デジタルヘルスの今と可能性
第43回
かかりつけ医以外も初診解禁?
オンライン診療の最新動向

「デジタルヘルス」の動向を考えずに今後の地域医療は見通せない。本企画では、デジタルヘルスの今と今後の可能性を考える。今回は、6月から進展が明らかになってきたオンライン診療の動向について考えていく。

オンライン診療の初診かかりつけ医以外も解禁?

今回は、6月に入って大きな進展を迎えつつあるオンライン診療の最新動向について話をしていこうと思う。

まず、結論から言うと、初診からのオンライン診療に関しては、“原則”かかりつけ医であるが、患者の情報を得られたり、オンライン診療を行う医師が診療について十分に把握できる場合は、かかりつけ医でなくとも初診からのオンライン診療が行える――ということになりそうだ。

少しマニアックな話になるが、なぜそういった展開になりそうなのか、経緯を説明しておこう。
6月2日、菅義偉内閣総理大臣も出席する「第11回成長戦略会議」が開かれ、そこでは国の1年の方向性を示す「成長戦略実行計画」と、その項目について記載する「成長戦略フォローアップ」の案が示された。

今回の成長戦略実施計画案では、オンライン診療について「安全性と信頼性をベースに、かかりつけ医の場合は初診から原則解禁する」と記載されたのと、成長戦略フォローアップ案では、次のように書かれていた。
「次期診療報酬改定に向けて、オンライン診療の普及状況を調査・検証し、安全性・有効性が確認された疾患については、オンライン診療料の対象に追加することを検討する」
「2021年夏を目途に行われるオンライン診療の時限的措置の実績も踏まえた恒久化に向けた検討結果等に基づき、オンライン診療の実施方法や実施体制等の要件の見直しを含むオンライン診療料の必要な見直し等の検討を行い、オンライン診療の適切な普及・促進を図る」

これらはあくまで「案」であって、最終的なものは6月中に出ると考えられている。
また、6月1日には「規制改革推進会議」の答申も行われており、オンライン診療に関する言及は、次のとおりだ。

a オンライン診療・服薬指導については、新型コロナウイルス感染症が収束するまでの間、現在の時限的措置を着実に実施する。

b 感染収束後において、デジタル時代に合致した制度となるよう、初診の取扱い、対象疾患等恒久化の内容について検討を行い、その骨格を取りまとめたうえで、診療報酬上の取扱いも含めて実施に向けた取組を進める。その際、安全性と信頼性をベースとし、時限的措置において明らかとなった課題や患者の利便性等を踏まえ、恒久化の内容について、具体的なエビデンスに基づき、検討を行う。

行政改革推進担当相も初診解禁について言及

関連して、河野太郎行政改革担当大臣は6月8日、オンライン診療やオンライン服薬指導の今後の恒久化に対する具体的な考え方と取り組み内容を述べている。ここでも、初診のオンライン診療について、必ずしもかかりつけ医でなければならないわけではない意向が話された。

具体的には、初診からのオンライン診療は“原則として”はかかりつけ医でないといけないが、それ以外の医師であっても、事前に診療録や診療情報提供書、地域医療ネットワーク、健康診断結果などの情報があり、医師が患者の状態を把握できれば、初診からも可能とするということだ。
さらに、かかりつけ医がいない、いるがその医師がオンライン診療を行っていない、あるいは情報提供もないといった患者でも、オンライン診療を行う医師が患者の病歴や基礎疾患などの把握を十分にでき、患者も合意すれば、実施してもよいという。おそらくこれらは、「今秋を目途」とされていたオンライン診療の指針の改訂で明記されるはずで、今後のオンライ診療の適切な実施に関する見直し検討会の資料として公開されるだろうと見ている。

また、こうした方向性は22年度診療報酬改定にも盛り込まれるはずだ。留意するとすれば、その際に“変な条件”がついたりしないかだろうか。今後の規制改革実施計画などの公表などを経て、オンライン診療の初診解禁はおそらく、来年4月ごろには「当たり前」となることが考えられる。
簡単に言うと、「かかりつけ医以外の医療機関でも初診でオンライン診療を受けてもよい」ということになった場合、都会だけでなく地方であっても、オンライン診療実施の有無で患者の移動が起こる可能性も否定できなくなる。

来年3月には明らかになっているだろう次回診療報酬改定を待たずに、今夏~今秋にかけて引き続き議論されていくオンライン診療の枠組みや関連する診療報酬上の評価の動向については、特に開業医の皆様には注意を払っていただければと思う。(『CLINIC ばんぶう』2021年7月号)

加藤浩晃
(京都府立医科大学眼科学教室/東京医科歯科大臨床准教授/デジタルハリウッド大学大学院客員教授/千葉大学客員准教授)
かとう・ひろあき●2007年浜松医科大学卒業。眼科専門医として眼科診療に従事し、16年、厚生労働省入省。退官後は、デジタルハリウッド大学大学院客員教授を務めつつ、AI医療機器開発のアイリス株式会社取締役副社長CSOや企業の顧問、厚労省医療ベンチャー支援アドバイザー、千葉大学客員准教授、東京医科歯科大臨床准教授などを務める。著書は『医療4.0』(日経BP社)など40冊以上

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