先発医薬品であるエソメプラゾール(ネキシウム)である。
他方で、後発医薬品の使用推進の観点から、ランソプラゾールやラベプラゾールを推奨する病院も増えている。このような病院のなかには、いわゆる「フォーミュラリー」を作成し、処方方針を明確化しているところも増加している。

図3は、都道府県ごとの人口1人当たりのプロトンポンプ阻害薬の処方件数とネキシウムが占める割合である。全国平均は16.7錠、29%となっており、件数最大の秋田県と最小の沖縄県の比は1.9、割合の最大(秋田県)最小(沖縄県)比は1.6だ。フォーミュラリーの普及によって、ネキシウムの割合は低下していくのかもしれない。

医療用保湿剤の地域差

美容目的の大量処方が問題視され、77年に保険適用の是非をめぐり中医協で議論された「ヒルドイド」をはじめとするヘパリン類似物質。近年は、市販薬としてドラッグストア等で販売されるようになり、処方件数は減っているようだ。

図4は、都道府県ごとの人口1人当たりのヘパリン類似物質処方容量(グラム)とそれに占めるヒルドイドの割合を示している。
全国平均は27.5グラム、53%だった。容量が最大の東京都と最小の福井県の比は3.9、割合が最大の宮崎県と最小の鳥取県の比は1.7と、特に格差が大きかった。図4からも、東京都で処方量が突出しているとわかる。いまだに一部で美容目的の大量処方が行われているのかもしれない。
処方の地域差を見ることで、院長自らの処方方針を振り返ってみることも有用であろう。(『CLINIC ばんぶう』2021年8月号)

石川雅俊
筑波大学医学医療系客員准教授
いしかわ・まさとし●2005年、筑波大学医学専門学群、初期臨床研修を経て08年、KPMGヘルスケアジャパンに参画。12年、同社マネージャー。14年4月より国際医療福祉大学准教授、16年4月から18年3月まで厚生労働省勤務