“その人らしさ”を支える特養でのケア
第62回
栄養ケアやミールラウンドの
記録方法を振り返ってみよう
先日、「ミールラウンドの記録ってどうしてる?」と聞かれる機会がありました。話をしていくと施設によって記録方法に違いがあることがわかりました。皆さんはどのように記録を残していますか?今回は当施設での記録方法について紹介します。
記録の種類は大まかに2種類
栄養ケアを行っていくなかで必須業務である記録。当施設の記録については、大きく2種類に分けることができます。施設全体で共有する記録と栄養課内で共有する記録です。
まず、施設全体で共有する記録について紹介します。これは日常的にご利用者やご家族とかかわった内容のほか、栄養ケアの具体的な内容について多職種で共有するための記録です。当施設では開所当時から全職種が同一の介護記録に記入しています。5年ほど前から電子記録になりましたが、手書きで対応していた頃も現在と同様で、1つの介護記録用紙に記入し、介護記録を見れば全職種のかかわりがわかるようになっています。したがって、栄養ケアの記録は加算の算定要件を満たすものであると同時に、管理栄養士の業務や考え方を他職種に発信するツールとしても利用しています。この記録では自分なりに次のような記入ルールをつくっていますので紹介します。
①ほかのスタッフが読んでもわかるように書く
略語などを多用した記録はとってもかっこいいのですが、読む側が略語を知らなければ意味がありません。また、管理栄養士の常識はほかの職種にとって非常識だったりするため、なるべく伝わりやすい表現で記載します。ご利用者の動作について記録する際、動きを言語表現にするのは難しいですが、迷った時は素直に見たままを記載しています。
②管理栄養士による記録だとわかりやすくする
これは施設内のルールでもあるのですが、記録の冒頭に“【栄養】”とつけています。また、手書きで記録していた時は、記入する色が決まっていました(介護職員は黒、看護師は青、専門職は緑といった具合)。
【栄養】と標記がある(または緑の文字の記録は管理栄養士による記録であることが施設内で共有されていますので、「管理栄養士がかかわっている」と他職種に気づいてもらうきっかけにもなっています。色分けするようになったのは電子記録になってからの習慣ですが、後日記録検索を行う時にも役立っています。
③内容は項目ごとにまとめる
記録の内容はSOAP形式を参考に、介入のきっかけ、現状について、評価内容、今後の対応の順で記載しています。こちらは①にもつながっています。“介入のきっかけ”はご利用者からの発信もありますが、介護職員等からの相談内容、医師の指示なども記載しています。“現状について”には検査結果や身体計測値、食事摂取状況などの現状を記載します。アセスメントツールなどでの評価結果についても記載します。
栄養課内の記録は電子と手書きを使い分け
次に、栄養課内で共有する記録について紹介します。栄養課内で共有する記録は電子データと手書きファイルの2種類を使い分けています。電子データの内容は、主に加算算定の根拠となる内容を記録しています。スクリーニング、アセスメント、モニタリングのサイクルで集めたデータや評価内容が主なものです。栄養ケアでかかわった内容については、前述の記録で紹介したように施設全体で共有する内容として記録しているため、栄養課独自の記録は残していません。
手書きファイルについては、参加したカンファレンスの内容や手書き運用のアセスメント表、入居時のご利用者データ、栄養情報提供書、血液検査データのメモなど電子化できなかったものなどもまとめてファイリングしています。
このファイルは、カンファレンスでの会議記録用(メモ程度ですが)とご利用者のデータバンクとしての役割があります。カンファレンスで意見を求められた時に意見の根拠として説明するようにしているのですが、記憶だけだと暖味になってしまいます。もちろん「私の記憶では〇〇だった」と話すこともありますが、それが毎回では他職種との信頼関係が崩れてしまいます。電子データと重複する内容もありますが、カンファレンスで使用頻度が高い情報はファイリングするようにしています。
同様の理由で、栄養ケアプランもファイリングしています。カンファレンス時にプランと現状があっているかどうかの確認もでき便利です。
ミールラウンドの記録のつけ方
ここまで当施設の記録について紹介しました。最後にミールラウンドにおける記録方法を紹介します。こちらも、前述した2種類(施設全体と栄養課内で共有する記録方法)で記録しています。施設内共有の記緑には実施日に「ミールラウンド実施」と記載します。ご利用者の様子で気になることがあれば併せて記入しますが、いつもと変わらない、問題がないと判断した場合は「ミールラウンド実施」と記載するのみとなります(図1)。事情があり食事を中止している場合には中止理由を記載しています。
一方、栄養課共有の記録には手書きの表があり、そこに実施日を記載しています(図2)。加算要件ではミールラウンドは週3回以上となっていますので3回分記載できるようにつくりました。週の早いほうから3回分記載し、4回目以降や1日に2回以上行っている場合などは電子記録に残しています。
先日、県の運営指導がありました。管理栄養士以外の職種も「記録」について重点的に確認を受けた印象があります。冒頭でも触れましたが、記録を行うことで管理栄養士業務の足跡が残り、加算の根拠になっていきます。
記録に慣れている方、慣れていない方さまざまかと思います。記録方法を見直したい、他施設の方法を見てみたいと思っている方に当院での記録方法が少しでもお役に立てばうれしいです。(『ヘルスケア・レストラン』2023年2月号)
特別養護老人ホーム ブナの里
よこやま・なつよ
1999年、北里大学保健衛生専門学校臨床栄養科を卒業。その後、長野市民病院臨床栄養研修生として宮澤靖先生に師事。2000年、JA茨城厚生連茨城西南医療センター病院に入職。同院の栄養サポートチームの設立と同時にチームへ参画。管理栄養士免許取得。08年、JA茨城厚生連茨城西南医療センター病院を退職し、社会福祉法人妙心福祉会特別養護老人ホームブナの里開設準備室へ入職。09年、社会福祉法人妙心福祉会特別養護老人ホームブナの里へ入職し、現在に至る