DATAで読み解く今後の方向性 地域医療・介護向上委員会【特別編】
2020年6月月次報告を読む
新型コロナに夜外来診療の影響

耳鼻科や小児科は一依然として厳しい状況

新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて外来患者数は減少しており、依然として昨年並みの水準に戻らないという声が後を絶たない。外来売上は実際どの程度回復しているか、最新のデータを交えながら検討する。

社会保険診療報酬支払基金が公表した6月度の月次報告によれば、入院外(在宅医療を含むが本稿では外来とみなす)における診療報酬は、前年同月比が件数ベース14.8%、金額ベース5.5%の減少と、それぞれ26%、17.5%の減少であった5月度に比べてかなり持ち直した。前年同月比での減少幅は今年の3月並みに戻ったという見方もできる。
6月度の病院と診療所の外来を前年同月と比較すると、金額ベースでは、病院1.6%減に対して診療所8.6%減と診療所のマイナス幅が大きかった。病院よりも診療所のほうが影響を受けていることがわかる。依然として、件数ベースは金額より落ち込みの幅が大きく、受診頻度の低下を単価の上昇で補っていると推察される。

外来売上について、診療科別に5月度と6月度の前年同月比の比較を行ったのが図1である。多くの診療科が前年度並みに回復しつつあるのに対して、耳鼻科と小児科は約33%減と、依然として外来売上は低下したままとなっている。

厳しい言い方をすれば、外出の自粛要請を受けて、多くの人が不要不急の受診を控えたこと、結果としてセルフメディケーションが進んだこと、マスクや手洗いなどの感染予防活動が十分に行われたことで急性疾患になりにくかったなどのさまざまな複合的な要因が背景にあるため、今後もこのような状況が続く可能性は高いと考える。
他方で、皮膚科は前年同月比が108.1%と前年を上回っていた。また、美容皮膚科·美容外科も業績好調との話を聞く。皮膚疾患患者が急増したというよりは、家にいる時間が増えたことで、今のうちに美容のメンテナンスをしておこうというニーズの表れではないかと考えられる。

都道府県別に5月度と6月度の前年同月比(金額ベース)の推移を図2にとりまとめた。これをみると、6月度の外来売上は、島根県や宮崎県など7つの県で前年同月比が100%を上回るなど、回復傾向にあることがわかる。しかし、緊急事態宣言下で「特定区域」に指定された13都道府県では、依然として90%台前半のところが多く、相対的に低めの状況にあった。

回復が早いのは地方 都市部は苦戦が続く

ところで、図1および図2のデータは病院と診療所を合計したものであり、診療所の前年同月比はもう少し低いと考えられる。また、今回取り上げた「社会保険診療報酬支払基金」データは後期高齢者が含まれていないなど、データに限界がある点には注意が必要だ。

現状が外来の適正需要 価値を意識した経営が必要

少し前に、日本人の外来受診頻度はOECD平均の約2倍であるという点を取り上げ、今後OECD平均並みの受診頻度となった場合、外来患者数が半減するという指摘を行った。これはネガティブな意味だけではなく、患者が本来あるべき受診行動をとることで、医師を含む医療従事者がより価値を発揮すべきシチュエーションに対して資源をシフトさせる効果があるという見方もできる。

そもそも日本の医師はOECD諸国では比較的少ない。そのためどうしても医師を増やすべきという議論になりがちだが、診療科別にみると必ずしも全診療科において少ないわけではない。たとえば、耳鼻咽喉科の人口当たり医師数は米国の2倍以上だ。新型コロナウイルスの影響で耳鼻咽喉科の外来売上が減少しているといわれるが、現状が適正な需要なのかもしれない。

医療資源をシフトさせるべき領域はどこだろうか。医療機能の集約化の議論を抜きにすれば、研究開発を含む難病・希少疾患への対応、複雑な状況の人への社会的処方、セルフケアができない人に対するゲーミフィケーションなどを利用した行動変容を促す仕掛けといった取り組みではなかろうか。

これらはもちろん医療従事者のカだけでできることではなく、むしろ他業界との連携を通じてコレクティブインパクトをいかに生んでいくかにかかっている。同時に、人頭払いのように、従来の出来払いに代わる新たな支払の試行を通じて、「価値に基づく支払い」への移行を検討すべきタイミングに来ているのではないか。外来減少時代に改めて「量」だけでなく「質」「価値」を意識した経営を考えてみる必要がある。(『CLINIC ばんぶう』2020年10月号)

石川雅俊
筑波大学医学医療系客員准教授
いしかわ・まさとし●2005年、筑波大学医学専門学群、初期臨床研修を経て08年、KPMGヘルスケアジャパンに参画。12年、同社マネージャー。14年4月より国際医療福祉大学准教授、16年4月から18年3月まで厚生労働省勤務