栄養指導で”あるある!こんなこと”
第116回
苦手な料理も電子レンジの活用で
無理なく減量に成功

クリニックの院長より血糖値上昇と高血圧を指摘され、減量の栄養指導依頼があったEさん。そこで料理が苦手なEさんに提案したその方法とは?

失敗していつもリバウンド

Eさんは身長153cm、体重は96kg、BMIは41.0kg/㎡の方でした。食習慣の聞き取りから実施、併せて普段の食事についてや職業なども確認できる範囲で問診しました。

田村:今回は先生から減量との指示ですが、クリニックへはどんな経緯で来られたんですか?

Eさん:はい。職場の健康診断で血糖値と血圧が少し高めなのと、肥満の指摘を受けてこちらに来ました

田村:確かに、血糖値と少し肝機能、あと血圧ですね……

Eさん:先生から少し体重を落とさないとって……

田村:これらの結果は内臓脂肪によることも多いので、少し減量を頑張ってみましょう。20代前半頃の体重と今のお仕事はどんな感じか教えてもらえますか?

Eさん:20代前半は今より25kgくらい痩せてましたが、もともとぽっちゃりでした。仕事は事務です

田村:ありがとうございます。今回、減量という先生からの指示ですが、最近体重が増えてきてしまった原因って何か考えられますか?

Eさん:仕事を始めてから、ダイエットしようと思っていろいろ試したんですが、大抵1カ月ぐらいで飽きてしまうんです。1カ月で5kgくらい痩せたこともあるんですが、リバウンドして、またダイエットして続かなくてリバウンドして、その繰り返しで気が付いたらどんどん増えてしまって……。今では諦めもあって外食する時も気にしないで食べるようになってしまいました

田村:そうだったんですね。ちなみにどんな減量をしましたか?

Eさん:いろいろしました。果物しか食べないとか、千切りキャベツだけを食べるとか、炭水化物抜きや夕方5時以降は食べないとか……

田村:それってどうでしたか?

Eさん:最初は頑張れるんです。体重も最初の1週間で結構落ちたりして。でもだんだん落ちなくなったり、つらくなってきてしまったり………。なんか飽きやすい性格なんですかね?

田村:多分お話を聞いた減量法はどれも、誰がやっても飽きちゃうと思います

Eさん:………

田村:大切なのは、必要な栄養はある程度しっかりとるバランスのよい食べ方です。つらいと続かないので、ちゃんと食べているけど気が付いたら体重が減ってきたというようにできるといいですね。いい食べ方をしっかり習慣として身に付けていきましょう

冷凍コンテナ調理を提案

食習慣の聞き取りをすると、野菜などの量が少ないこと、外食やテイクアウト、お惣菜を利用することが多いこと、お菓子や甘い物もついつい食べ過ぎていることがわかりました。

田村:今はご実家ですか?

Eさん:いえ。仕事を始めて2年目くらいから一人暮らしを始めました。ちょうどその頃からダイエットも始めたんです

田村:お料理はされますか?

Eさん:簡単なものならできますが、1人だしやっぱり面倒で、友達と外食したり、今はコロナ禍でもあるのでテイクアウトやお惣菜が多いです

田村:運動の習慣は?

Eさん:まったくないです。何かしたほうがいいのはわかるのですが

田村:わかりました。そうしましたら、これから食事について基本的な話をしますね。自炊についてもちょっといい方法をお教えしますね

Eさん:私でもできますか?

田村:大丈夫だと思います。まず、食べちゃいけない物は一切ありません。必要なものはある程度しっかり食べることが大事です

Eさん:甘い物も食べられますか?

田村:ある程度量は決めることになりますが、食べていけないことはないです

Eさん:食後に甘い物を食べないとなんか落ち着かないんです

田村:そうですか。多分癖になっているんですね。わかりました。そこも考えましょう。あとご飯ですが、抜かないでください。炭水化物も大切なので、ある程度は食べてください

Eさん:たくさん炊くと保存が大変で、結局早く食べてしまいます

田村:2合とか3合とか炊いた時は、1回分として120~150gを量ってラップに包んで冷凍しましょう。それが1食分になります。食パンなら6枚切り1枚です。お昼もできればお弁当などを持参してほしいのですが、職場は電子レンジなどありますか?

Eさん:あります

田村:では、職場でもできる方法を教えます。冷凍コンテナ調理っていう方法です。少し深めの冷凍庫と電子レンジ使用が可能なコンテナを6、7個個つまり1週間分ほE用意しましょう

Eさん:1週間分つくり置きするんですか?

田村:そうですね。週末に材料を買ってつくっちゃいましょう。材料はいろいろ変更可能なんですが、今の季節なら、白菜、にんじん、しめじなどのきのこ類、あと唐揚げ用に切ってある鶏肉とか豚肉、豚肉は薄くスライスしたものか小間切れ肉でもいいです。白菜を食べやすい大きさに切って、にんじんは5mmくらいの輪切りに。きのこも食べやすく切って、あとはコンテナに入れてください。白菜、にんじん、きのこ、鶏肉を合わせて100gほどを入れて、水100ml、麺つゆ(3倍希釈)大さじ1、和風顆粒だし小さじ2分の1を入れたら蓋をして冷凍しちゃいましょう。食べる時は蓋を外して斜めにかぶせて、600Wで約10分、もしくは5分加熱していったん混ぜてまた3~4分加熱でもOKです。後者のほうが火通りが安心です

Eさん:簡単ですね。野菜も無駄にならなそう

田村:あと食べる時はレンチンでOK。これとご飯、あと納豆や豆腐、もずくなどそのまま食べられるものをもう品ほど付けるとバランスがさらによくなります

Eさん:食後の甘い物は……

田村:果物を1回、加糖でもいいのでヨーグルトを1回、あと夜はできれば避けて昼間か朝に甘いチョコレートなどを1回はOKです

Eさん:今日、早速コンテナと材料を買ってやってみます

田村:お昼もそのまま持って行ってもいいですね

Eさん:職場に冷蔵庫があるから大丈夫です

このような提案をした結果、Eさんは翌月に2kg減量成功。3ヵ月で5kg体重が減りました。

Eさん:今までは一気に落ちて飽きてリバウンドしてました

田村:ゆっくり確実に落としていくほうがいいですね

一人暮らしの方や高齢者の独居も増えています。この方法なら1週間分つくってお届けすることもできるので単身赴任中の方や独居の高齢者にも適していると思います。野菜やきのこ類、大切なたんぱく質がコンテナ1つで摂取できます。調理も電子レンジで簡単です。無理なく続けられる、実践可能なアドバイスが重要です。(『ヘルスケア・レストラン』2023年3月号)

田村佳奈美
福島学院大学短期大学部
食物栄養学科講師
かとう内科クリニック 非常勤 管理栄養士

たむら・かなみ●療養病院、急性期病院での勤務を経て、2011年8月からフリーランスの管理栄養士として活躍中。福島県いわき市内のクリニックでの栄養指導や全国各地での講演活動、自宅で暮らす高齢者の栄養サポートにも力を入れている

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