DATAで読み解く今後の方向性 地域医療・介護向上委員会【特別編】
医師調査から見えてくる
開業医のトレンドと今後の方向性

開業志向は低下するも診療所勤務医は倍増

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、外来患者数は減少し、診療所の閉鎖や売却話をぽつぽつ聞くようになった。このような環境下、診療所医師数が近時どんな推移を経ているのかを見ることは、今後の事業展開を考えるうえで役に立つ。

厚生労働省は2年に1回、医師・歯科医師・薬剤師統計を行っている。最近2018年の結果が公開された。図は、全国の医師がどこで従事しているか、病院、診療所(開設者又は勤務医)、その他という区分で、この20年間の医師数をグラフにしたものだ。医師数は24万9000人から32万7000人、診療所医師数は8万2000人から10万4000人と、約27%増加した。
診療所医師数の内訳をみると、開設者は6万6000人から7万2000人と、約8%の増加に留まっている。08年と18年を比較するとわずかながら減少しており、開業志向は低下傾向にあることがうかがえる。ただ、診療所の勤務医は1万6000人から3万2000人と、倍増した。従来、1人開業医が多かったが、近年は医師を確保しやすい都市部を中心に、グループプラクティス化が進んでいることがわかる。

この背景には、外来患者数の緩やかな減少にともなう診療所間の競争の激化で、経営リスクをとりたくない医師の増加、365日24時間体制が求められる在宅医療の普及、時短勤務など、働き方の多様化により、医師1人では診療継続が困難になっていることなどが考えられる。

人口10万人当たり医師数 その地域差は約2倍

表は、診療所医師数の都道府県比較である。人口10万人当たりの医師数は、徳島県、京都府、高知県の順に多く、埼玉県、茨城県、千葉県の順に少なかった。依然として、人口10万人当たりの医師数が最も多い県と少ない県では、約2倍の差異が生じている。
大都市や地方都市では、診療所医師数は増加傾向にあるが、増加率は鈍化し過疎地域では減少が始まっている。診療所医師も、地域偏在が拡大している可能性が高い。

平均年齢は60歳 診療所医師の高齢化が進む

診療所医師の高齢化も課題だ。医師の高齢化率は全国で34%、75歳以上は11となっている。65歳以上の割合は長崎県、徳島県、鳥取県の順に多く、東京都、神奈川県、宮崎県の順に低かった。

背景には、若手医師の開業減少と高齢医師の診療継続という2つの原因がある。特に20歳代から40歳代の開設者は過去20年で半減している影響が大きい。では、どの年代の診療所医師が増加しているかというと、60歳代である。現在60歳代の医師は新設医大開設の影響で医学部定員が増加した世代であり、06年前後に開業ラッシュを迎えたことで、現在の状況が起こっている。このまま若手医師の開業志向の低下が続くと、診療所の減少は避けられない。
診療所経営者はこのような状況を踏まえた展開戦略を、検討していく必要がある。(『CLINIC ばんぶう』2020年9月号)

石川雅俊
筑波大学医学医療系客員准教授
いしかわ・まさとし●2005年、筑波大学医学専門学群、初期臨床研修を経て08年、KPMGヘルスケアジャパンに参画。12年、同社マネージャー。14年4月より国際医療福祉大学准教授、16年4月から18年3月まで厚生労働省勤務