DATAで読み解く今後の方向性 地域医療・介護向上委員会【特別編】
外来診療の地域差を読み解く
–栄養・リハビリ・禁煙等編–

外来栄養食事指導料

今回も「第5回オープンデータ」から外来診療や特定健診の実態を読み解く。今回は、▽外来の栄養指導、▽リハビリ、▽ニコチン依存症管理料、▽小児抗菌薬適正使用支援加算の算定状況を取り上げ、外来診療の質とその地域差に迫る。

外来栄養食事指導料は、外来患者に、医師の指示に基づき、管理栄養士が具体的な指導を行った場合に算定できる。生活習慣病患者の重症化予防において、栄養指導は主要な打ち手の一つだが、診療所では管理栄養士を雇う余裕はなく、あまり普及していない。

図1は都道府県ごとの人口1000人当たりの外来栄養食事指導料の件数を示したものだ。全国平均は23.6件。地域差に明確な傾向はないが、最大(島根県)と最小(秋田県)の比は3.9と格差が大きかった。20年度改定で、他の医療機関や栄養ケア・ステーションの栄養士でも算定が可能になった。今後、連携の充実により、地域差の縮小が期待される。

外来リハビリテーション診療料

外来リハビリテーション診療料は、外来患者に対して、リハビリの実施に関し必要な診療を行った場合に算定できる。診療料1はリハビリを週2日以上提供している患者に対して7日間に1回、診療料2は疾患別リハビリを2週間に2日以上提供している患者に対して14日間に1回算定できる。

図2は、都道府県毎の人口1000人当たり外来リハビリテーション診療料の件数及び全体に占める診療料の割合を示したものだ。全国平均は、件数が11.6件、割合が28%と、診療料1のほうが少ない。件数の最大(佐賀県)と最小(岩手県)の比は50.7で、地域差はかなり大きい。診療料1の割合は、西高東低の傾向が見られる。急性期や回復期もそうだが、人材の供給の地域差もあり、リハビリの西高東低の傾向は強い。

ニコチン依存症管理料の地域差

ニコチン依存症管理料は、禁煙外来を行った場合に算定できる管理料である。禁煙外来は通常5回。

図3は、都道府県ごとの人口1000人当たりのニコチン依存症管理料の算定件数と当該件数における5回目(禁煙外来の最終回)の件数を初回の件数で除した割合を示したものだ。当該割合は、禁煙外来の修了割合といってもよい。
全国平均は、38件、割合30%。やや西高東低の傾向がみられ、最大(沖縄県)と最小(岩手県)の比は1.8と今回取り上げた項目では格差は最小。30%というのは低いと感じる読者は多いだろう。もちろん、5回目の受診を必要としなかった(禁煙が続き、受診をする必要がないと判断した)人も一定数いるだろうが、禁煙がうまくいかない人も相当数いるということだろう。

20年12月より、CureApp社が開発した禁煙治療用アプリの公的医療保険適用がスタートしている。禁煙を希望する人がさまざまなサポートを受けることで、禁煙の成功率の改善が期待される。

小児抗菌薬適正使用支援加算

小児抗菌薬適正使用支援加算は、急性上気道感染症や急性下痢症により受診した初診の小児であって、診察の結果、抗菌薬投与の必要性が認められず抗菌薬を使用しないものに、必要な指導を行った場合に算定できる。

図4は、都道府県毎の人口1000人当たり小児抗菌薬適正使用支援加算の算定件数を示したものである。全国平均は、23.7件となっている。最大(群馬県)と最小(沖縄県)の比は12.8と格差が大きかった。処方の傾向に地域差があることを示している。

20年度改定では、対象となる患者を3歳未満から6歳未満に拡大し、月に1回に限り算定できるようにしている。抗菌薬の不適切な処方が減少したことを示すことができれば、診療報酬の誘導による一つの成功例といえるだろう。(『CLINIC ばんぶう』2021年6月号)

石川雅俊
筑波大学医学医療系客員准教授
いしかわ・まさとし●2005年、筑波大学医学専門学群、初期臨床研修を経て08年、KPMGヘルスケアジャパンに参画。12年、同社マネージャー。14年4月より国際医療福祉大学准教授、16年4月から18年3月まで厚生労働省勤務

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