栄養指導で”あるある!こんなこと”
第95回
手術の後遺症やつらい治療も
趣味を生きがいに乗り越える

今回ご紹介するKさんは70代後半の女性の患者さんです。波乱万丈の人生だったようですが、とても前向きに生活されている様子に私のほうがいつも元気をいただいています。

胃切除時からの複数食が血糖上昇の原因?

Kさんは白内障の手術予定で眼科に通院していましたが、高血糖を指摘されて友人に相談したところ当クリニックを勧められて来院されました。身長は155cm、体重は54kgと中肉中背の方です。

田村:血糖値が高いとのことですね。血糖値が高くなったのは最近ですか?

Kさん:はい。もともと血糖値は少し高かったんです。白内障で手術予定だったんですが、手術前の検査で少し下げないとだめだよと言われ、友人に相談したら、こちらのクリニックは管理栄養士さんがいて、いろいろと教えてもらえるよと聞いてきました

田村:そうですか。ありがとうございます

Kさん:お薬は使わないで下がればいいなと思ってまして

田村:できればそのほうがいいですよね。ちなみに何かお薬は飲まれてますか?

Kさん:はい。10年以上前から家の近くの内科の先生にコレステロールと血圧のお薬をいただいています

田村:そうであれば、あまりお薬は増やしたくないですよね。今回の血糖値ですが、空腹時血糖が130mg/dl台、HbA1cは8.0%でした

Kさん:半年に1回ぐらい検査していて、何年も変化がなかったのですが、眼科で計ってもらったら高くなっていてびっくりしました。こんな半年か1年足らずで上がるんでしょうか?

田村:原因はこれから食事などのお話をうかがわないとわかりませんが、たとえば最近はコロナで外出や運動の機会が減っていたり、何か疾患があってストレスになってしまったりなど、いろいろと重なると上がってしまうことはあると思います

Kさん:運動の機会はこの1年ぐっと減っていました

田村:そうですか。運動は何をされていたんですか?

Kさん:仲間でグランドゴルフをほぼ毎日やってましたが、コロナで集まれなくなってしばらくやっていないです。最近、朝の散歩を始め、30分くらい歩いていましたが……

田村:なるほど、運動量の減少は大きいですね。初めてなので食事についても教えてもらっていいでしょうか?

いつものように食習慣の聞き取りを実施しました。すると……。

田村:間食がちょくちょくあるようですね

Kさん:はい。実は2年前に胃の術をしていて、3分の1ほど取ってしまったんです

田村:なるほど。間食というよりは栄養補給ですね

Kさん:はい。入院中は5~6回食だったので、そのやり方を今もやっています

田村:手術前と比べて、1回の食事の量はいかがですか?

Kさん:少しは減りましたが、だいぶ食べられるようになってきました

田村:そうですか。そうしたら食事でしっかり栄養をとって、午後に1回の補食にするといいでしょう。甘い物ではなく、チーズやヨーグルト、ゆで卵などを選ぶようにしましょう

Kさん:そういう物にするといいんですね

田村:甘い物は血糖値がぐんと上がってしまいますので、なるべく糖質の少ない物がいいですね

Kさん:わかりました

初回はこのように食習慣の聞き取りと活動量、また基本的な食事のお話、現時点での留意点をお話して終了しました。そして2回目の指導の日が来ました。

趣味のパッチワークが治療継続の原動力に

田村:おはようございます。体重は54kgですね、前回とほぼ同じですが大丈夫ですね

Kさん:管理栄養士さん、私ね、体重は胃の手術をしてから毎日量るようにしています

田村:そうですか。それはとてもいいことですね

Kさん:手術前は10kgぐらい体重が重くて、手術後10kg減りました。それ以降は1kgぐらい減っても増えても早めに調整するようにしているんです

田村:それはとても大切だしいいことです。なかなかできないことですが、大したものですね

Kさん:折角手術を乗り越えて、ちょうどいい体重になったので、これを維持しようと思って。実はぐんぐん体重が落ちていく時期もあって、甘い物も何も考えず食べればいいかと思って食べてました。そしたら今度は血糖値が上がっちゃって

田村:体重が減るのも悩みだったんですね。5回、6回食も悪いわけではなく、必要な場合もあります。あとは食べる内容や、普段の食事量を確認しながら調整しましょう。Kさんは食事が手術前の量にほぼ近いので、6回食から5回食で様子をみてみましょうね

Kさん:はい。前回、運動量の話があったので、次の日から朝の散歩を10分ずつ増やして、50~60分歩くようにしました。徐々に増やしてみています

田村:それはいいですね。運動量を増やして、今の感じで続けてみてください。血糖値ですが今回は119mg/dlと下がってきていますね。HbA1cも8.1%から8.0%、今回が7.8%、順調に下がってますね。HbA1cはやや反応が遅れますので、この感じでいいと思います。目標の7%前半まで頑張りましょうね

Kさん:いい方向に向かっていて安心しました。目の手術ができないと困るので

田村:そうですよね。ところでKさんはとても前向きだし、決断も行動も早いですね

Kさん:実はコレです

そう言ってもっておられた素敵なパッチワークのバッグを見せてくださいました。

田村:もしかしてKさんの手づくりですか?実は前回も素敵なバッグをおもちだなって拝見していたんですが、今回はまた色味の違った素敵なバッグで気になっていました

Kさん:こんなことをね、チクチクやるのが楽しみで。生地を集めたり、バッグやタペストリー、ソファーカバーなど、いろいろつくるのが趣味なんです

田村:素敵ですね。昔からされていたんですか?

Kさん:定年になって少ししてからだから65歳近くからかな。最初は習いに通って、東京まで展示会も見に行ったりしていました

田村:やっぱりもともと行動力があるんですね

Kさん:退屈しのぎで始めたんですが、2年前もコレを楽しくやるために手術も治療も頑張れたし、病室でも楽しみに少しやって気晴らししていました

田村:それで目の手術にも糖尿病の治療にも前向きなんですね

Kさん:そうです。目が悪いと楽しみの趣味ができなくなっちゃうので、早くちゃんと手術して治したいんです

こんなにも前向きに人生を頑張っている姿に感動しました。物事には早いも遅いもないし、クリニックでも栄養指導では食事や運動の指導だけではなく、何かもっと患者さんに合わせて人生自体が前向きになれるような寄り添った指導ができるといいなとKさんを通して感じました。(『ヘルスケア・レストラン』2021年6月号)

田村佳奈美
福島学院大学短期大学部
食物栄養学科講師
かとう内科クリニック 非常勤 管理栄養士

たむら・かなみ●療養病院、急性期病院での勤務を経て、2011年8月からフリーランスの管理栄養士として活躍中。福島県いわき市内のクリニックでの栄養指導や全国各地での講演活動、自宅で暮らす高齢者の栄養サポートにも力を入れている