プライム ライフ テクノロジーズ株式会社 が提案する 医療 × 行政 × 企業 のまちづくり
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医療専門職もまちに出て
住民、行政、企業と協働しよう

プライム ライフ テクノロジーズ株式会社(東京都港区、北野亮代表取締役社長)は「地域医療とウエルネスからウェルビーイングなまちづくりへ」をテーマとした座談会も開いた。フレイル予防、看護の立場からの健康づくり、そして在宅医療と、主に医療の観点から、それぞれの実践を踏まえながら「まちづくり」に必要なポイントなどを語り合った。

有識者座談会

医療専門職もまちに出て
住民、行政、企業と協働しよう

●座談会参加者
 飯島勝矢 東京大学高齢社会総合研究機構機構長/未来ビジョン研究センター教授
 福井トシ子 国際医療福祉大学大学院副大学院長/前日本看護協会会長
 山中光茂 医療法人社団しろひげファミリーしろひげ在宅診療所院長/元松阪市長
〈司会〉岡山慶子 株式会社朝日エル会長

予防・保健・在宅医療から
地域の課題を考える

(司会:岡山)まず、医療から見た社会課題と解決に向けた取り組みをご紹介いただけますか。

飯島 私は長年、東京大学附属病院で高齢者医療や老年医学の分野で臨床・研究・教育を進めてきました。さらに現所属に異動後、これらにとどまらず高齢社会全般に視野を広げ、ウェルビーイングを真ん中に置いた地域コミュニティの課題解決型実証研究(アクションリサーチ)をやっております。
その中で医療や介護予防を捉え直し、そこから全国プラットフォーム「フレイル予防を通じた高齢住民主体の健康長寿まちづくり」を推進しています。
現在26都道府県104自治体に導入していただいていますが、フレイル状態を(医療専門職でなく)住民フレイルサポーターと一般住民だけでチェックし、お互いに気づき合い、さらに一緒に高め合っていく住民主体の全国システムという内容です。
養成研修やチェック内容のフィードバックはありますが、基本的に専門職は前面に出ず、裏方(後方支援)に回っているのです。

山中光茂・医療法人社団しろひげファミリーしろひげ在宅診療所院長/元松阪市長

山中光茂・医療法人社団しろひげファミリーしろひげ在宅診療所院長/元松阪市長

福井 日本の保健・医療・福祉提供体制の課題からお話ししますと、疾病発症後の対応が中心となっている点が挙げられます。つまり病気になってから加療が始まるわけで、健康な時からの健康増進、疾病予防への介入は不十分と言わざるを得ません。
ウェルネスの概念は看護分野で欠かせない考え方です。医療と生活の両面から支援を必要とする人を捉えてケアを行う、看護職を活用していくことが必要だと思っています。
私自身の取り組みとしては、故郷である福島県大玉村で役場の若手職員とともに勉強会を行っています。この勉強会では、ウェルビーイングがなぜ必要なのかをあらためて共有しています。
将来世代のためにも持続可能な地域づくりを進めようというフューチャーデザイン思考が不可欠と感じています。

山中 私は6年前に東京都江戸川区で在宅診療所を開業し、現在1500人強の患者さんがいます。
実は、開業2年目で都内で2番目の看取り数の多い診療所になりました。裏を返せば、開業6年足らずの診療所がこれだけの患者さんを抱えたわけですから、在宅医療はまだまだ定着していないと言えるでしょう。
ただ、在宅診療所が本腰を入れると、地域の薬局や介護事業所、訪問看護ステーションもそれに答えて、24時間対応にも乗り出して連携してくれます。医療だけでは絶対に家で最後まで看取る環境はできないし、「まちづくり」もできません。さまざまな職種が生活を支えることが必要です。

予大枠も必要だが
個々の課題解決が重要

―「まちづくり」のポイントについてお考えをお聞かせください。

岡山慶子・株式会社朝日エル会長

(司会)岡山慶子・株式会社朝日エル会長

山中 私の患者さんは大まかにいうと半数が末期がんの患者さんですが、引きこもりの方や独居の方など、本当にいろいろな患者さんがいて、生活は多様な側面があることを実感しています。
「引きこもり対策」「自殺予防」といった大枠での施策が見られます。それも大事ですけれど、やはり目の前にある課題を一つひとつ解決していくことが「まちづくり」につながるのではないでしょうか。

福井 看護師は全国に約170万人います。そのうち医療機関勤務が110万人、訪問看護ステーションで従事している看護師は7万人です。
この数字からも、医療機関にいる看護師が地域に関われる仕組みを政策的に動かしていくことが必要で、さまざまな制約を解除する必要があると思います。

福井トシ子・国際医療福祉大学大学院副大学院長/前日本看護協会会長

福井トシ子・国際医療福祉大学大学院副大学院長/前日本看護協会会長

飯島 私自身の目指している全国システムは、専門職による指導のスタイルではなく、住民同士が共感しながら気づいて行動変容できるスタイルです。
やはり、地域で暮らす一人ひとりが「そうだったのか」「へえ」と思って、自分事として気づき、さらに(単に従来の食事と運動の指導だけではなく)、
①食事と口腔機能からなる栄養
②身体活動(生活活動と運動)
③社会参加
この3つの要素の重要な新エビデンスを得ながら、三位一体として自身の日常生活を底上げしていく、このモデルを構築しようと考え、先ほどご紹介した「フレイル予防を軸とした住民主体活動」に発展させております。
この住民主体活動を通して、一般参加市民の中で、元々社会参加がなかった方々のうち、47%の方が新たに社会参加するように行動変容を起こした、という我々の解析データがあります。

地域に出向き自然につながり
「まちづくり」に関わっていく

―新しい「まちづくり」に向けたヒントをいただけますか。

山中 私は三重県松阪市で市長を務めましたが、その経験も踏まえて言うと、民間事業者と連携できる取り組みを模索している基礎自治体は多くあります。
私は「明るい癒着」と呼んでいるのですが、民間企業や現場のノウハウを取り込んで、資金の融通もしながら公的事業を展開するケースは今後、増えていくのではないでしょうか。

福井 どのような活動が地域住民にとっても敷居が低く活用しやすいのかを考えていくことが必要です。
その意味では、自然発生的に生まれた活動を社会的な仕組みにしていくことが重要でしょう。お寺や郵便局等を活用して保健相談室を開いているケースがあります。このような場創りが欠かせません。
住民が相談に来るのを待つだけではなく、こちらから「行く」形も求められます。

飯島 「フレイル予防」で重視するのは、従来の食事や運動に関する底上げだけではなく、やはり自分に合った継続性のある集いに一歩踏み出し、人とのつながりの中で社会参加すること、そして多様なウェルビーイングの主観的感覚(例:楽しさ、達成感、自分の生きている意義、時間の経つのを忘れるくらい打ち込める、等)の一つでもときめきを持っていただく、さらには、高齢者の方々に地域で輝いていただく場を戦略的につくること。すなわち、フレイル予防はまさに「まちづくり」そのものであり、地域特性を活かしながら産官学民協働で取り組むことが重要だと思います。

飯島勝矢・東京大学高齢社会総合研究機構機構長/未来ビジョン研究センター教授

飯島勝矢・東京大学高齢社会総合研究機構機構長/未来ビジョン研究センター教授

―ありがとうございました。
『最新医療経営PHASE3』2025年1月号)

プライム ライフ テクノロジーズ株式会社

「『くらしとテクノロジーの融合』による未来志向のまちづくり」をめざし、2020年1⽉にパナソニック株式会社(現パナソニック ホールディングス)とトヨタ自動車株式会社が設⽴し、三井物産株式会社を加えた3社が株主となっているホールディングス会社。現在、パナソニック ホームズ株式会社、トヨタホーム株式会社、ミサワホーム株式会社、パナソニック建設エンジニアリング株式会社、株式会社松村組をグループ傘下に置き、各社が持つ住宅やまちづくり、建設技術などを融合し、くらしの新たな価値やサービスを創出している。

本社所在地 東京都港区港南二丁目16番4号
品川グランドセントラルタワー
事業内容 街づくり事業、新築請負事業、リフォーム事業、住宅内装事業、建設コン
サルタント事業、海外事業等

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