食べることの希望をつなごう
第82回
アフターサービスのご提案
~定期的に食事療法を見直そう~
食事療法は、病気の治療や病気を悪化させないためにも重要です。ですが、過度な制限は食事の楽しみを奪い、ストレスになってしまうことも。栄養相談では食事を楽しむために、無理なく継続的に実施できるアドバイスをめざしましょう。
時節柄を意識した栄養相談で先手を打とう
先日、自宅に入居後のアフターサービスとして、住宅メーカーさんが来てくださいました。日常生活で困っていることがないか、修理が必要なところはないかの確認に加え、日常のお手入れ方法、消耗品の購入方法などについて細かく教えていただきました。
キッチンに置いてあったステンレスのトレイの裏側が錆びてしい、汚れが落ちず困っていたところ、いい洗剤を教えていただき、さらには、サンブルできれいにしてもらって大変ありがたかったです。
栄養の面でも、アフターサービスは必要だと思います。
たとえば栄養相談では、その方に合った食事療法を提案し、定期的にフォローする。健康な生活をサポートし続けるために、個々の状態に合わせ、優先順位を見極めることが必要だと日頃から感じています。
日々の業務で皆さん実践されていると思いますが、患者さんの体調の変化(体重、運動量、血液検査のデータなど)に応じて目標を設定し、定期的に食事の注意点を見直し、提案する。季節に合わせたレシピや、手軽に準備できる食材なども紹介します。冬場は寒くなるので、どうしても汁物や鍋物を召し上がる方が増える印象があります。おでんやおせちなど練り製品の使用量が増えることもあり、塩分摂取量の増加には気をつけたいところです。
また、みかんやリンゴなど、フルーツを箱で購入する方もいらっしゃいます。お歳暮シーズンでいただき物が増えたり、忘年会、新年会といった宴席が増え飲酒量や外食の機会が増えたりするのも、この季節の特徴でしょう。
年末年始で帰省したり旅行したりすると生活のリズムが崩れ、1日3食だった方が2食になったり、普段はあまり食べない物を食べたりすることもよくあることです。次にお会いする日までに起こりそうな困りごとの対処法を、先回りして患者さんにアドバイスができると、栄養相談の必要性を実感していただけるのではないかと思います。
“アフター”の前の事前準備もしっかりと
食事は、「食べる」前にたくさんの準備が必要です。食卓を整える必要がありますし、食事を準備するには食材を購入し、調理しなければなりません。調理をしない場合でも、料理を購入しなければなはなりません。
そして、私たちがかかわる多くの患者さんは、食事の量だったり形態だったり栄養成分だったりと、さまざまな配慮が求められることがあります。
また「食べる際」には、よく噛む、一口の量を加減する、一口ごとに咳払いする、顎を引く、「食べたあと」にもすぐ横にならない――などの注意が必要な場合もあります。それが1日3回も……と思うと、やはり大変だなぁと思うのです。
そして何より、そうした行為が継続できているかが一番のポイントとなります。退院後や栄養相談後のアフターサービスが重要だと感じるのは、まさにその点です。過度な食事制限を行っていないだろうか、生活の負担になっていないだろうか――。うまくいっているようであれば、賞賛することも大切だと思います。
先日に糖尿病の教育入院をされた50代男性。入院中から不安が強く質問攻めです。“あるある”だと思いますが、「牛丼は食べていいか」「ウナギはだめか」「お菓子はやめる」など、“食べる・食べない”に分けたいという様子がありありでした。
とても真面目な方で、入院前の食事をいくつか写真に撮ってきてくださっていたので、病院食と比較しながら食事量と品数、食事のタイミングについて説明しました。「病気が怖い」とのことで、とても素直といいますか、受け入れは非常によく、それだけにやりすぎや過度な制限につながらないかが心配でした。
継続できる食事療法で日々の食事を楽しもう
退院後の初回外来では順調に減量できており、内服薬の飲み忘れもなく、仕事も変わらず続けることができていました。食事の準備はバートナーさんがされていましたが、写真を見ると、野菜料理の品数が増えたようでした。
また、ご本人が自身で簡単に用意できる朝食としてグラノーラやカット野菜を取り入れておられ、食事の際には、パートナーさんの手をできるだけ煩わせず、ご本人自身で主食、主菜・副菜の区別をつけ、食べる量を調整しているとのことでした。
病院食を実際に体験したことが良かったようです。そのため、バートナーさんに大きな負担が増えることなく、お互いに変わらず生活できているとのことでした。
食事量の調整がうまくできるようになったことと間食の習慣がなくなったことで、血糖値もしっかり下がっていました。気持ち的にも生活の面でも何かしらの負担がないかを何度も確認し、現状維持としましたが、ご本人の不安が強く、外来受診の際に栄養相談を継続しています。
「次に相談できる日があるとわかっていると安心する」のだそうで、毎回、スマホのメモに30項目ほど質問事項を溜めていらっしゃいます。退院後3回実施し「次でいったん卒業ですね」と笑えるほどになりました。
私個人的としては、食事は生活の中心ではなく、あくまでも生活の一部であることを大前提として栄養相談を行っています。理想の食事をとることが目的ではなくより良い生活を送るためのツールの1つが“食事療法”であると思っています。
食事療法を立派にやり遂げることが重要なのではなく、生活を良くする、病気を良くする(または悪くしない)ための手段の1つが食事療法であるということです。若い時に比べると体力も落ち、周りも年をとって介護が必要になり……と、さまざまな環境の変化を実際に体験する日々ですが、できるだけ楽に、良くしたいと切実に思います。
不必要な手間は増やしたくないので、最新の栄養情報を手に入れること、あらゆる方向にアンテナを張る努力を怠らないこと、そして「楽しむ気持ちをもちたいな」と思うところです。(『ヘルスケア・レストラン』2025年1月号)
とよしま・みずえ●大妻女子大学卒業。東京医科歯科大学医学部附属病院に入職後、2010年、東京医科歯科大学歯学部附属病院入職、24年4月よりNTT東日本関東病院勤務。摂食嚥下リハビリテーション栄養專門管理栄養士、NST専門療法士