デジタルヘルスの今と可能性
第43回
セルフメディケーションを
推進する専門室が新設

「デジタルヘルス」の動向を考えずに今後の地域医療は見通せない。本企画ではデジタルヘルスの今と今後の可能性を考える。今月は、4~5月で動きのあった「セルフメディケーション」と「医療法の改正」を取り上げる。

厚労省内で部局横断的にセルフケアを推進

今回は、4~5月にかけて動きがあった、「セルフメディケーション」と「医療法の改正」の2つについてお話していく。

まず、「セルフメディケーション」について、今さら読者の皆様に言うまでもないが、WHO(世界保健機関)では、「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てをすること」と定義されている。日本では2017年1月1日から、適切な健康管理下で医療用医薬品からOTC医薬品への代替を進める観点で、健康維持・疾患予防推進への取り組みとして、「セルフメディケーション(自主服薬)推進のためのOTC薬控除(医療費控除の特例)」も創設されている。

このように、今までは「税金の優遇」というアプローチで推進を進めてきていたわけだが、国ではこれに加えて21年4月1日から、厚生労働省医政局経済課に「セルフケア・セルフメディケーション推進室」を新設している。
これは、厚労省内でのセルフケアやセルフメディケーションの施策を横断的に進める司令塔を担うためのもの。昨年7月の規制改革実施計画の「スイッチOTC化の取り組みをはじめとするセルフメディケーションの促進策を検討するため、厚労省における部局横断的な体制構築を検討する」という記載を発端に、規制改革推進会議から生まれた政策だ。
さらに言うと、厚労省内でも薬機法を所管する「医薬生活衛生局」ではなく「医政局経済課」に設置されたということは、セルフメディケーションを規制するのではなく、全体で推進していくためのものだ。少し余談だが、医政局経済課は厚労省のなかでも企業を応援する立場にある部局である。

具体的に何をしているのかといえば、医薬品、医薬部外品、再生医療等製品、医療機器――などに関して、研究開発ではなく、販売・流通といった「消費の増進」にかかわる部局である。これは、経済産業省の掲げる「産業振興」に近いと思っている。さらに話が脱線するが、経産省にも医療・ヘルスケア領域に携わる「ヘルスケア産業課」があり、ヘルスケア産業(健康保持・増進)や医療機器に関連した産業活動の推進に関する施策を取り扱っている。

閑話休題。セルフケア・セルフメディケーションに関しては現在、「セルフメディケーション推進に関する有識者検討会」で議論が始まっている。特にOTCは生活者や患者自身が自己判断で選んで買っているという現状から、「かかりつけ薬局・薬剤師の助言をもとにOTC医薬品を使ってセルフケア・セルフメディケーションを行う」という流れを、いかにしてうまく行えるようにするかが、今後の焦点となりそうだ。
現状ではまず、OTC医薬品が注目されているが、「零売薬局」の活用なども関連してくる可能性もあり、これらの動向はすべて診療所にもかかわってくると考えて、注目している領域である。

今次医療法の改正の4つのポイント

次に、「医療法の改正」に関しては、本稿執筆時点ではちょうど参議院での審議中だ。この法律の正式名称は「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案」で、大まかに次の4つの改定ポイントがある。

①医師の時間外労働

24年4月の医師の時間外労働上限規制の開始までに段階的に始める取り組みについて規定しており、▽医師労働時間短縮計画書の作成、▽やむを得ず労働時間が長くなる医療機関を都道府県知事が指定できる制度、▽上限時間が長い医療機関での連続勤務時間やインターバルなど健康確保措置――などが検討されている。

②タスクシフト

診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、救急救命士ができる業務を拡大していく内容だ。

③医学生の医業解禁

これはいわゆる、「スチューデント・ドクター」制の導入についてだ。(1)共用試験合格を医師国家試験の受験資格要件にする(25年4月1日施行を目指す)、(2)医学生が共用試験に合格する臨床実習で医業を行える(23年4月1日施行を目指す)――などが明記され、歯科医学生も同様である。

④紹介外来医療機関

外来医療の機能の明確化と連携強化を目的に、22年4月1日施行を目指す外来機能報告制度を創設しようとしている。主に、▽医療機関が都道府県に外来医療の実施状況を報告、▽外来機能報告をふまえて外来機能の明確化・連携に向けて必要な協議を行う――の2つを実施する方針だ。(『CLINIC ばんぶう』2021年6月号)

加藤浩晃
(京都府立医科大学眼科学教室/東京医科歯科大臨床准教授/デジタルハリウッド大学大学院客員教授/千葉大学客員准教授)
かとう・ひろあき●2007年浜松医科大学卒業。眼科専門医として眼科診療に従事し、16年、厚生労働省入省。退官後は、デジタルハリウッド大学大学院客員教授を務めつつ、AI医療機器開発のアイリス株式会社取締役副社長CSOや企業の顧問、厚労省医療ベンチャー支援アドバイザー、千葉大学客員准教授、東京医科歯科大臨床准教授などを務める。著書は『医療4.0』(日経BP社)など40冊以上