栄養指導で”あるある!こんなこと”
第111回
毎回の食事を撮影しプリントアウト
ノートに貼って日記風の食事記録に

糖尿病患者の方に指導することの多い食事記録。毎回、記録をとるのは面倒なものですね。今回はその食事記録を日記風に楽しく演出した患者さんのケースです。

主食と間食の量が問題

今回ご紹介するZさんは専業主婦で、身長155cm、体重は55kg、BMIは27.1k/㎡でした。最近、膝の調子が悪く整形外科を受診したところ、血糖値が高いことがわかり、紹介で来院しました。紹介時の血糖値は329mg/dl、HbA1cは12.3%とかなり高値でした。

田村:血糖値が高いのはいつ頃からかわかりますか?

Zさん:ここ2年ほど市の健康診断を受診していなくて、特に病院にかかることもなかったのでわからないのです

田村:それで今回、整形外科でわかった感じですね?

Zさん:はい。膝にちょっと痛みがあって、整形外科に行って採血したら、血糖値が高いからすぐに行きなさいって紹介されました

田村:そうでしたか。そうすると数年前までは何でもなかったのですね?

Zさん:はい、糖も血圧も特に問題ありませんでした

食習慣の聞き取りをしてみると、①間食が多い(和菓子や洋菓子、暑い時はアイスなど)、②外食が好きで特に友人とランチに出かけることが多い(週4~5回)、③仕事を辞めてから3年間で体重が6kg増えた、④ウォーキングを始めたが膝が痛く最近はあまり歩けていない、などの問題が挙がりました。野菜はしっかり食べており、甘いジュース類などは飲まないなど、いいところもありました。

田村:では初回なのでいくつか食事の基本についてお話しますね。それを実践して、血糖値がどう変化するか、処方した薬剤の影響も併せて見ていきましょう

Zさん:はい。お薬ですが、先生からこのままだとインスリンの注射が必要になるかもしれないと言われましたが、大丈夫でしょうか?

田村:そこは先生が判断するところですが、今は服薬と食事で様子を見ましょう。万が一、インスリン導入になっても、食事管理がうまくいけば、量を減らしたり場合によっては注射が必要なくなることもあります

こんな会話をして、①主食の量は一定にする(Zさんの場合1回に白米120g程度)、特に外食時は注意する、②野菜や海藻、きのこなどはそのいずれかを毎食とる(これはほぼできていました)、③野菜類から先に食べる(ベジタブルファーストの実践)、④ゆっくりよく噛んで食べる。通常はこここまでが基本ですが、Zさんの場合は間食が多かったので、その量について、⑤間食は量を決めて食べる、あまり甘くないものを選ぶ、と付け加えました。

田村:あと、食事の量が結構多いようですね

Zさん:ランチで友人が残しても私はペロッと食べたり、もっと食べられるかもってよく思います

田村:そうですか。食事の記録をお願いできますか?食べたものをノートか何かに書いておくのです

Zさん:わかりました。ノートに付けてみます。

田村:ありがとうございます。何グラムとか、わかる範囲でいいので、負担にならない程度で食べたものの大体の量を書いてください

日記気分で楽しく食事を記録

そして翌月の栄養指導で……

田村:こんにちは。それでは体重を量らせてくださいね。あれ?減りましたね?

Zさん:はい、頑張っています

田村:前回が65kg、今回が63kgです。減っていますね

Zさん:主食が前の半分ぐらいかもしれません。管理栄養士さんに120gって言われましたが、家だと100gにしています。あと外食の時も少なめにお願いしています

田村:今回の数値ですが、血糖値が198mg/dl、HbA1cが11.8%、しっかり下がっています。主食をきっちりコントロールできているのが効いています。あと間食はいかがですか?

Zさん:甘いお菓子がどうしても止められなくて食べちゃいます

田村:前回もお話したように止めなくてもいいんですよ。むしろやめるってなると食べられないストレスが生まれます。それよりは少しを楽しむって切り替えて、むしろ食べることを楽しんでください

Zさん:なんか食べちゃいけないって思い込むと、余計目について食べたくなるんです

田村:人間の心理って不思議ですよね。今日はこれをこのくらい食べようと上手に切り替えて決めて食べてみてください

Zさん:わかりました

田村:あと、先月お願いした食事記録、よかったら見せていただけますか?

Zさん:はい。これです

そう言って出してくれた大学ノート。中を見ると、毎食食べたものの写真をプリントアウトしたもの、食器の配置図、そして食べた料理名が書かれていました(写真)。

田村:すごいですね。とても見やすいしわかりやすいです

Zさん:どうせ撮影してあとで記録するのならと、写真もプリントしてみました

田村:これ大変ではないですか?

Zさん:全然、むしろ楽しんでやっています

田村:楽しむことは大事ですね。それが続ける秘訣です。感動しました。しかも、いろいろなものをちゃんと食べていて、とてもバランスがよいと思います

Zさん:量はどうでしょうか?

田村:いいと思いますよ。こんな感じの食べ方をぜひ継続して、あとは間食を少し変えてみましょう。この食事記録ですが、負担でなければもう少しこのまま続けてみませんか?

Zさん:大丈夫です。本当に楽しいので

田村:私も今回の記録方法はとても参考になりました。写真をスマホで見せてもらうか、ノートに記録してもらうのはこれまでもありましたが、その両方はなかったです

Zさん:ちょっとした日記みたいで、楽しいです

田村:そうですよね。ここに天気やちょっとしたエピソードを記録していくと日記になりますね。あと体重などの記録もいいと思います

Zさん:やってみます

Zさんは現在も栄養指導に通って来ています。半年経って、体重は3kg減少、HbA1cは当初の12.3%から8.9%になりました。医師からも「インスリンはなしで様子を見ましょう」と言われてホッとしたようです。食事記録もしっかり続けていて、現在食事記録ノートは3冊目になりました。本人は時々見返して、メニューを考えたりするそうです。(『ヘルスケア・レストラン』2022年10月号)

田村佳奈美
福島学院大学短期大学部
食物栄養学科講師
かとう内科クリニック 非常勤 管理栄養士

たむら・かなみ●療養病院、急性期病院での勤務を経て、2011年8月からフリーランスの管理栄養士として活躍中。福島県いわき市内のクリニックでの栄養指導や全国各地での講演活動、自宅で暮らす高齢者の栄養サポートにも力を入れている

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