DATAで読み解く今後の方向性 地域医療・介護向上委員会【特別編】
在宅医療の地域差を考える
居宅・施設ともに参入の余地あり
在宅時医学総合管理料
引き続き「第5回オープンデータ」をもとに外来診療や特定健診の実態をデータから読み解く。今回は在宅医療だ。
在宅時医学総合管理料(在総管)は、24時間365日、在宅医療を提供する体制を整備している在宅療養支援診療所が、計画的な医学管理のもとに定期的な訪問診療を行っている場合に算定できる。2012年からは、診療体制の充実や往診・看取りの実績のある機能強化型在支診が増加している。訪問先は居宅で、施設入居者ではない(施設入居者に対しては、後述する施設入居時等医学総合管理料〔施設総管〕が算定できる)。当該管理料の算定には、どんな地域差があるか。
図1は、都道府県ごとの人口1000人当たりの在総管の件数と、それに占める機能強化型在支診の割合を示したものだ。全国平均は23.2および56%となっており、最大(東京都)最小(沖縄県)の比は5.4、割合の最大(東京都)最小(新潟県)の比は4.7と格差が大きかった。
東京都などの都市部は医師が集まりやすく、居宅の在宅医療が充実しているということだろう。もっとも、首都圏でも、千葉県や埼玉県の在医総管は、全国平均を下回る。これら地域の在宅医療の伸び代は大きいと言える。
施設入居時等医学総合管理料
図2は、人口1000人当たりの施設管の件数と、それに占める機能強化型在支診の割合を示したものだ。全国平均は37.0件および58%、件数の最大(大分県)と最小(福井県)の比は7.0、割合の最大(神奈川県)と最小(新潟県)の比は6.0と在総管よりも格差が大きかった。
件数の多かった大分県は、在総管は平均を大きく下回り、居宅在宅が少ない分を施設在宅で補っているとの推測もできる。福井県、沖縄県、秋田県のように、居宅と施設の両方で少ない地域もある。
病床の供給状況等も考慮に入れる必要があるが、施設在宅も充実させる余地のある地域は多い。
往診料
往診料は、患者やその家族などが往診を求め、医師が往診の必要性を認めた場合、可及的速やかに患家に赴き診療を行った場合に算定できる。休日や深夜に往診を行った場合、加算が算定できる。
図3は、人口1000人当たりの往診料の算定件数と、それに占める深夜往診の割合を示したものだ。全国平均は19.3件および28%、件数の最大(島根県)と最小(大分県)の比は4.8、割合の最大(福島県)と最小(新潟県)の比は12.3と、特に深夜往診の割合で格差が大きかった。
往診件数が多いことは、きめ細かな対応ができているという見方ができる一方で、定期往診による管理が不十分な可能性もある。深夜往診については、福島県の割合は異常値の可能性があるが、日中のうちに対策をとることで深夜往診を減らす視点もある。
看取り加算
看取り加算は、往診または訪問診療を行い在宅で患者を看取った場合に算定できる。
図4は、人口1000人当たりの看取り加算算定件数を示したものだ。全国平均は0.8件で、地域差は、件数の最大(神奈川県)と最小(高知県)の比は3.3。
在宅医療が充実している地域で看取り加算の算定も多いことが改めて確認された。
このように、都道府県の比較を行うことで、地域差の背景やさまざまな取り組みの状況について考察することが可能になる。(『CLINIC ばんぶう』2021年7月号)
筑波大学医学医療系客員准教授
いしかわ・まさとし●2005年、筑波大学医学専門学群、初期臨床研修を経て08年、KPMGヘルスケアジャパンに参画。12年、同社マネージャー。14年4月より国際医療福祉大学准教授、16年4月から18年3月まで厚生労働省勤務