DATAで読み解く今後の方向性 地域医療・介護向上委員会【特別編】
20年10月の月次報告から読み解く
COVID-19の外来診療への影響

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大は、医療機関の経営にさまざまな影響を与えている。外来の患者数・売上は、2020年4月の緊急事態宣言発令後の落ち込みと比較すると、回復傾向にあるという指摘がある一方、地域や診療科によって回復の状況は異なるという指摘もある。

今回は、いわゆる第三波前である20年10月までの月次報告のデータを用いて、COVID-19拡大の外来診療への影響をデータから読み解いていく。

診療所の売上は前年度並みに回復

社会保険診療報酬支払基金が公表した統計月報のデータを用いて、緊急事態宣言の下で最も外来売上が落ち込んだ20年5月度と、公開されているデータとしては直近の同年10月度を比較した。10月度の入院外(在宅医療を含むが本稿では外来とみなす)診療報酬は、前年同月比で件数が1.9%の減少、金額が1.8%の増加と、それぞれ26.0%、17.5%の減少であった5月度に比べて完全に持ち直したといえる。
5月度の病院と診療所の外来を前年同月と比較すると、金額ベースでは、病院が14.8%の減少に対して診療所は19.8%の減少と診療所のマイナス幅が大きく、病院よりも診療所のほうが影響を受けていたことがわかる。

これに対して10月度の病院と診療所の外来を前年同月と比較すると、金額ベースでは、病院が0.7%の増加に対して診療所は2.5%の増加と診療所のプラス幅が大きかった。病院よりも診療所のほうが業績の回復幅が大きいことがわかる。
ちなみに、10月度の件数ベースは、病院も診療所も、前年同月比でマイナスとなっており、受診頻度の低下を単価の上昇が補っていると推察される。

1都3県では前年度を上回るほどに回復

都道府県別に5月度と10月度の前年同月比(金額ベース)の比較を図1にとりまとめた。これをみると、10月度の外来の売上は、多くの都道府県で前年同月比が100%を上回っており、最も低い青森県、新潟県、愛媛県でも97~98%と前年度並みに回復していた。緊急事態宣言下で「特定区域」に指定された13都道府県では、埼玉県の106%を筆頭に、相対的に高めの状況にあった。健診の再開に伴う二次検診目的の受診の増加など受診抑制の反動が起こっていると推察される。

外来売上について、診療科別に5月度と10月度の前年同月比の比較を行ったのが図2である。耳鼻咽喉科・小児科は、5月度に40%以上減少して以降、回復が遅れていたが、前年同月比で90%を上回る水準まで回復していることがわかる。

他方で、皮膚科・産婦人科・眼科はいずれも前年同月比が110%を上回っており、好調が継続していることがわかる。この背景には、罹患する患者が増えたというより、テレワーク推進などにより家にいる時間が増えた(出勤しなくてもよい)ことで、今のうちにからだのメンテナンスをしておくというニーズの現れではないかと考えられる。

ところで、図1および図2のデータは病院と診療所を合計したものであり、診療所の前年同月比はもう少し高いと考えられる。また、今回取り上げた「社会保険診療報酬支払基金」データは後期高齢者が含まれていないなど、データに限界がある点には注意が必要だ。

今回の緊急事態宣言で受診抑制は起こるか

前回の緊急事態宣言の際には、外自粛要請を受けて不要不急の受診が控えられたこと、セルフメディケーションが進んだこと、マスクや手洗いなどの感染予防が十分に行われたことで急性疾患になりにくかったことといったさまざまな複合的な影響が考えられたが、受診減少は一時的なものであったようにもみえる。オンライン診療についても、劇的に増えたという話は聞かないことから、住民がコロナ前の受診行動に戻っている可能性もある。

21年1月から一部の地域で緊急事態宣言が再度発令され、飲食店の時短営業が始まるなど、行動制限が行われているが、今のところ、前回の緊急事態宣言のときに比べて、大きな受診抑制は起こっていないように思われる。社会保険診療報酬支払基金データを用いれば、今年の5月頃には検証可能になるだろう。

今般のCOVID-18感染拡大による医療経営への影響は、医療機関の経営者が医療機関経営の今後の方向性について改めて考えるきっかけとなったのではないだろうか。今回取り上げたように、受診抑制フェーズから回復したとしても、大きなトレンドとしては、人口動態への変化や診療チャネルの多様化による外来患者数の減少傾向は止められない。漫然と現状の経営を続けていては、患者に提供する価値は陳腐化し、淘汰されてしまう。

未病への介入、研究開発を含む難病・希少疾患への対応、複雑な状況の人への社会的処方、セルフケアできない人へのゲーミフィケーションなどを利用した行動変容を促す仕掛けといった新しい付加価値の提供について、改めて考えてみてはどうだろうか。(『CLINIC ばんぶう』2021年3月号)

石川雅俊
筑波大学医学医療系客員准教授
いしかわ・まさとし●2005年、筑波大学医学専門学群、初期臨床研修を経て08年、KPMGヘルスケアジャパンに参画。12年、同社マネージャー。14年4月より国際医療福祉大学准教授、16年4月から18年3月まで厚生労働省勤務