デジタルヘルスの今と可能性
第38回
オンライン診療の方向性
決着は21年6月へ持ち越し

「デジタルヘルス」の動向を考えずに今後の地域医療は見通せない。本企画ではデジタルヘルスの今と今後の可能性を考える。

恒久化などの最終決定は21年6月に取りまとめ

本連載も4年目に突入した。これもひとえに読んでくださっている読者の皆様のおかげであり、本当に感謝をしている。今年もよろしくお願いいたします。

さて、今回は前号から持ち越したオンライン診療の今後の動向から話をしていく。少し復習をすると、厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直し検討会」では、2020年11月2日の第11回、11月13日の第12回の会議で、初診を含めたオンライン診療の方向性を20年12月中に示すとしていた。そして、12月21日に開催された第13回の同検討会。そこで最終決定となったのは、以下の方向性だ(図)。

■21年6月を目途にオンライン診療の恒久化に向けた取りまとめ
■21年秋にオンライン診療の適切な実施に関する指針の改定

6月のオンライン診療の恒久化の取りまとめ後、事前トリアージや処方薬の制限などに関して関係学会等での検討結果も踏まえて議論し、秋にそれらを盛り込んだ指針の改定を行うとされている。
現状をまとめると、21年6月までオンライン診療の恒久化の議論は先延ばしになった。つまり、「21年6月までは、現在のどんな疾患でも初診&再診でオンライン診療してもよい」という状況が続くことになるというのである。以前の発言で、新型コロナウイルス感染症にともなう時限措置のあとは、オンライン診療は必ず「ビデオ電話」で行う必要があるとされているが、まだ現状では通常の電話でも可能ということだ。

6月までオンライン診療の恒久化の意思決定を延ばしているのは、「新型コロナが21年6月くらいまでは落ち着かないと思っている」のかと、第13回検討会での発表当時は思った。ただ、21年1月の本稿執筆当時、東京都の1日の新型コロナ新規陽性者数も2000人を超えてきた。Googleによると、2月には1日の新規陽性者が9000人に到達するとも予測されている。そう考えると、オンライン診療の恒久化の意思決定が6月までずれ込んでいるのは妥当なのかもしれない。

厚労省内にとどまらない重要国策となりつつある

また全然違う視点だが、なぜ21年「6月」なのかというのは、少し気になった。新型コロナの流行状況で変更というわけなら、21年「3月以降」などとぼかしてもよかったはずだ。これに対し私の予想としては、規制改革推進会議の方針のためではないかと考えている。20年10月に刷新された現在の規制改革推進会議は、「21年6月に答申を発表」することになっているからである。
「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直し検討会」の第13回が行われた12月21日には同会議の会合も開催されており、「オンライン診療・服薬指導の恒久化」について、次のような旨が書かれていた。

「オンライン診療・服薬指導については、(中略)感染収束後において、デジタル時代に合致した制度となるよう、初診の取扱い、対象疾患等、診療報酬上の取扱い等も含めた恒久化の内容について検討を行い、令和3年夏を目途にその骨格を取りまとめたうえで、実施に向けた取組を進める。その際、安全性と信頼性をベースとし、時限的措置において明らかとなった課題や患者の利便性等を踏まえ、恒久化の内容について、具体的なエビデンスに基づき、検討を行う」

これは15年8月、当時の遠隔診療解禁と同じように、内閣府の「規制改革推進会議」→厚生労働省「オンライン診療の指針見直し検討会」という形で、オンライン診療の政策が進められていると考えられる。また、12月20日の規制改革推進会議(議長・座長会合)には、菅義偉内閣総理大臣も出席しており、こう発言している。

「オンライン診療・オンライン服薬指導については現在の特例的な拡大措置を続け、将来的にも、今できることを引き継ぎできるよう、その基準よりも下げるべきではないということで、実行したいと思います。(中略)オンライン診療・オンライン服薬指導について来年6月までに、(中略)結論を出していただくようにお願いします」

オンライン診療はもう、厚労省医政局医事課で会議を回していた規模に収まらず、重要な国策となっているということである。第11回の検討会で委員が半数くらい入れ替わったのは、この会議の位置づけが大きく変わったことに起因していたのだろう。

一方、オンライン診療の適切な実施に関する指針の改訂に関しても、なぜ21年秋ごろかといえば、22年度診療報酬改定を見据えた時期だからだと考えられる。前回の20年度診療報酬改定でも、19年7月に指針で先にやり方が示された「DtoP with D」が、「遠隔連携診療料」(500点)として算定された。

21年秋に決定したものならば、22年2月ごろに最終決定し4月に開始する22年度診療報酬改定に間に合うだろうし、指針でできるようになった事項が診療報酬上でしっかり点数としても算定できる仕組みになり得る。
いよいよ、これからのオンライン診療の方向性がどのように決まっていくかがわかり。面白くなってきた。2010年はオンライン診療をはじめデジタルヘルスの基盤づくりに充てられて、2年あたりが診療報酬改定など、デジタルヘルスの本番になっていきそうだ。(『CLINIC ばんぶう』2021年2月号)

加藤浩晃
(京都府立医科大学眼科学教室/東京医科歯科大臨床准教授/デジタルハリウッド大学大学院客員教授/千葉大学客員准教授)
かとう・ひろあき●2007年浜松医科大学卒業。眼科専門医として眼科診療に従事し、16年、厚生労働省入省。退官後は、デジタルハリウッド大学大学院客員教授を務めつつ、AI医療機器開発のアイリス株式会社取締役副社長CSOや企業の顧問、厚労省医療ベンチャー支援アドバイザー、千葉大学客員准教授、東京医科歯科大臨床准教授などを務める。著書は『医療4.0』(日経BP社)など40冊以上

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