食べることの希望をつなごう
第45回
摂食嚥下リハビリテーション
栄養専門管理栄養士をご存じですか?

管理栄養士には、各団体が認定している資格があります。自身のスキルアップのために取得している方もいるかと思います。今回は、「摂食嚥下リハビリテーション栄養専門管理栄養士」について紹介します。

専門管理栄養士とは?

以前も本連載で触れたことがありますが、公益社団法人日本栄養士会の認定制度について改めて紹介させてください。(公社)日本栄養士会には①各分野において「栄養の指導」について責任をもって実践できるレベルに到達したスキルを認める「認定栄養士、認定管理栄養士制度」、②特定分野における実践活動により、優れた成果を生むことができる管理栄養士を認定する「特定分野別認定制度」、③さらに専門性を身に付けたい管理栄養士へ時代のニーズに応えるスペシャリストを認定する「専門分野別認定制度」の3つの認定制度があります。

そのなかで、私が取得している「摂食嚥下リハビリテーション栄養専門管理栄養士」について紹介したいと思います。(公社)日本栄養士会のホームページには、「より卓越した技術・知識を修得し、より複雑で解決困難な栄養の問題を有する個人や集団に応じた栄養管理を実施でき、その専門性を教育や研究スキルにも発揮できる管理栄養士を、専門管理栄養士として関連団体と共同して認定します」と記載されています。現在、①がん病態栄養専門管理栄養士、②腎臓病病態栄養専門管理栄養士、③糖尿病病態栄養専門管理栄養士、④摂食嚥下リハビリテーション栄養専門管理栄養士、⑤在宅栄養専門管理栄養士の認定が始まっており、2019年度末現在、51人の摂食嚥下リハビリテーション栄養専門管理栄養士認定者名簿がホームページに記載されています。

「摂食嚥下リハビリテーション栄養専門管理栄養士」は、摂食嚥下リハビリテーションの基本的知識と栄養管理に関する技能を修得し、医療機関や介護(福祉)施設とともに在宅においても、摂食嚥下障害を持つ患者や家族に対し栄養管理と専門的な食・栄養支援を行うことでQOL向上に貢献できる管理栄養士を、公益社団法人日本栄養士会と一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会とが認定する共同認定制度です。

専門管理栄養士認定取得のための条件とは

認定に必要な申請資格として、次の3つがあります。

1、日本国の管理栄養士免許を有し、管理栄養士として優れた人格と見識を備えていること
2、(公社)日本栄養士会および(一社)日本摂食嚥下リハビリテーション学会の会員であること
3、(一社)日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士の取得者であること

このうち3の、(一社)日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士は、①日本摂食嚥下リハビリテーション学会への入会期間が受験年の7月31日において2年以上であること、②摂食嚥下に関わる臨床または研究歴が受験年の7月3日において、通算3年以上であること、③日本摂食嚥下リハビリテーション学会インターネット学習プログラム全課程の受講を修了していること、の3要件を満たし、認定試験に合格することで取得できます。このインターネット学習プログラムは、今でも時々学びなおしのためアクセスしています。

そして、摂食嚥下リハビリテーション栄養専門管理栄養士の受験資格は、前述の3つの条件に加え、

①管理栄養士を取得後5年以上の実務経験を有し、摂食嚥下に関わる栄養管理に通算3年以上従事していること
②(公社)日本栄養士会および(一社)摂食嚥下リハビリテーション学会が指定する研修の履修を必須とする
③摂食嚥下機能に関する実績5症例および実務経験歴を提出すること
④摂食嚥下リハビリテーションおよび栄養分野の学術集会・地方会または関連する研究会等において、摂食嚥下に関する筆頭発表、もしくは筆頭論文を過去3年間のうち1篇以上有すること

という4つの条件を満たすことが必要です。
また、この認定資格は5年ごとに更新が必要であり、次の認定条件を満たしていることが必要です。

①摂食嘘下リハビリテーション学会認定士の資格を有すること
②過去5年間に摂食嚥下障害を持つ者(児)に関わる栄養管理に通算3年以上従事していること
③過去5年間に別に定める研究業績及び研修業績等の必要な単位数を有すること

この必要な単位は、論文発表や症例報告、学会・研究会発表などの研究を行うことや、更新セミナーの受講、60分以上の講師などの研修を行うことで取得できます。私にとって資格取得のハードルは高いものでしたが、更新のハードルも大変高く、特に研究分野は苦手意識もあり、単位取得をどうしたらいいか悩んでいました。そんな折、今年度の更新講習のプログラムの案内があり、思い切って受講することにしました。なぜなら、大きなテーマが「レター論文の書き方」だったからです。座学とグループワークと思っていたところ、「英語論文を読んでワークシートを作成する」という事前課題があり、英語も苦手な私は読むのに丸一日かかってしまいました。講習当日は、文字どおり必死で講義を受け、グループワークに参加しました。各グループにはファシリテーターの先生方がついており、大変丁寧に導いてくださり、何もかも初めての私でもなんとかついていけるようサポートしてくださいました。

管理栄養士としてのスキルアップのために

論文発表や学会発表など、なかなか手を出しづらいと感じている管理栄養士も少なくないのではないかと思います。私自身、管理栄養士が1名という職場で、何から手を付けたらいいのかも、どのように進めたらいいのかもわからず、また、周囲に質問できる指導者もおらず、日常業務に追われていることを言い訳にして、研究に手を出さずに過ごしていました。
そんななかでも、摂食嚥下リハビリテーション栄養専門管理栄養士のメーリングリストでは、論文の紹介をはじめとしたさまざまな情報が発信・共有されており、研究を始めなければという気持ちにさせられました。また、今回は論文の書き方の講義やグループワークだけでなく、実際にレター論文作成から投稿までの一連の流れを経験でき、大変貴重な機会を得られました。

このような講習を私は今まで受講したことがありません。講師およびファシリテーターの先生方は講習中だけでなく、論文投稿後まで親身になっていつでも質問に答えてくださり、まさに「手取り足取り」の大変ありがたい講習でした。取得も更新も決して楽ではない専門管理栄養士ですが、資格取得のためのプログラムも更新のためのプログラムもどちらも大変有意義な内容ということをお伝えしたく、紹介させていただきました。(『ヘルスケア・レストラン』2021年12月号)

豊島瑞枝(東京医科歯科大学歯学部附属病院 管理栄養士)
とよしま・みずえ●大妻女子大学卒業。東京医科歯科大学医学部附属病院に入職後、2010年より東京医科歯科大学歯学部附属病院勤務となる。摂食嚥下リハビリテーション栄養専門管理栄養士、NST専門療法士

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