栄養士が知っておくべき薬の知識
第135回
高尿酸血症の治療のための
薬剤の種類と栄養指導のあり方

今回は高尿酸血症の治療薬について述べます。以前よりも薬の選択肢が増えて、尿酸が身体に溜まる新しい考え方も提唱されています。もちろん日常の食生活に対する注意も欠かせません。

高尿酸血症と痛風

高尿酸血症患者数は1000万人以上とも言われ、それによって生じる痛風の患者数も100万人に上ると言われています。
痛風はアルコールやプリン体が豊富な食品が原因となることから、以前は「贅沢病」とも呼ばれていました。しかし、今は一部のお金持ちだけが発症するといった疾患ではなくなり、特にアジア圏全体で患者数が増加しています。
高尿酸血症は、高血圧や脂質異常症、糖尿病などを合併することも多く、慢性腎臓病(CKD)の発症要因とも考えられ、その管理の重要性が増しています。

血液中の尿酸値が7.0mg/dl以上で高尿酸血症と診断されますが、これには理由があります。これ以上血液中の尿酸が高くなると、血液中で溶けきれなくなった尿酸塩の結晶が形成されます。その結晶が関節などの組織に沈着していわゆる痛風を発症させます。
これらの結晶は、低温になるほと溶けにくく、手足や耳、また親指の付け根などの関節に好発します。また怖いのが、稀に骨や脊髄に結節ができて骨折や麻痺を起こすことです。血清尿酸値が7.0~8.0mg/dlで約2%、8.1~8.9mg/dlで約4%、9.0~9.9mg/dlで約20%、10mg/dl以上で約30%の方に風が発症するとされます。

痛風は文字どおり、風が吹いても痛いと書きますが、これは関節などに溜まった尿酸塩を除去するために白血球が集まって炎症を起こすためです。
痛風の痛みを予感した時に使われるのがコルヒチンという薬で、コルヒチンはこの白血球の集積を阻止することで痛風発作を予防します。関節がむずむずするなど、痛風を予感したら服用します。痛風を発症してしまったら、いわゆ解熱鎮痛剤や場合によっては抗炎症薬であるステロイド治療を行います。この時に後述する尿酸値を下げる薬を始めてしまうと、症状が悪化するため、症状が治まるまでこの薬は服用しません。

高尿酸血症の原因

高尿酸血症の方には、プリン体を制限するような栄養指導が行われていると思います。これは、プリン体がヒポキサンチンからキサンチンへと変換され、最終的にキサンチンオキシダーゼという酵素によって尿酸となるためです。尿酸の元になるプリン体を制限すれば、尿酸が合成されないといった理由です。
ただしプリン体の摂取によって生じる尿酸は、尿酸プールの2~3割程度とされ、尿酸の7~8割を占めるのは、体内で核酸など身体に必要な遺伝子からプリン体を生じた分となります。尿酸プールには男女差があり、男性が女性の約2倍もプールしています。このため高尿酸血症は男性に多い疾病です。
これらの高尿酸血症の原因から、薬物治療としては尿酸の合成を抑えるか、腎臓からの排泄を促すといった治療戦略となります。以前、尿酸は腎臓から尿として排泄することが主な排泄経路と考えられていました。しかし最近では便として尿酸を排泄することも重排泄経路と考えられるようになりました。

高尿酸血症の病型分類

高尿酸血症のタイプは、尿酸を身体内でたくさんつくってしまう尿酸産生過剰タイプで約10%、尿酸の排泄が低下してしまうタイプが約60%、残りはその両方を有しているタイプで約30%とされています。これらのタイプは、畜尿によって尿からの尿酸排泄量を計算して、いずれのタイプに属するか別します。検査時には、尿酸排泄に影響を及ぼす利尿薬や消炎鎮痛薬の服用を中止してもらいます。

高尿酸血症の治療薬

高尿酸血症のタイプが決定されると、基本的に病態に沿った治療薬が選択されます。高尿酸血症の治療薬は、その作用機序から尿酸排泄促進薬と尿酸生成抑制薬の2種類に分類されます。尿酸産生が多い患者さんでは、前述した尿酸を産生する最終段階であるキサンチンオキシダーゼという酵素を抑制する薬が用いられます。古くから使われているアロプリノールや、それよりもさらに強力にこの酵素を抑制するフェブキソスタット(フェブリク®)とトピロキソスタット(ウリアデック®とトピロリック®)です。
アロプリノールは歴史の古い経験豊富な薬ですが、副作用も多く、特に腎機能の悪い患者さんでは用量を調節する必要があります。フェブリクやウリアデックは比較的安全性が高く、高度な腎機能障害でなければ用量の調節も必要あありません。
これらの尿酸合成阻害薬に対して、尿酸排泄促進薬にはベンズブロマロン(ユリノーム®)、ブコローム(パラミヂン®)、プロベネシド(ベネシッド®)があります。また最近になってドチヌラド(ユリス®)という薬も使われるようになりました。これらの薬は腎臓に働いて尿酸が再吸収(尿から身体に戻る)することを抑制します。ユリノーム®は劇症肝炎を発症した症例が報告され、肝障害の懸念もありましたが、ユリス®には現在のところそのような毒性がないと考えられ、またユリノーム®よりも強く尿酸排泄を促すことから、症例の多い尿酸排泄が滞ったタイプの高尿酸血症患者に適応されるケースは増えてくるものと思われます。
ただし尿酸が尿中に排泄される量が多くなると、尿路結石のリスクが増加します。そこで、これらを服用する方には、水分摂取を励行してもらうことと結石をつくりにくくするために尿のアルカリ化を図ります。薬では、クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウムとしてウラリット®が使われます。

高尿酸血症治療薬を選択する必要性

基本的に尿酸排泄促進薬は尿酸排泄低下タイプに、尿酸生成抑制薬は尿酸産生過剰タイプに対して投与されますが例外もあります。
尿酸は最終的に原尿中の約10%前後が尿中に排泄されますが、尿酸排泄促進薬は腎臓の尿細管での再吸収を抑制することで尿酸の尿中排泄率を上昇させるため、腎機能が低下した方では十分な効果が望めません。また、尿酸生成抑制薬の中には、尿酸の便排泄を阻害する作用をもつこともわかってきました。
今後はこのような観点から、尿酸治療薬を使い分ける必要性も論じられることと思います。

高尿酸血症は、生活習慣の是正がとても重要です。
プリン体の制限はもとより、摂取エネルギーが過多になれば、その老廃物として身体から生成される尿酸も増えてしまいます。そのため、適正体重を維持することが重要です。
アルコールの摂取制限もとても大切です。プリン体を含有するビールはもちろんですが、アルコールの代謝物は尿酸そのものとなります。またアルコール摂取によって増加した乳酸は、尿酸の排泄を妨げるため、アルコールの種頬にかかわらず適度な飲酒習慣とすることが大切です。またお酒を飲むとトイレが近くなると思います。これは抗利尿ホルモンの分泌を抑えるためです。飲酒によって脱水になれば、それだけ血液中の尿酸濃度が高くなって痛風を発症する可能性が増します。
同様に無酸素運動は身体内の乳酸を増やしますが、これも尿酸の排泄を妨げる原因になります。高尿酸血症で有酸素運動を薦めるのはこのためです。高尿酸血症の治療においては、管理栄養士さんによる日頃の栄養指導がとても重要だと考えます。(『ヘルスケア・レストラン』2022年11月号)

林 宏行(日本大学薬学部薬物治療学研究室教授)
はやし・ひろゆき●1985年、日本大学理工学部薬学科卒業。88年、聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院勤務。2002年から同院NST事務局を務める。11年4月から日本大学薬学部薬物治療学研究室教授

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