院長婦人はコンサルタント
第57回
ライブ配信で再認識するコミュニケーションの難しさ

今年の夏は、マスク熱中症との戦いであった。
サマンサは、昼間に銀行や郵便局の外回りに出かける。両方徒歩圏なので、両替やハガキ購入だけの場合は歩いて移動。どう考えても密ではないが、世間の目が怖くてマスク着用(徒歩圏=診療圏内なので、いつ患者さんに見られるかわからないんだもん)。こうした地域圏内は問題なく過ごせるが、他県間の移動が絡めば別間題。いったい、いつまで続くことやら……。

件のGoogle口コミ問題も、院内に「県外への移動かあった方は予約日の変更をお願いします」等の文言を張り、会計時に全患者さんにその旨を伝える&注意事項チラシ配布を徹底。視野検査ですでに半年先まで予約されていた患者さんにはハガキを送り、注意喚起と予約の再確認。
ここまでやってなお、「県外から帰省中の受診を断られた。コロナ差別のヒドイ診療所だ」と、ネガティブな口コミが新たに出たならば、その際は受けて立つぞ!!と開き直れるほどの対策を講じた(つもり)。
おかげさまで、いったん減った患者さんも、地域でのまん延が抑えられているせいもあってか、ちゃんと戻ってきた。

さて仕事とはまったく別件だが、サマンサは夏前からライブ配信に挑戦していた。インスタグラマーなので、以前からいろいろな広告案件オファーもあったが、春先からライバーのお誘いが複数回あったのだ。最初はよくわからなかったため調べると、ライバーとはライブ配信をする人で、トークや歌唱、演奏などの配信で、ユーサーから”投げ銭”という報酬をいただくというもの。
超売れっ子ライバーは月1000万円を稼ぎ出す。噂には聞いていたが、「こんな世界もあるのか?」とビックリ。現在のユーザーは若年層が主体だか、今後は利用年齢も上がると見込み、サマンサのようなおばさんインスタグラマーにもお声がかかったらしい。

というわけで、公式認証ライバーになり配信を開始してみたが、投げ銭どころかまったく誰も寄りつかず……(涙)。すこ~しだけ頑張ってみようと気を取り直し運用してみるも、己の力不足を実感し、早々に放置状態へ。中高年が気軽に利用するには、まだまだ時間がかかりそうだと思った。

なお、ライブ配信自体はすでに一販売分野で連用され、大手通販でも従来の一方向の放送ではなく、利用者との双方向配信が始まっている。また、若いライバーの配信を見て感じたのは、高度なコミュニケーション能力を要すること。実にテンポよく画面の向こうにいる視聴者へ語りかけている。

先日、サマンサがカリキュラム編成委員を務める医療事務専門学校での会議で、今年は学生の病院実習も中止となり、リクルート活動にも支障を来していると報告を受けた。コロナ禍でもしっかりと採用される人材の必要要素は、コミュニケーション能力。IT化が進む一方で、その重要性はますます高まる。既存患者さんの抱え込みの切リ札は、今も昔も、コミュニケーション能力であろう。
もう少し、おばさんライバーとして配信してみようかな……と思案するサマンサであった。(『CLINICばんぶう』2020年10月号)

サマンサ●中学校の教師だったが、夫の開業をきっかけに診療所の事務長に就任。日本医業経営コンサルタントと医療経営士3級の資格を持ち、新潟県内の眼科専門診療所で院長夫人兼事務長として経営の舵取りをしている。

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