栄養指導で”あるある!こんなこと”
第99回
どうしても止めることのできない間食
食育を兼ねてその内容を見直し血糖値改善へ
職場を早期退職し、近所に住む孫の面倒をみる日々のOさん。孫の相手をする時間や買い物の時についつい間食をとって血糖値が高くなる、今回はそんなお話です
今回ご紹介するOさんは、職場を早期退職し近所に住むお孫さんの面倒を見ながら通院中の患者さんです。
身長は156cm、体重は66kg、BMIは27.1kg/㎡とぼっちゃり体系の方です。職場退職の年の健康診断で糖尿病予備軍と診断され、通院していましたが、退職後徐々に数値が上昇して栄養指導となりました。
孫の面倒をみる間つい間食が止められない
田村:Oさんこんにちは。管理栄養士の田村と申します
Oさん:よろしくお願いします
田村:Oさんは糖尿病とのことで、今回栄養指導になりますね。現在お仕事などは?
Oさん:近所に住む娘夫婦に子どもができて、娘は職場復帰もあり昼間は私が孫を見ている生活です
こんな会話をして、いつものとおり食習慣の聞き取りを実施しました。その結果、甘いジュース類(-)、間食(+)甘い菓子類、アイス、せんべい、菓子パンなど、アルコール(-)、外食の頻度は時々、運動習慣(-)、野菜摂取(+)、食べる速さは速い、といった感じでした。
田村:Oさん:、小さなお孫さんを見ていらっしゃるのでそのせいもあるかと思いますが、間食が気になりますね。以前から間食はされるほうでしたか?
Oさん:仕事をしていた時は、ここまで間食をしなかったです。家にいるようになって、孫と一緒についつい……
田村:環境的に今はしょうがない部分もありますね。ちなみに体重なんかはいかがですか?増えたとか?
Oさん:そうですね。仕事を止めてから、ここ3~4年で5kgは太りました
田村:なるほど。やはり生活環境の変化と間食が大きいようですね
Oさん:血糖の数値も前は予備軍って言われていましたが……
田村:そうですね。今は食後血糖が140~150mg/dl、HbA1cが今月は7.5%ですね。年齢から考えてもできればHbA1cを6%台前半くらいには下げたいですね
Oさん:先生からもそのぐらいって言われました
田村:そうですね。今回は食事の基本についてお話ししますので、そちらを実践しながらその数値をめざしましょう。間食も絶対ダメではないのですが、中身を見直してちょっと頑張りましょう
Oさん:わかりました。よろしくお願いします
まず食事の基本「主食の量、野菜などに含まれる食物繊維の摂取、食べる順番」についてお話ししました。
田村:間食ですが、食べちゃいけないものはないので、間食も絶対ダメではないんです。ただ、食べる回数や量はある程度決めて食べるようにしましょう。また、せっかく食べるなら罪悪感をもたずに、楽しんで食べましょう
Oさん:間食もいいんですか?
田村:もちろん、間食をしないでいられるに越したことはありませんが、量や食べる回数を決めましょう。菓子パンは間食ではなくむしろ食事なので、こちらは間食としては食べないようにしましょう
Oさん:わかりました。頑張ってみます
孫への食育を兼ねて減量作戦に成功
そして翌月、体重が1ヶ月で2kg減り、血糖も130~140mg/dl台、HbA1cは7.5%→7.4%と下がりました。
田村:Oさん、体重がぐんと減りましたね
Oさん:特に何もしていないのですが
田村:しっかり頑張っていますよ。間食はいかがですか?
Oさん:孫とどうしても。暑いし、アイスやおやつを一緒につまんだり……
田村:量はいかがですか?
Oさん:前よりは減っています
田村:であれば、様子をみていきましょう
その後、月1回定期的に栄養指導を実施。体重は4kg減量でき、HbA1cも7.5→7.4→7.2→7.1%とゆっくりですが改善してきました
田村:ゆっくりですが、HbA1cは改善していますね。いかがですか?
Oさん:はい。血糖値を上げない食べ方は習慣になってきたと思います。が、どうしても甘い物とアイスが止められなくて
田村:まぁ、おいしいですしね。どんなかんじですか?
Oさん:やっぱり孫と甘いお菓子を食べてしまうのと、買い物に行くとどうしても和菓子やアイスクリームが目について買ってしまうんですが。それを駐車場で食べてしまうことが……
田村:そうですか。ちなみにお買い物は何時くらいに行かれますか?
Oさん:朝、娘が連れて来た孫を幼稚園に送り出して家事をひととおりやって、そうですね、お昼前、孫が幼稚園に行ってる間です
田村:なるほど。その時間って家事なんかもやってお腹も空いている時間ですね。お孫さんを送りだしたら早めにお買い物に行って、戻って家事をして、ゆっくりお昼ご飯にしてみては?気持ち的にはすべて済ませてからというのは十分わかるのですが、お腹が空いてる時間帯に買い物へ行くのは、買い過ぎもですが、どうしてもつまみ食いしてしまうのもありますね
Oさん:やってみます
田村:あと、小腹対策にナッツ類やゆで卵、ちょっとした果物なんかは大丈夫ですよ。お孫さんとのおやつも同じく、栄養面を考えたらゆで卵やチーズ、ヨーグルト、果物なんかはいいですね
Oさん:娘からも「あまり甘いお菓子は止めてね。お母さんのようになっちゃう」なんて注意されていました
田村:お菓子だけがおやつではなく、むしろおやつは必要な栄養を補うことが目的なんです
Oさん:確かに私が小さな頃はお菓子なんてあまりなくて、いもとかゆで卵とか、夏だったらスイカとかでした
その後、OさんのHbA1cは徐々に改善して今では6.2~6.5%で推移しています。血糖も100mg/dl前後で、1年ほどで体重もkg減量となりました。
田村:最近はいかがですか?
Oさん:孫もお菓子に慣れていたので、最初はさつまいもとかを食べてくれなかったんですが、保育園の食育の時間でも出たようで、今ではそれがいいと言っています。ゆで卵の殻をむくのもおもしろいみたいで食べてくれますね。私も買い物の時間を変えたのもありますが、甘い物は嘘のようにほとんど食べなくなりました
田村:よかったです。味覚って慣れるので、甘い物をちょっと我慢していると手元にあっても食べなくなりますね
Oさん:そうなんです。おっしゃるとおりで、孫用にアイスも冷蔵庫にはあるんですが、私はしばらく食べてないですね。そういえば孫も最近アイスって言わなくなりました
田村:それはよかったです
この患者さんは服薬なしのまま1年で食習慣が変化し数値も安定しました。現在は2~3ヵ月に1回のペースで検査と栄養指導を継続しています。(『ヘルスケア・レストラン』2021年10月号)
福島学院大学短期大学部
食物栄養学科講師
かとう内科クリニック 非常勤 管理栄養士
たむら・かなみ●療養病院、急性期病院での勤務を経て、2011年8月からフリーランスの管理栄養士として活躍中。福島県いわき市内のクリニックでの栄養指導や全国各地での講演活動、自宅で暮らす高齢者の栄養サポートにも力を入れている