食べることの希望をつなごう
第63回
十数年で得た
管理栄養士と他職種とのかかわり

多職種連携が業務上のキーワードに上上がるようになってしばらく経ちます。今号はこの多職種連携についてお話します。

この十数年の振り返り

私が歯学部附属病院の歯科病棟に配属になった時、病棟では誰も栄養に興味がないように感じられました。定期的な体重測定すら行われておらず、経腸栄養はどの患者も同じ量、創傷が治癒し口から食べられるようになれば退院でした。
それから10年以上、歯科で管理栄養士として勤務してきた経験は、歯科と栄養のつながりの深さに気づくとてもよい機会となりました。今号はその変化について、患者さんを例にして振り返りたいと思います。

まず、アルコール依存症の既往のある口腔がんの方です。食事がとれないということで、当院に緊急入院となりました。脱水も認められたため、「まずは経鼻胃管から経腸栄養を!」という主治医からの指示が入りました。
ご本人はがんの腫瘍の影響で思うように話せず、ご家族にうかがってみると、この2カ月ほどはアルコールしかとっていないとのことでした。その状態で経鼻胃管を開始すると、リフィーディング症候群のリスクが高いため、電解質を補充しつつ少量からの栄養管理が望ましく、全身管理の必要性もありました。そこで、内科に介入を依頼し、順調に経腸栄養の投与を開始することができました。

次は血糖値が高めであることを伝えていた患者さんです。その方は「経腸栄養が入っているから」と経過観察の状態でした。しかし、のどの渇きを訴えたため、食後に採血を依頼したところ、内科介入が必要と判断されるほど血糖値が高い数値を示していました。
このほかにも、ほとんど食事摂取ができておらず日中もぼーっとしている方で、いつもと様子が違うなと思い看護師に相談してみても、「水は飲めているし、もともと風変りな人だから大丈夫!」と言われてしまったこともあります。その後も違和感が拭えず、採血データを確認してみたところ、低ナトリウム血症が判明しました。

こんなふうに、患者さんに異変を感じた時、その都度ガイドラインや診断基準をもとに他職種に説明することを繰り返してきました。今思えば、「うっとうしい」「面倒くさい」と思う人もいたかもしれません。それでも当院に管理栄養士が1人しかいなかったこともあるでしょうが、病棟のスタッフは話を聞いてくれましたし、優しかったので、皆で意見交換しやすい雰囲気があり、それが患者さんのためにもつながっていたと思います。

本当に多職種で試行錯誤をしながら頑張ってきたと思える十数年であり、時には励まし合い高め合ってきました。摂食・嚥下障害看護認定看護師を取得した看護師、NST専門療法士を取得した薬剤師、そして摂食嚥下リハビリテーション栄養専門管理栄養士を取得した管理栄養士と、それぞれの立場で研鑽していくことができました。

他職種の得意分野を理解する

どの職種が何をしているのかを知ると、「この分野は薬剤師さんが強いな」とか「これは看護師さんかな」と、各職種の得意分野を理解することができ、さらにその「人」を知ることで連携もしやすくなると思います。
たとえば、入院中は医療従事者による栄養介入となりますが、在宅においては患者さん自身やご家族の方に委ねられる場合が多くあります。そこで、退院後の生活に則した栄養管理の方法について、管理栄養士は無理なく実践できるようなアドバイスを心がけていることと思います。

退院後の栄養管理において、患者さんの背景に関する情報は非常に重要となります。サポートしてくれる人がいるのか、公的支援が受けられるのか、経済状況やADLはどうなのか、さらには患者さんの思いなどです。これらは看護師が日常のケアのなかで得られることが多く、栄養管理にも欠かせない情報であることは日々の業務のなかでも感じていることかと思います。また、薬剤師からも「栄養剤が処方されているけれど、実は飲んでいないようだ」とか「この患者さんはサプリメントを使っている」などの栄養に関する情報を得られます。
さらに、管理栄養士が常に病棟にいると「この時間はこの人は忙しいな」「こういうことも業務なんだ」と他職種の見えなかった部分が見えてきます。「栄養士さん」「薬剤師さん」のような職種ではなく、「○○さん」と個人の名前で呼び合えるくらいの関係のほうが意見交換をしやすいですし、聞きにくいことや言いづらいことも発信しやすいと感じています。
規模の大きな職場ではなかなか難しいかもしれませんが、存在を覚えてもらうこと、他職種にとって顔と名前の一致する管理栄養士になることがスムーズな多職種連携につながると思っていますので、業務の際には常に意識して動くようにしています。

互いに尊敬し合う相乗効果

同じ職種であっても、違う分野で働いていると、目から鱗の知識を教えていただけることがあります。いろいろな人とつながり情報交換することが、結果的に担当する患者さんへの大きなメリットになるのではないかと考えています。

私は急性期病院で働いていながら、在宅訪問管理栄養士とお仕事をさせていただく機会があり、びっくりするようなアイデアと実践力、調理の工夫に結び付くような技術を目の当たりにすることがあります。同じ管理栄養士でも自分とは異なる分野で活躍する相手から教わることが、本当に学びになります。
他職種にしろ同じ管理栄養士にしろ、いろいろな職種の人が互いにそれぞれの技術を認め合い、お互いの技術を活かして患者さんの生活につなげられたら、患者さんはもちろん、スタッフもうれしいでしょう。

新年度が始まって少し時間が経ちましたが、年度替わりに人の人れ替えもあったかと思います。新しく入職された方も管理栄養士になったばかりの方もぜひ仕事を続けていただき、よりよい栄養管理を皆で行っていけたらと思います。(『ヘルスケア・レストラン』2023年6月号)

豊島瑞枝(東京医科歯科大学歯学部附属病院 管理栄養士)
とよしま・みずえ●大妻女子大学卒業。東京医科歯科大学医学部附属病院に入職後、2010年より東京医科歯科大学歯学部附属病院勤務となる。摂食嚥下リハビリテーション栄養専門管理栄養士、NST専門療法士

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