“その人らしさ”を支える特養でのケア
第50回
コロナ禍に参加した
オンライン研修を振り返る

2020年は軒並み中止となった学会や研修会ですが、21年はオンラインを活用して開催されるようになりました。令和3年度介護報酬改定に伴い、研修を受ける機会の多かったこの1年。たくさんのオンライン研修に参加してみて、かつて主流だった「集合研修」との違いを感じたので、紹介します。

オンライン研修に明け暮れた2021年

この文章を書いているのは年末ですが、皆さんが本稿をご覧になっているのは「年度末が目の前!」という頃かと思います。今年度は介護報酬改定に始まり、高齢者施設の管理栄養士にとっては大きな節目の1年だったのではないでしょうか。先月号でも紹介しましたが、この1年は私も介護報酬改定の対応のため情報収集や業務改善に頭を悩ませる毎日でした。

一方で、加算算定のための情報収集を皮きりに研修参加に明け暮れた1年でもありました。2年目のコロナ禍では、研修はオンラインが当たり前になった印象を受けます。あちこちから「オンライン研修」の情報が入るようになってきたこともあり、気軽に研修を受ける機会に恵まれました。そこで、今号はオンライン研修の受講を通じて私が感じたことを皆さんに共有したいと思います。

研修を受けるきっかけになったこと

私の病院勤務時代は独身であったことや各地へのアクセスがよかったこともあり、参加したい学会や研修の日程に合わせて休みを取っていました。
当時は研修といえば集合研修。「移動時間や交通費などの負担がある一方で、会場の雰囲気を感じたり、会場で管理栄養士同士のつながりができたりとメリットも多く、遠方の研修では旅行気分も味わえ(観光した記憶はわずかですが)、個人的には集合研修への参加は、楽しみにしている自己研鑽の方法であり、いい思い出にもなっています。
また、学会などでこれまでの活動の成果を発表する機会を得られたこともいい経験となりました。「伝えること」の難しさを学び、日常業務で他職種と意見交換をする際や栄養指導などに活かすことができました。

特別養護老人ホームに入職してからは、日常業務は行っていましたが、子育てもありずいぶんと長い間学会や研修などへは足が遠のいていました。それは、研修のために普段の勤務時間を超えて出かけることは、家族の負担になるのではないかと考えていたからです。
「勉強していないな」という苦い思いを抱えながら、日常業務やこうして文章を書かせていただくなかで、疑問点を文献検索するのみにとどまっていました。
そんななか、令和3年度介護報酬改定に伴った対策チームの一員となったこともあり「どうしても情報収集をしなければならない」状況になりました。所属している職域団体や電子記録のメーカーから「オンラインでの情報共有」のチャンスがあり、オンライン研修の一歩を踏み出しました。

ライブ配信とオンデマンド配信

集合研修に慣れている身からすると、いつもの執務室や自宅でパソコンやスマホからの画像と音声で受ける研修はなんとなく物足りないものでした。
もちろん、研修の内容自体は期待していた内容でしたし、今後の対応の検討資料として利用できるものだったので大満足です。しかし、自分にとって集合研修では当たり前だった「会場が変わることの緊張感・リフレッシュ感」が足りないなぁ、と感じたのです。
しかしながら、移動時間や旅費・宿泊費用などを考えなくてもよいオンライン研修はメリットも多く、気軽に参加できることから可能な限り受講してみることにしました。

オンライン研修には大きく分けて、その時間にしか視聴できない1回きりのライブ配信と、自分が見たい時間に見ることができるオンデマンド配信の2種類があります。

ライブ配信は配信時間に合わせて自分の予定を空ける必要があります。時間を気にして準備するため、自宅での受講では子どもたちの妨害に遭うこともありました。大変失礼ではありますが、どうしても受講したくてスマホ片手にイヤホンで音声を聴きながら、子どもたちの食事の世話もしながら……なんてことも。ご想像のとおり、どちらも中途半端に終わってしまい「無理はよくない」と感じました。私の生活サイクルでは、時間によってライブ配信は受講しにくい研修形式ではあります。
反面、ライブ配信ならではのメリットは質問ができるということです。研修によってさまざまかと思いますが、チャット機能を使ったり、相互方向に通信ができたりして、集合研修に準じた形で受けられると思いました。

では、オンデマンド配信の場合はといえば、何といっても配信期間内ならいつでも何度でも視聴できるのが最大のメリットです。いつでも見られると思うとつい気が緩み、期間の最後に駆け込みで見る、ということもありますが、気になった箇所だけもう一度見ることもでき、学びを深めることもできています。特に実習や実演を含む内容の場合は、手技などを何度も確認でき大変充実した研修でした。ライブ配信とは異なり、質問ができないことがデメリットとなりますが、そこから新たに自分で調べるきっかけとなっています。

個人的にはオンデマンド配信の研修のほうが受講しやすく、最近は子どもたちが寝たあと、深夜にスマホで受講するというスタイルが定番になりました。

配信者側に立ってみて気づいたこと

先日は、オンライン研修を配信する側も経験しました。配信する側になってみると、集合研修とは違い、受講者の反応が見えにくく、伝えたいことが伝わっているのか不安になりました。受講者側に立ってみれば、皆さんのご自宅や職場から、いつもの雰囲気でご参加いただけたものと思っています。配信側を経験する、というのは貴重な機会でした。今回の反省を活かし、もう一度挑戦したいです。

研修の開催形態が多様化し、今まで受講しにくかった方も参加しやすくなっています。当施設では、業務中に予定を調整して時間をつくり受講することも可能なため、より研修参加が身近になっています。基礎的な内容の研修も、改め受講することで見えてくるものがあり、学び直しの1年となりました。(『ヘルスケア・レストラン』2022年2月号)

横山奈津代
特別養護老人ホーム ブナの里
よこやま・なつよ
1999年、北里大学保健衛生専門学校臨床栄養科を卒業。その後、長野市民病院臨床栄養研修生として宮澤靖先生に師事。2000年、JA茨城厚生連茨城西南医療センター病院に入職。同院の栄養サポートチームの設立と同時にチームへ参画。管理栄養士免許取得。08年、JA茨城厚生連茨城西南医療センター病院を退職し、社会福祉法人妙心福祉会特別養護老人ホームブナの里開設準備室へ入職。09年、社会福祉法人妙心福祉会特別養護老人ホームブナの里へ入職し、現在に至る

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