“その人らしさ”を支える特養でのケア
第91回
「会議」を活用して栄養補給面でも
楽しみの面でも充実した給食を提供
各施設で、それぞれの頻度と構成員で実施されている「給食運営(栄養管理)に関する会議」。議論・検討される内容は、行事食や献立、食形態や栄養提供量、連携事項や共有・報告事項などさまざまです。今号では、当施設での会議(給食委員会)について検討内容や運営状況、運営課題などを紹介します。
給食運営に関する会議で行事食や食形態など検討
給食会議、給食委員会、栄養管理員会……。さまざまな名称があると思いますが、今回は、「給食運営(栄養管理)に関する会議」について、当施設の取り組みを紹介します。
当施設の給食運営に関する会議は、給食委員会と名前がついています。そこで、本文内では「給食運営(栄養管理)に関する会議」のことを「給食委員会」と呼ぶことにしたいと思います。
各施設で名称はさまざまだと思いますので、皆さんのご施設での名称に置き換えて読んでいただいても結構です。
当施設の給食委員会は月に1回の頻度で開催され、参加者は管理栄養士、看護師、介護職員、副施設長、委託業者の責任者(栄養士)です。以前は、委託業者の営業担当者や献立作成担当者も参加していましたが、コロナ禍をきっかけに、日常的に施設内で勤務している職員のみの会議ということになりました。
皆さんのご施設では、給食委員会でどのような検討がなされていますでしょうか。
病院勤務時代にも同様の委員会がありました。それは「栄養管理委員会」と名づけられ、どちらかというと、栄養サポートチームの運営等に関する検討が多かったように思います。
当施設での会議の内容はさまざまですが、主なものを紹介してみます。
①行事食・イベント食の計画
まずは、新年度1回目、4月の会議で大まかに予定を決めています。暦に沿った行事については暦どおりに実施しますが、暦の行事がない月(6月、10月)に給食のイベントを入れており、郷土食の提供などが主な内容です。
郷土食は、新潟県以外の地域の物を選んでいますが、ここ数年は、全国的に注目されているイベントをテーマに内容を決めています。
テーマについては、給食委員会で他職種から意見を募って決めており、昨年度の実績では、北陸新幹線延伸記念で「北陸3県の郷土料理」、パリオリンピックをテーマに「フランスの田舎料理」を提供しました。
このほかには、前号で紹介した「リクエストメニュー」や「おやつバイキング」なども給食委員会で検討しています。
②献立の対応について
日常的な食事提供では、成功もあれば失敗もあります。失敗した時に次の対応を考える場合、管理栄養士と厨房スタッフだけでは判断が難しいこともあります。具体的には、「ご利用者様への影響が大きい」と考えられるような場合です。
過去には、特定の献立の提供を曜日固定した際に、当時稼働していたデイサービスから「特定のご利用者だけが食べることになる」と意見があり、見直しを行ったことがありました。
現在検討しているのは、朝食時の雑炊の提供についてです。介護・厨房双方の人員不足の対応策の一環としての検討でしたが、ご利用者様が不満に思われるようでは実施できません。
試験的に献立に組み込んでみて、介護職員を通じてご利用者様からの反応を聞き取っているところです。
③食形態や提供栄養量について
食形態や栄養量については、給食開始の段階で決めています。しかし、ご利用者様の入れ替わりなどで「現状に合っていない」と感じることがあります。
その際には、今後どのように対応したいのか、変更後は具体的にどのような食事になるのか、栄養成分の変化などについて提案し実施可能かどうか――を検討しています。
数年前に、ムース食とミキサー食の内容を見直した際も、配膳イメージや提供する補助食品についてなども含めて資料を作成したうえで、委員会で説明して検討しました。
④ユニットと厨房の連携事項
ユニット(介護現場)と厨房の間で、お互いに要望を聞き取っています。小さいことから大きなことまで、何でもありの意見交換の場となっています。
ユニットからは、最近おかゆが足りない、水分補給用ゼリーの配膳時間を変えてほしい、麺の献立の日に香辛料を追加してもらえないか……など。
厨房からは、炊飯ジャーの内釜の洗い方、水分補給用ゼリーを配膳車から出すのを忘れないで……など、日常業務で気づいたことからの注意喚起などが話題にあがります。
些細なことですが、日常のちょっとしたモヤモヤするところを共有することで、給食業務の大きな改善につながることもあります。
このほかにも、議題中に「その他」として、委員が個々に気がついた・気になったことを話題にして検討したり、管理栄養士から連絡したいことを伝えたりする場としています。
職種を越えた会議で新たな学びを得る
給食委員会の運営について何か基準があるのか調べてみましたが、明確な根拠となる法令はないようです。しかし、健康増進法や食品衛生法、特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準には、食事の内容や衛生管理について「他職種で検討する必要がある」と書かれていることからも、給食委員会の設置が必要であることがわかります。
当施設がある新潟県は、毎年1月に給食の運営について報告していますが、その報告書には、給食委員会について報告する項目も含まれています。開催回数、会議の名称、構成員、検討内容を記載します。特に構成員の部分では、具体的な職種名が選択肢として上がっているため、自施設の構成員を検討する際に参考にできると考えています。
内情をお話すると、近頃の人員不足は委員会の運営にも影響していて、どうしても委員が集まることができない時もあります。また、検討事項がない場合には連絡事項を回覧するなどして委員会が継続できるよう工夫しています。
昨年度末の委員会の反省では、職種を超えて給食について検討できた、委員になったことで新しいことを学べた――などといった意見があり、委員個々も、主体性を持って活動に取り組んでいただけました。
私の一番古い「給食委員会」の思い出は、小学生の頃です。給食の時間に「今日の献立」を全校放送した記憶があります。美味しい給食はもちろんですが、給食の調理員さんに「今日の給食は何?」と聞くために給食室を覗くことも楽しみの一つでした。
給食が楽しみなのは、ご利用者様も同じかもしれません。給食委員会をより良く活用して、栄養補給面でも楽しみの面でも、充実した給食の提供を続けていきたいです。(『ヘルスケア・レストラン』2025年7月号)
特別養護老人ホーム ブナの里
よこやま・なつよ
1999年、北里大学保健衛生専門学校臨床栄養科を卒業。その後、長野市民病院臨床栄養研修生として宮澤靖先生に師事。2000年、JA茨城厚生連茨城西南医療センター病院に入職。同院の栄養サポートチームの設立と同時にチームへ参画。管理栄養士免許取得。08年、JA茨城厚生連茨城西南医療センター病院を退職し、社会福祉法人妙心福祉会特別養護老人ホームブナの里開設準備室へ入職。09年、社会福祉法人妙心福祉会特別養護老人ホームブナの里へ入職し、現在に至る

