栄養経営士になろう
3年連続グランプリのメニューは
食べられない患者さんの声から発案
普段のメニューを“ひとひねり”すると印象が変わるという。患者さんに寄り添ったメニュー開発を伺った。
タレやソースを工夫するだけでも味と見た目は大きく変わる
日本栄養治療学会の「患者さんのための見た目にも美味しい病院食コンテスト」で3年連続グランブリを受賞した武蔵野徳洲会病院。9人いる管理栄養士のリーダーが土屋輝幸さん。栄養経営士のほかに周術期・救急集中治療専門療法士、がん病態栄養専門管理栄養士などの資格も持ち、幅広い活動をしている。
病棟数は全303床。およそ3分の1の嚥下調整食以外は直営で賄っているが、特別食が約6割と、その割合が高いことが特徴だ。高齢化で他疾患併存患者が増えており、電子カルテで糖尿病や腎臓病など特定の疾患があると特別食が選びやすいシステムになっている。
栄養経営士の視点から土屋さんは、「1食76円の特別食加算の経済的効果は大きい」と指摘する。2026年度の診療報酬改定で嚥下調整食も特別食加算の対象となると、その割合は約7割に上る。
3年連続グランプリを受賞したことについては、「普段のメニューに患者さんの声を活かして、味付けや、かけるタレ、ソースをちょっと工夫しただけ」と謙遜するが、常に「おいしい特別食」をモットーとしている。

昨年12月の3回目のグランプリを受賞した油淋鶏をメインとしたメニューは、化学療法で食欲不振に陥ったが、自宅退院を熱望していた、あるがん患者さんの声を活かして考案した。
「一口だけでも食べたいと思える工夫が必要と感じた。普通の鶏のから揚げに、油淋ソースをかけるだけで、見栄えも味も変わります」
この患者さんは、久しぶりに食事を完食したという。この時、土屋さんは「栄養管理は栄養価だけでなく、五感に寄り添う。食のデザインで心を動かすことが大切」と感じた。
ミールラウンドでは、「食べられていない患者さんに、どういった食材、味付けなら食べられそうか」を聞き取る。
食事を外部業者に委託する病院が多い中、直営にこだわる理由は、「基本の“き”である給食の栄養管理ができて、真の管理栄養士になれる」と給食管理を人材育成の基本にすえている(図)。そこには、在庫、コスト、衛生面をコントロールしながら自分でメニューを考える流れをマスターすることが、臨床栄養管理に役立つという考えがあるからだ。
NSTに歯科医参加で思わぬ発見が!
病院内で最も食事に悩むNSTの患者さんに対しては、常に注意を払い、ミールラウンドは管理栄養士だけでなく、歯科医や言語聴覚士も同行して話を聞く機会を増やしている。あるとき「義歯をつけると吐き気がする」という患者さんを歯科医が診て、義歯の長さを調整したら食べられるようになったという。この事例からNSTへ歯科医師が参加することの重要性をあらためて認識したという。この病院では数年前から歯科口腔外科ができ、より多職種連携の対応が可能になった。
子ども食堂は2年で食育、地域連携面で深化
「むさとく子ども食堂」は2023年末からスタートし、毎月1回開催されていて、広がりを見せている。当初は60食だったが、現在は140食。食育の観点から、親子での利用が前提で、昨年からは地元の農家や商店とのコラボを展開している。地元農家の野菜をメインに据えたメニューで、地域に農園があることをアピール。その存在を知って、農作物の無人販売店に買いに行くようになった親子もいるという。
3月27日に開催した子ども食堂では、お茶店との初コラボでメインは「鶏のほうじ茶煮込み」。ちょっと驚くメニューだが、土屋さんは「子どもたちには、お茶は親しみがないかもしれないが、お茶の味を知ってもらういい機会になれば」という。
また、食育と地元とのコラボを兼ねるようになり、「印象に残るメニューを心がけるようになった」という。子どもたちが大人になった時に「子ども食堂で、お母さんとこんなものを食べたなぁ」と思い出してほしいと、メニュー発案の多彩さがここにも発揮されているようだ。
子ども食堂に来る親御さんにスタート時からアンケートを取ってきたことで、食育の観点から見えてきたものがあるという。家庭での課題としては、「偏食(好き嫌い)」と「食べ残し」だが、これを解決するアブローチとしては「みんなで食べること」「一度でもおいしいと感じる体験をすること」だという。これはアンケートで「家では食べられなかった食材を子ども食堂に来たら食べられるようになった」「子ども食堂に来て、完食できるようになった」という声から導き出された結果だ。土屋さんは、このアンケート内容をもとに4月に開催された日本小児科学会学術集会のシンポジウムに登壇した。
患者さんの声をメニューに反映させ、子ども食堂で食育を通じて地域との連携の輪を広げる土屋さんの今後の活動が楽しみだ。(『ヘルスケア・レストラン』2026年5月号)
土屋輝幸さん
武蔵野徳洲会病院
栄養管理室 副室長

