“その人らしさ”を支える特養でのケア
第42回
これまでのデイサービス利用者から
栄養ケアの可能性を探る

管理栄養士がかかわるデイサービスの仕事は多岐にわたります。今回は、食を楽しむための「給食」での工夫と、在宅での生活を見越した「栄養ケア」に焦点を当てます。

介護報酬改定で関心を引く通所者への栄養ケア

今年度の介護報酬改定で、管理栄養士の配置人数によっては施設の管理栄養士が通所施設での栄養ケアを行っても加算の算定ができるようになりました。これまでも通所施設で行う栄養ケアに対する加算はありましたが、今回の改定で算定しやすくなり注目している方も多いのではないでしょうか。

当施設でも敷地内にデイサービスセンター(定員22名)があり、必要な時は特養から管理栄養士が行って対応しています。現在、加算取得には至っておらず、微々たる成果なのですが、デイサービスにかかわる糸口を模索中の方がいらっしゃればお役に立ちたいと思い、今回はこれまで経験したデイサービスでの対応を紹介します。

提供の工夫で楽しい食事の時間を

デイサービスでの仕事は、給食と栄養ケアに分かれます。当施設を開設した際、デイサービスの給食のコンセプトを「非日常の演出」と考えました。デイサービス利用の目的の1つに「社会生活の維持(閉じこもりの防止)」があるからです。デイサービスに行っても自宅にいても同じ、では来る意味がありません。豪華な内容でなくても、盛り付けで見た目の印象を変えるなど、自宅ではやらない演出で提供することによって、ご利用者が「デイサービスに行きたい」と思う原動力になれば、と思ったのです。

ですが、食事は「特養棟の調理室でつくって運ぶ」と決まっていたので、運搬しやすい盛り付けを考えなくてはいけませんでした。そこで、主食と汁物はデイサービスで盛り付けてもらい、副食は松花堂弁当の容器に調理室で盛り付けて提供しています。食事の風景を見ると割烹の日替わりランチのような雰囲気で、ご利用者同士も和気あいあいと食事の時間を楽しんでいらっしゃいます。ご利用者の身体状況によって弁当形式が食べにくい場合には、必要によりデイサービスにて弁当箱から盛りなおして提供しているケースもありますが、おおむね問題なく現在まで継続して取り組んでいます。

行事食の際には、委託給食業者の協力もあり、屋台風の演出を行ったり、敬老会の際は刺身の盛り付けをデイサービスで行ったり(写真)と、食事の周辺環境の演出をご利用者の食欲を刺激する方法として取り入れました。運搬中の保冷が保てないことから、現場での盛り付けとなったお刺身盛合せでしたが、ご利用者には好評で、盛り付けたそばから提供されるお刺身を「お店に来たみたい」と喜んでいただきました。

このほかにも、おやつはなるべく一般小売店で手に入る物を避けたり、レクリエーションの一環で行うおやつづくりに管理栄養士も参加したりしています。おやつづくりはご利用者と触れ合ういい機会となっており、給食の感想や食べたい物などをお聞きし、次回の献立やおやつづくりレクリエーションのヒントにしています。おかげで最近は管理栄養士も顔を覚えていただき、デイサービスに顔を出すと「あら、栄養士さん」とご利用者から声をかけていただく機会が増えています。

デイサービス利用だけでは栄養ケアは提供できない

栄養ケアに関連したかかわりに目を向けると、まず思い出されるのはAさんご夫妻のケースです。Aさんはご夫婦2人暮らし。ご夫婦でデイサービスを利用していましたが、ある日お迎えに行った職貝がんさんご夫妻の体調不良に気が付き、入院に至りました。職員からいろいろ話を聞くと「どうやら食事はお菓子が中心だったのではないか」と言うのです。「そんな事例もあるだろう」とは思っていましたが、実際に身近に感じるとどうにかして予防ができなかったか、と悔やまれます。Aさんご夫妻には直接かかわることはできませんでしたが、在宅生活者の栄養ケアが重要であるということを実感した事例となりました。

この経験から、気になる事例を見かけるとデイサービスから依頼がなくても相談員や介護職員へ声をかけるようになりました。私の自己満足でおせっかいな行動に迷惑そうな顔をされることもしばしばありましたが、最近は食事に関することを中心にデイサービスからの相談も増えたように感じます。

デイサービスご利用者が栄養的な問題を抱えていることに気が付くポイントはいくつかあります。
まずは食事指示内容です。当施設では通常、新規のご利用者の食事指示はデイサービスの生活相談員からの食事せんで確認します。その時に嚥下調整食や療養食の指示、補助食の追加などがある場合には生活相談員から詳細な情報を確認します。

また、介護職員からの「むせている」「食事が食べられない」などの相談も重要な情報源です。当施設では併設のショートステイとデイサービスの両方をご利用いただくケースもあり、その際の食事の様子を見聞きして気が付くこともあります。
Bさんのケースでは、ショートステイとデイサービスの食事指示が違うことから問題が発覚しました。利用しているサービスと自宅すべてで食形態が違ったのです。疑問に思った私は情報収集を行いましたが、利用サービスごとに食形態が変わってしまう明確な理由がなく「これでいいのか」と感じていました。Bさんの場合は当法人の居宅事業所の担当ケースだったこともあり、直接担当のケアマネジャーから話を聞くことができたので食事の調整ができました。しかし、在宅でお過ごしの場合はご家族の調理能力などによって嚥下調整食の導入が困難なケースもあると感じており、サービス利用を安心安全に、と思うと、自宅と介護事業所での食形態が違ってくることは仕方ないのか、と思う部分もあります。

デイサービスに少しかかわるだけで、在宅の栄養管理のやりがいを感じます。今回の介護報酬の改定を機に、介護にかかわる他職種でも栄養ケアへの関心が高まり、管理栄養士に声がかかるチャンスが増えることを祈りつつ、当施設でも取り組みが加算につながるよう頑張ります。(『ヘルスケア・レストラン』2021年6月号)

横山奈津代
特別養護老人ホーム ブナの里
よこやま・なつよ
1999年、北里大学保健衛生専門学校臨床栄養科を卒業。その後、長野市民病院臨床栄養研修生として宮澤靖先生に師事。2000年、JA茨城厚生連茨城西南医療センター病院に入職。同院の栄養サポートチームの設立と同時にチームへ参画。管理栄養士免許取得。08年、JA茨城厚生連茨城西南医療センター病院を退職し、社会福祉法人妙心福祉会特別養護老人ホームブナの里開設準備室へ入職。09年、社会福祉法人妙心福祉会特別養護老人ホームブナの里へ入職し、現在に至る