栄養指導で”あるある!こんなこと”
第140回
それぞれに違う塩分摂取の問題点
~合同で行った栄養食事指導の事例~

今回ご紹介する事例は近隣の村へ保健指導の同行で伺った際のお話です。この村での保健指導同行は毎月行っており、本事例は毎年伺っている方たちです。ここ2年ほどはお友達3名が1軒のお宅に集まってくださり、仲よく村の健康診断の結果をもとに保健指導を受けてくださっています。 (Bさん、Cさん、Dさん、すべて女性、70代後半)

予想以上に高値だった食塩推定摂取量

保健指導当日、Bさん、Cさん、Dさんの3名のご婦人がすでに集まっており、村の保健師さんとそちらに訪問しました。訪問前に昨年度の健康診断の結果を確認すると、3名とも食塩推定摂取量(尿中から推定されるもの)が1日当たり11gを超えていました。
そのほか、若干の脂質異常症や糖尿病などがある方もいましたが診療所で治療中となっており、今回はこの塩分の摂取量についてお話をしようと考えて伺いました。

田村:ご無沙汰してます。管理栄養士の田村です

BCD:どうぞ〜、お待ちしていました!

Bさん:今回はどうでしたか? 私、田村さんに話を聞いてから納豆のタレは半分にしてるし、間食もあまりしなくなったよ

田村:素晴らしいですね! Bさんは血糖も落ち着いているしいいですよ。でも、なぜか塩分が昨年より増えてまして……1日の推定量が11gを超えちゃいました。昨年は一昨年より少し下がってたんですけどねぇ

Bさん:あらら、頑張ってるつもりだったんだけどねぇ

Cさん:私はどうかね?

田村:Cさんも今回は塩分が11gを超えてます。ほかはすべてOKですね。BMI も23.3㎏/㎡でちょうどいいですよ

Dさん:私も高いでしょう? 自分では塩辛くしないでつくるけど、漬物を食べてるからねぇ

田村:そうなんですね。今回は皆さんちょうど同じくらいの塩分推定摂取量でした

Dさん:塩分って1日どのくらいだといいんだい?

田村:実は男性で1日7.5g、女性で1日6.5gと言われています

Dさん:あらら、倍もとってるってこと? どうやって下げたらいいんだい?

田村:もう日本人皆が気を付けましょうって言われていて、そのなかでも福島県民はワースト2位とか、全国平均でもとり過ぎてる県民なんです。なので、急には無理でも少しずつ減らす努力をしないといけないですね

Bさん:納豆だってタレを半分にしたり、ずいぶん頑張っているけどね〜

田村:でもその努力は大事ですよ。それをしてなかったら、もっと多い可能性があります。
で、今日はどこに問題があるか、ちょうど皆さん同じくらいの摂取量なので、同じ質問をさせていただきたいと思います。私の質問に答えてください

BCD:はい!

質問票から見えてきたそれぞれの食習慣と原因

表1があらかじめ考えておいた質問内容です。この質問を全員に答えていただきました。

表1 質問票

①みそ汁は1日何回食べるか
②漬物や梅干しを食べる頻度は
③ ちくわなどの練り製品、ハムなどの加工品はどのくらいの頻度で食べるか
④ しょうゆなどをかけるか? その頻度は
⑤ うどんなどの麺類はどのくらいの頻度で食べるか
⑥ 麺類の汁は飲むか
⑦ 外食やお惣菜の利用はどのくらいの頻度か
⑧ 食事量は多い・普通・少ない、どれか

田村:皆さん、塩分摂取量はだいたい同じくらいですが、原因にはそれぞれ違いがあることがわかりました。おもしろいですね。ではどこが問題か、またどこに気を付ければよいか、それぞれお話していきますね

BCD:お願いします

田村:まずBさん、しょうゆをポン酢に代えてそれを何にでもよくかけるのと、お惣菜の利用がやや多いかなと思いました

Bさん:ポン酢、ダメかい?

田村:それなりに塩分は多いので、少し使う量とか頻度に気を付けてみてください。あと梅干しを毎日1、2個食べるのを1日おきにするとか

Cさん:私は練り製品とハム、みそ汁だね?

田村:そうなんです。毎朝パン食でその際にハムかウインナーを2枚とか2本とか、ほぼ毎日なんですよね? あと、みそ汁も1日2回、お昼は麺の時も週に2、3回

Cさん:そうそう、どうしたらいいかね?

田村:ハムは2枚を1枚に、ウインナーは2本を1本にして、みそ汁も具はいろいろ食べてもらいたいので、2回のうち1回は汁を飲まないようにすることができるといいですね。これだけで概算ですが2g近く減るかと思います

Cさん:そうなんだ!

田村:味付けを薄くするとかじゃなくて、いつも食べている物を少し減らすだけでも違ってきますよ

Cさん:今度の健診までやってみっぺ

田村:ですね。それで下がっていたらうれしいし、健診で結果もみえるのでぜひやってみましょう

Dさん:私は漬物と麺類だね。自分で漬けた漬物で、塩からくしてないんだけど、毎食漬物は食べちゃうから……

田村:そうですね……3回を2回、慣れたら1回にするか、あと常に出しておかないようにするか。小皿に取り分けて食べる量に気を付けてみるといいと思います

Dさん:漬物をドーンとテーブルの真ん中に出しちゃうのがダメなんだね

田村:それだとどのくらい食べたかわかりづらいので。あと麺類を週2、3回食べるのと、汁を半分以上飲んでしまう、ですかね

Dさん:麺類を減らすか……

田村:頻度を週1回くらいにするか、汁は極力飲まないようにするか、ですね。どうでしょう?

Bさん:Dちゃん、そうだよ。麺は食べても汁はなるべく飲まない

田村:あと、麺類を食べた時はほかに塩分が多いような食べ物は控えるとか……塩分の足し算引き算ですね

Bさん:塩分って頑張っているようでもなかなか減らせないね~

田村:料理のおいしさにも関係しているので、難しいですね。おいしくないと続かないし、食事が楽しくなくなってしまうので、すべて薄味にするのではなく、塩分の多い食品は量を減らすとか、習慣をちょっと見直すだけでも減らせると思うのでやってみましょう

Dさん:習慣か……お父さんも何にでもしょうゆをかけるのが癖になってるもんね

田村:こちらに塩分を多く含む食品の資料があるので、参考にしながら塩分の多い食品が1日にいくつも重ならないようにするなど気を付けてみてください。
まだ先ですが健診までに少しでも下がっているよう期待してます! 頑張ってください

BCD:頑張ってみっぺ〜

同時に同じ質問をしてみたことで原因や問題点が三者三様なのがわかり、新たな気づきとなりました。いつも思うことですが、生活習慣や嗜好は本当に人それぞれで、同じ疾患や同じような問題でも栄養食事指導のポイントはまったく異なります。なので、その方に応じた、その方に合わせた栄養食事指導が重要です。ただただ減塩の話をするのではなく、その方の問題点を見つけてしっかり向き合うことが大切だと、改めて気づかされました。(『ヘルスケア・レストラン』2025年3月号)

田村佳奈美
福島学院大学短期大学部
食物栄養学科講師
かとう内科クリニック 非常勤 管理栄養士たむら・かなみ●療養病院、急性期病院での勤務を経て、2011年8月からフリーランスの管理栄養士として活躍中。福島県いわき市内のクリニックでの栄養指導や全国各地での講演活動、自宅で暮らす高齢者の栄養サポートにも力を入れている

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