診療所のWEBマーケティング実践記
第5回
患者さんと診療所経営
両方に役立つ情報発信をするには?

患者の大半がWEBで診療所を検索する時代。WEBマーケティングは、診療所が継続的に取り組むべき重要な戦略の一つだ。本企画では、実際に取り組む診療所のエピソードから、診療所のWEBマーケティングを学ぶ。今回は、診療所におけるコンテンツマーケティングのポイントを紹介する。

コンテンツマーケティングは保険診療に向いていない?

今回は、診療所の情報発信についてお話しします。たとえば、本連載でもたびたび例に挙げる、当院の「こころみ医学」という情報ページは、趣味が高じてつくりましたが、結果的に200万PVを超えるまでに成長し、日本有数の医療系情報コンテンツとなっています。そこには複数の過程があり、私自身”Google神”への「ごますり」が少し上手になりました。
それを踏まえ、WEBマーケティングとしての情報発信=コンテンツマーケティングについて、説明していきましょう。

まず、保険診療中心の診療所では、基本的にコンテンツマーケティングはあまり向いていません。場合によっては不利なことすらあります。たとえば、患者さんが風邪をひいたとき、情報サイトを見たとしても、結局のところ、実際に受診するのは近くの医療機関になりがちだからです。コンテンツマーケティングが向いているのは、遠方からでも患者さんが情報を探して来院するような医療サービスを提供する診療所です。
ただ一方で、そうした患者さんは、受診前の事前期待が高くなってしまい、求められるハードルが上がります。結果、満足できない診療だとクレームや悪い口コミにつながってしまいます。より一層、丁寧で質の高い診療が求められますので、単価の高い医療サービスが好ましいです。
次に、コンテンツマーケティングのメリットとデメリットを表にまとめました。特に、デメリットには重要な点が2つあります。

1つ目は、うまく運用しないと受診行動につながるキーワードのSEO評価が下がる可能性があること。受診を検討する患者さんにとっては「雑音」になってしまうため、不必要なコンテンツと見なされる場合があります。当院のHPもその点を意識し、「こころみ医学」はデザインを変え、受診を検討いただく患者さんとの動線を明確に切り分けました。しかしながら、「元住吉 内科」という「地名×診療科」の一番里要なキーワードで、検索結果2~4位を行き来している状況です。知人の内科診療所は、重厚な疾患コンテンツをばっさり切ってシンプルにした結果、「大都市 内科」で1位に返り咲いたと聞いたので、コンテンツマーケティングのリスクとして大きいと感じます。

2つ目は、サーバー管理の問題です。アクセスが増えると、サーバーダウンするリスクが増します。当院でも2日間サーバーダウンした過去があり、その際はHPがまったく表示されなくなり、明らかに受診患者数減となりました。またレンタルサーバーなどで契約をしていると、知らぬ間にアクセス制限をかけられていることがあります。時間帯によっては504エラー(※1)になってしまい、表示されなくなっていることがあります。

表 コンテンツマーケティングのメリットとデメリット

■メリット
・患者さんの診療圏が広がる(広域から患者さんが来院)
・被リンクが増えてSEO効果が高まる可能性がある

■デメリット
・サーバー管理費が高まる
・HPがサーバーダウンするリスクがある
受審患者さんにとってのSEO評価が下がる可能性もある
・クレーマーあるいは細かい患者が増える
・受付への関係のない問い合わせが増える

有益なコンテンツを提供するHPづくりとは

デメリットも理解したうえで、コンテンツマーケティングを行っていく場合、ゼロから始める方は何から取り組んでいけば良いか、ご紹介していきます。
はじめに、HPの作成です。HP制作会社に依頼する場合、コンテンツマーケティングを意識するのでしたら、「WordPress」でつくってもらいましょう。これはCMSの一つで、専門知識がなくてもコンテンツが作成しやすいシステムです。SEOにも有利と言われています。さらに、多数のプラグインが開発され、便利な機能を後づけできるのも特徴です。ただ、やみくもにインストールすると干渉し合い、素人には修復できなくなりますので、HP会社さんとご相談ください。

また、コンテンツマーケティングでマストのプラグインがあります。「All in One SEO」です。インストールすれば、メタタグやパーマリンクの設定など、SEOに必要なことが簡単に行うことができます。

ドメインも重要です。「WELQ事件」後、医療系コンテンツは医療機関のドメインパワーが非常に強くなりました。最近は徐々に一般サイトも上位表示されるようになってきて、医療機関のドメインも少しずつ力が弱まっていますが、それでも圧倒的に有利です。
そのため、医療機関メーンのHPをつくるほうがSEOは強いですが、広告などを行う際は注意が必要です。HPで広告収入を得るのはもちろんNGですが、リスティング広告をHPにかける場合、薬のことなどを記載すると、薬機法に触れ、審査落ちしてしまう可能性があります。中長期的に見ると、まったく別のオウンドメディアとして、情報サイトを運用するほうが良いかもしれません。

次に、コンテンツ作成ですが、キーワードを意識しながらつくるのが重要です。たとえば、「うつ病」などの大きなキーワードを書いても難しく、「うつ病 症状」「うつ病 治療」なども厳しいです。「うつ病 症状 身体」「うつ病 治療 運動」など、より下位の細かなキーワードをターゲットにしていきます(ロングテールSE0 ※2)。

「1キーワード、1コンテンツ」を原則に、文字数よりもユーザーから見たわかりやすさを重視して書くことをおすすめします。また、現在どんな記事が評価されているか、実際に検索した上位サイトを見て、それを上回る満足度の記事を目指しましょう。

コンテンツマーケティングと言うと堅苦しい印象ですが、せっかく取り組むなら、情報発信を楽しんでいただきたいです。実際に私も、コンテンツ作成を続けていますが、患者さんから感謝の言葉をいただくと非常にうれしく、やりがいを感じます。
ぜひ、インターネットに、善意ある有益な情報があふれるようにしていきましょう。(『CLINIC ばんぶう』2020年11月号)

※1:「504エラー」とはHTTPステータスコード(WEBサーバーからのレスポンス結果を表すコード)の1種で、接続先からの応答がなくタイムアウトした際などに表示されるエラーコードを指す。

※2:「ロングテールSEO」とは、複数の単語がから構成されたキーワードを用いたSEO戦略を指し、競合を避けることで検索上位のハードルを下げ、ターゲットを絞ったアプローチに向いているという。

大澤亮太(元住吉こころみクリニック代表医師)
おおさわ・りょうた●山梨大学医学部卒業。国際医療福祉大学附属病院臨床研修、神奈川県内の精神科病院・診療所で勤務しながら産業医活動を開始。中央省庁や多数の民間企業で嘱託産業医を務め、2017年4月、元住吉こころみクリニックを開院。産業医グループこころみの副代表として、産業医としても活動している。