食べることの希望をつなごう
第59回
実を伴った食形態調整のアドバイスをしよう

患者さんの高齢化は多くの病院で実感しているでしょう。退院時、患者さんやご家族に嚥下調整食をつくる際のアドバイスをする機会も多いと思います。その際、皆さんはどんなアドバイスをしていますか?

加水の代わりに粥ゼリーを活用する

摂食嚥下障害患者さんの食形態の調整は、日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021(学会分類2021)に基づいて行っている施設が多いと思います。この時に、形態調整によってエネルギー価が下がってしまうという悩みを抱えているのではないでしょうか。特に学会分類2021によるとコード2の食形態は、「スプーンですくって、口腔内の簡単な動作(動き)により適切な食塊にまとめられるもの」「調整方法としては、食品をミキサーにかけてなめらかにし、かつ、凝集性を付加したようなもの」「スプーンですくって食べるようなものを想定」と記載があります。多くの摂食嚥下障害患者さんは、「食事をミキサーにかける」というと、水分を加えてミキサーにかけることを想像すると思います。しかし、いきなり水分を加えてミキサーにかけると、なめらかなペーストになりにくいだけでなく、スプーンですくって食べるというよりは「飲み物」のような形態になってしまい、適切な食形態にならないことがよくあります。また、水分を加えることでボリュームが増えてしまい、結果的に摂取量の低下につながる場合もあります。
そこで、摂食嚥下障害患者さんが学会分類2021のコード2に形態調整をする場合、私は水分ではなく粥ゼリーをミキサーにかける方法を提案しています。形態調整したい食材と同量程度の粥ぜリーでミキサーにかけると、なめらかでまとまりがよく、スプーンですくって食べるような食形態に調整できます。濃度が高い場合にはMCTオイルを加えて調整するとエネルギーアップも図ることができます。もしくは、形態調整したい食材のみをある程度ミキサーで撹拌してから粥ゼリーを加えると、よりなめらかに調整できるように思います。

いろいろと実験してみましたが、魚は種類によって攪拌してもかなり繊維が残るものがあることがわかりました。カレイや銀ダラなど脂ののった魚はなめらかに仕上がるのですが、アジやサワラなどはペーストにざらつきが残り、人によってはむせにつながる印象があります。裏ごしすればよりなめらかになりますが、毎日毎食の調理の手間を考えると、患者さんの負担にもなります。管理栄養士自身もさまざまな食材で調理をして物性の変化や調理の手間などを理解しておくと、より実践的なアドバイスにつながると痛感しています。1人ではアイデアにも限りがあるため、もしもいい調理方法がありましたら、ぜひ教えていただきたいところです。

さまざまな飲料へのとろみ付けについて考える

普段何気なく行っているとろみ付けですが、いろいろな飲料にとろみ付けを試してみることで、新たな気づきにつながる場合があります。摂食嚥下障害のある患者さんに、液体のとろみ付けの指示が出ることは、よくあることだと思います。液体は流動性が高く誤嚥のリスクの高い形態ですが、とろみをつけることで誤嚥せずに飲めるようになることが多いです。

むせは誤嚥を疑う最もわかりやすい症状ですが、「液体を飲むとむせる」「お粥でむせる」「食べ始めにむせる」など、原因の食物や、どういう場面にむせるのかを確認することで、むせの要因を推測することができます(もちろんむせない誤嚥〈不顕性誤嚥〉もあるので、むせの有無だけを誤嚥の指標とするのは危険です)。たとえば、お茶でむせるけれど牛乳や飲むヨーグルト、濃厚流動食などは問題なく飲める場合があります。恐らく、ごくごく薄いとろみがついていれば、液体の流入速度と嚥下反射のタイミングがずれずに飲み込めるのでしょう。また、飲む時の姿勢を変えることでむせなくなる場合もあります。コップから飲料を飲む場合、顎が上がってしまいますが、顎を引いて飲むことでむせなくなることはよく経験します。
液体を安全に飲めるのか、それとも誤嚥してしまうのかということだけではなく、とろみの濃度やひと口の量のほか、コップで飲めるのか、それともスプーンでひと口ずつ摂取したほうが安全なのかといった食具について、また、姿勢でむせの発生が改善するかなど、より実現可能な方法で安全に液体を摂取できる落としどころを見つけられれば、不必要な食形態の調整をしなくて済みます。

ただし、摂食嚥下障害患者さんには、とろみがついていることで水分摂取が進まなくなるケースが多くあります。実際にとろみ水を試飲してみると、薄いとろみでもお腹に溜まった感じがあったり、濃いとろみになると100ml飲んでものどがうるおった感じがしなかったりと、新たな発見があるので、学生への講義などでは、実際に摂食嚥下障害患者さんに提供するようなとろみ水に調整して、学生に飲んでもらうこともあります。時々、「とろみは濃ければ濃いほど安全だと思っていた」と言う方がいらっしゃるのですが、不適切なとろみだと口腔内や咽頭に溜まってしまいかえって危険な場合もあるので、患者さんに合った適切なとろみの濃度を守っていただくようお伝えしています。
最近では炭酸飲料用のとろみ付けが話題になり、なかなかおいしいと聞きました。味見をしてみると、確かにおいしく感じました。また、濃厚流動食へのとろみ付けも話題に上がることがありますが、試してみるととろみがつきにくく付着性が増すので、患者さんやご家族が調整するにはなかなか難しい印象を受けました。個人的には、とろみ付きの濃厚流動食のほうが物性に優れているような気がします。

管理栄養士も調理技術を磨こう

このように患者さんに提案する前に、まずは自分でもさまざまな飲料にとろみ付けしてみることで、患者さんの食の安全を守り楽しみへのサポートの幅が広がると思います。
私は過去に、「摂食嚥下障害のある患者さんは、不当においしくないものを食べさせられている」と他職種から言われたことがあります。しかし、安全に食べるためには形態調整が必要な場合が多々あります。そんな状況にあっても少しでもおいしく食べていただくため、また調理担当者の負担を減らすためにも、管理栄養士はその形態調整が本当に患者さんに必要なのか、そして適切なのかは、定期的に見直していくことが必要です。また、適切な食形態に調整するための調理技術の習得も、管理栄養士は必要だと思います。
百聞は一見にしかず。やってみないとわからないことが多くありますから、管理栄養士自らによる調理実習・実験をお勧めします。上手にできるか、よりも失敗した時のリカバリー方法を知りたいと思ってしまうのは、もしかすると調理に自信がない私だけかもしれません。しかし、患者さんの立場になって、日々の生活に役立つアドバイスができるよう努めていきたいと思います。(『ヘルスケア・レストラン』2023年2月号)

豊島瑞枝(東京医科歯科大学歯学部附属病院 管理栄養士)
とよしま・みずえ●大妻女子大学卒業。東京医科歯科大学医学部附属病院に入職後、2010年より東京医科歯科大学歯学部附属病院勤務となる。摂食嚥下リハビリテーション栄養専門管理栄養士、NST専門療法士

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